【感想・ネタバレ】ジュリアス・シーザーのレビュー

あらすじ

“おれはシーザーを愛さぬのではく、ローマを愛したのだ” 高潔な勇将ブルータスは、自らの政治の理想に忠実であろうとして、ローマの専制君主シーザーを元老院大広間で刺殺する。民衆はブルータスに拍手を送ったが、アントニーの民衆を巧みに誘導するブルータス大弾劾演説により形勢は逆転し、ブルータスはローマを追放される……。脈々と現代に生きる政治劇。

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Posted by ブクログ

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悪人らしい悪人が誰もいないのに、国を守るという大義のために高潔の士が次々と死んでいく。現代に生きる者にはどうしてそうなってしまうのか分かりにくい。
 シーザーが暗殺されたのは暴君だったからではなく、“暴君になるかもしれないから”。予防としての暗殺。どんな立派な人間をも変貌させうる権力の魔力。一人の人間へ権力が集中することへの恐怖。
 その恐怖プラス、嫉妬も少なからずあったはず。一人の英雄が称賛されることへの不満は必ず出てくる。真面目なブルータスの心に芽生えたそのモヤモヤに、言葉巧みなキャシアスがつけこんだようにも見えた。

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2013年10月12日

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 イギリスの教科書で採用されるほど有名な悲劇作品。ローマ皇帝ジュリアス・シーザー(カエサル)を主人公とした作品で、多数の登場人物が現れる。物語は一貫して政治闘争が繰り広げられており、ゆえに多くの人物が死んでいくが、本作は四大悲劇とは性質が異なった悲劇作品である。解題で言及されているが、本作『ジュリアス・シーザー』は、上記四作品のような息抜きや笑いの場面が一切ない。その代わり、物語が終始生真面目で緊張感が続いてる。また中村保男による解説も秀逸。主人公とその敵であるブルータスいずれかの立場の視点から本作を読んでいくと、見方が180度変わる。ブルータスの悲劇的な描写は、理想主義の敗北を象徴しているらしい。

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2024年03月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ブルータス そうなのだ、キャシアス、もちろん、おれはシーザーを深く愛してはいる……しかし、何か用があるのか、こうしてさっきからおれを放そうとせぬが? 何が言いたいのだ? もしそれが公のためになることなら、右の目には名誉を、左の目には死をさしだすがいい、おれはそれを二つながら平然と眺めよう。神々もお守りくださろう、このおれには名誉を愛する気もちの方が強いのだ、死にたいする恐怖よりも。


シーザー もっと肥っていてもらいたいものだな! いや、気にかけはせぬ。ただ、もしこのシーザーの名にとって気にかかる何者かがあるとすれば、まず誰よりも先に遠ざけねばならぬ人物が、あの痩せたキャシアスだ。あの男は本を読みすぎる。なんでもよく見える。人のすることが底の底まで見とおしだ。やつは芝居が嫌いだ、お前とは違うな、アントニー。音楽も聴こうとしない。めったに笑わぬ。たまに笑えば、それはまるでおのれを嘲るような、そしてうっかり笑いを洩らしたおのれの心をさげすむような、そんな笑いだ。ああいう男は自分より強大な人物を見ると、もうそれだけでおもしろくなくなる。だから、非常に危険だというのだ。いや、おれが言いたいのは、ただどういう人物が恐るべきかということだけだ、それをおれが恐れているということではない。いかなるときにも、おれはシーザーだからな。


キャスカ おれにも出来る。同様、どんな奴隷でも、おのれの手で囚れの境遇を打ち切る力はもっているはずだ。
キャシアス それなら、なぜシーザーを暴君にさせるのだ? かわいそうに! あの男だとて、すき好んで狼になりはしまい、ローマ人を挙げて羊の群と思いさえしなければな。獅子にもなるまい。ローマ人が牝鹿でなければな。人、もし大いなる火を急ぎ起こさんと欲せば、小なる藁しべをもって始めようという。ふん、ローマは炊きつけか、ただのがらくた、ぼろ屑か、シーザーのごときやくざな代物を照らしだすため、喜んで塵芥の役を演じようとは! 待て、悲しみが、ああ、貴様はおれをどこへ連れて行こうというのか? 今、おれがこうして話をしている男は、おそらく奴隷の境涯にいつまでも甘んじていよう気かもしれぬ。それなら、おれは自分の言葉に責任をとらなければなるまい。だが、覚悟は出来ている、わが身の危険など、もとより意に介しはしない。


ブルータス 正直に言って、シーザーという男、今日までおれは、奴が私情のために理性をしりぞけるのを見たことがない。それにしても、ありがちなことだ、身を低きに置くもの、所詮は若き野心が足を掛ける梯子のたぐい、高みに昇ろうとするものは、かならずそれに目をつける。が、この梯子、一度天辺を極めてしまえば、もう用はない、そしらぬ顔で背を向けて、目ははるか雲のかなたに預け、それまで登ってきた脚下の一段一段に蔑みの足蹴を食わせるのだ。その手をシーザーも使いかねない。それなら、その手を食わぬよう、機先を制するのだ。


キャシアス そして、われわれの決意を誓いあおう。
ブルータス いいや、誓いは要らぬ。民の心の動き、われらの心の痛み、時代の弊風、それでもまだ―それだけでは動機がたりぬと言うなら、今すぐやめてしまうがいい、みんな家へ帰って、いぎたなく眠りこけていたほうが、よほどましだ。


アントニー この私には才智もなければ、言葉もない、名も通ってはおらず、身ぶりよろしく人を惹きつける術も知らない、喋り方も不器用なら、説得力にも欠けている、聴き手の血を湧かせることなど思いもよらぬ。私はただありのままに話すだけだ。諸君自身が知っていることを告げ、諸君に向かって愛するシーザーの傷を、あの痛ましげに物言わぬ口を差し示し、かれらみずから私の代りに語りかけることを求めるのみ。もし私がブルータスであったら、そしてブルータスがアントニーだったら、おそらく諸君の心を奮いたたせ、このシーザーの無数の傷口に一つ一つ舌を与え、ローマの石すら立って乱を起こすほど、興奮の渦を巻き起こしたに相違ない。


ブルータス その言葉のとおりだ、熱い友情がさめてゆく過程というものは。よく覚えておくがいい、ルーシリアス、愛情というやつは、消え衰えかけると決ってわざとらしい儀礼を用いはじめるのだ。むきだしの素直な実意は細工を必要としない。が、不実な人間は、まあ、馬にたとえてみれば、駆けだしだけが調子よく、いかにも派手で、溢れんばかりの気力を見せるが、いざ決戦の場に臨み、厳しい血まみれの拍車に耐えねばならぬとなると、たわいなく頭を垂れて、いや、まったく見かけだおしの駄馬同然、肝腎のとき、つぶれてしまうのだ。

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2013年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

演劇の台本調で書かれているため非常に読みづらかったが、中田敦彦のYouTube大学の世界史で「お前もか、ブルータス」の台詞を聞いてたから何とか読み切れた。

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2024年10月13日

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