あらすじ
かねてから、心の底では王位を望んでいたスコットランドの武将マクベスは、荒野で出会った三人の魔女の奇怪な予言と激しく意志的な夫人の教唆により野心を実行に移していく。王ダンカンを自分の城で暗殺し王位を奪ったマクベスは、その王位を失うことへの不安から次々と血に染まった手で罪を重ねていく……。シェイクスピア四大悲劇中でも最も密度の高い凝集力をもつ作品である。
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Posted by ブクログ
魔女の予言と夫人の教唆によりダンカン王を暗殺し、王座を手に入れたマクベス。
そんなマクベスを襲ったのは底知れぬ不安と疑心暗鬼だった。
そして、この不安感が罪の連鎖を引き起こす。
福田 恆存さんの解説で「要するに、「マクベス」劇の主題は不安にある」と述べられている様に、主人公マクベスの言動や情緒から"不安"というものを強く感じました。
権力に躍らされ、我を忘れるマクベスですが、後悔や罪悪感にとらわれ狂っていく様は悲劇そのものでした。
Posted by ブクログ
分かりやすくて面白かった。一つ一つの台詞が個人的に好きだった。100ページほどでここまで楽しめるのは良い作品。他の作品も読んでみたい
Posted by ブクログ
戯曲もシェイクスピアも初めて読んだので楽しめるか不安だったけど、最後までかなり面白く読めた。
台詞の掛け合いだけで物語が進んでいったり、人物の複雑な心境を現していたり。
普通の小説にある情景描写や説明的な補足がないのに、場面の想像がつくのがすごい。
マクベスは最初、王や貴族から信頼あつく、親友にも恵まれた真っ当な家臣と思われたのに、
三人の魔女やマクベス夫人に唆されて、あっという間に野心と欲望に飲み込まれて、王殺し、家臣殺し、酷い運命に巻き込まれていってしまった。
展開がものすごくテンポよく、台詞の一言一言がかなり重要なんだなぁと思った。
ただ、この本の出版が昭和四十四年で、訳者の解題ってところには昭和三十六年と記述があるから、昭和三十年代に訳されたくらいなのだろうか。
文体が古すぎて現代人にはさすがに読みづらい。
文学的な価値とか美とか横において、もう少し現代口語的なくだけた文章にしてくれたら、もっとたくさんの人が読んで楽しめると思うのにな~。
Posted by ブクログ
本編はかなり短く、あっさりとした印象。そして福田さん訳は読みやすくて助かります。(解題部分はすこし難解です、、)
マクベスは魔女からの予言を自己の行いに対する正当化に利用しようとしていて、早々に王を殺してしまった。
ハムレットは父王が殺されたことに対する復讐心にのみこまれるもののある意味復讐に正当性を持っている一方、マクベスは単なる権力欲しさの簒奪行為にみえ、本来その行為に正当性がない。それは恐らくマクベス自身も分かっていて、だから自信がなく、常に不安。不安ゆえの殺害。
シェイクスピアの描く人間たちはみんな愚かしくて、ただだからこそ人間らしさというのが存分に出ていますね..........
以下、解題より引用。
─力の弱い者は、一つの悪事を行うのにも、これこそは自分の逃れられぬ宿命であり、絶対不可避のものだという自己催眠を掛けなければ、容易に事を運びえぬのである。したがって、絶えず自己の行為を正当化するために、自分こそは自己本来の歴史を歩んでいるのだという事を己れ自身に納得させようとして、宿命の片影を探し求め、これこそは自分の宿命だった、必然だったと信じて、始めて心の落着きが得られるのだ。
─自己破壊への隠れた意思を示している。彼は破滅によってしか安心できない人間なのである。なぜなら、他人に対する彼の不信感の根柢には徹底的な自己不信があるからだ。
Posted by ブクログ
シェイクスピアの本を初めて読んでみた。
大筋の内容は理解できたものの、聞きなれない言葉も多く、この演劇の本当の良さをどこまで理解できたかはわからない。
スコットランドの力ある武将であったマクベス。三人の魔女に出会い「王になる」という預言を聞いたことをきっかけに、少しずつ歯車が狂い始める。
まずは王殺しを実行し、預言通り王となることはできた。ここで終わればよかったものの、今度は王の座を失うことの恐れから、さらに殺しの手を強めていく。
その手を強めれば強めるほど、マクベスは自身の身を破滅の道へ導くこととなってしまう。最終的には、唯一信頼していた夫人にも先立たれ、身内を殺された復讐者により葬られてしまう…内容としてはこんな感じである。
人間誰しも人には言えない秘めた欲望がある。それは仕方ないものであると思う。
ただ、それを実現するためには適切なステップを踏まなければならない。
一足飛びに手に入れよう、実現しようと思うのではなく、日々コツコツと努力を重ねることが大事である。
また、そのような努力を重ねても叶えられない欲望、夢もあると思うが、それが自身の「身の丈」だということも、どこかで受け入れる必要があるのではないか。
人間誰しもスーパーマンではない。
渋沢栄一「論語と算盤」の中でもそのような示唆があったと記憶している。
今一度自身の「身の丈」というものを意識してみようと感じた一冊であった。