【感想・ネタバレ】「昔はよかった」病のレビュー

あらすじ

「昔はよかったね」――日本人はそう言って今を嘆き、過去を懐かしむばかりだ。昔は安全だったのに、子どもは元気だったのに、地域の絆があったのに、みな勤勉だったのに……。しかしそれは間違いだ。捏造された追憶、あるいは新しいものを否定する年長者のボヤキにすぎない。資料を丹念に分析し、シニカルな視点で通説を次々ひっくり返す。「昔はよかった」病への特効薬となる大胆不敵の日本論。

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Posted by ブクログ

「昔はよかった」と過ぎ去った昔をやたら美化し、現代を批判する輩に、データや過去の文献を使って、いかに現代の方が昔より良いかを論破している本。取り上げられているのは、「火の用心」、「日本の治安」、「クレーマーの歴史」等々。特になるほど、と思ったところは「~振り込め詐欺は、悪質なものだけを見せしめに取り締まって、小物は泳がせておく方がいい。そうすることで、強盗など危険な犯罪をやってる連中が振り込め詐欺に鞍替えするよう誘導できれば、犯罪件数は多少増えても、社会全体の安全はかえって高まるのです。」という主張。著者はどうしたって犯罪の発生件数は0にならないとも主張。そりゃ、そうだよね~。この人、外国人名だけど絶対日本人だと思う。あと、欲を言えば、吉田戦車のイラストが入っててほしかった。

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2015年09月14日

Posted by ブクログ

昔の何がよかったか?

しごきやら鉄拳制裁が
まかりとおる教育現場。

パワハラやセクハラが
横行するブラック一色
の職場環境。

そして、現代と比較に
ならない犯罪件数。

データを辿れば見えて
くる真実。

現代の日本は、歴史上
もっとも犯罪が少ない
安全な社会です。

それなのに犯罪が増加
続けているかの如く
扇情するメディア。

理由知り顔の先生方に
理由をたずねれば、

なんでもかんでも絆や
ふれあいが希薄なせい。

そんなのはただの迷信。

江戸時代にさえ近頃は
人情が薄れたという声
はありました。

統計や史実を無視して
過去を美化する言説。

もちろんそんなものに
焚きつけられた盲目の
正義は容易く瓦解する。

私たちは現代の平和な
社会に胸を張り、

未来に向けて、これを
維持・発展することに
こそ注力すべきです。

真実を見失わないよう、
手元に良書を携えて。

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2024年02月10日

Posted by ブクログ

芸風としては面白いね。常識を疑い、ノスタルジーフィルターを通した感情論でなく、ちゃんとファクトベースで世の中を認識しましょう、との方向性は全く正しい。まずはマスコミからだな。これを読んで襟を糺すべきは。

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2021年07月04日

Posted by ブクログ

痛快。

データをもとに、「それってホントにそうだったの?」が紐解かれてます。

昔の新聞の引用、ぎょっとするようなスパイスの効いた内容のものが多々あり驚きました。
統計から想像する昔の様子は、決して「よかった」という言葉で微笑むことができるものばかりではなく、データをもとに過去を読むことの大切さを本書から学びました。

個人的には「安心」と「安全」について言及された章が一番響きました。

「安全を実現するためには、つねに現実の危険と向き合わねばならない」
「安心はこころの状態、感じかたには個人差がある」

私も「安心」と「安全」をくっつけていた1人でした。
今後は明確に使い分けていこうと思います。

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2019年01月04日

Posted by ブクログ

第1章 ありがた迷惑、火の用心
明治時代から、拍子木の音がうるさいとの苦情はあった。明治11年4月に警視庁が各区長宛てに「夜回りに鳴り物は使わぬよう」にと通達を出していた

第2章 治安のいい日本で暮らせてよかった〜!
・詐欺の認知件数は昭和8年に388,666件。平成24年は34,678件。(前者は日本長期統計総覧)
・「水と安全はタダ」はイザヤ・ベンダサン(山本七平)が1970年刊の「日本人とユダヤ人」で「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思い込んでいる」が元になっている。この水は、飲食店で提供されるお冷を意味する。
・防犯設備業界の市場規模は過去5年間縮小傾向(平成24年度)
・90年代までは空き巣の記事は10日に1回程度。なのに、被害が6割ほどに減った現在は週に2回の記事が載る。

第6章 まちがいだらけの自警団
・日本警察新聞1923年11月号。自警団との一触即発を乗り切った二名の巡査のエピソード

第8章 安全・安心ウォーZ
・“安全”と“安心”は水と油ほど違う。決定的な違いは危険(リスク)に対する態度
・安心というこころの状態は「生きている間にはなかなか得られない」

第9章 ハイテンションな元気をもらいました!
・あなたは高電圧?高血圧?(tension:緊張)
・「日本人は天孫民族などというけれど、とんでもないテンション民族だ」(尾高朝雄東大法学部教授)

第10章 熱中症時代 戦前編
・明治のこどもも倒れた
・「若者の弱体化」という精神論

第12章 ウザい絆とキモいふれあい
・むかしの親には、親が困ればこどもを売るのは当然と考える人も多かった。親の借金のカタにこどもを奉公に出すのは当然と答えた人が14%、8割の人は事情があれば仕方ないと認め、強く否定したのは7パーセント。(1950年ごろに法務省が行った農村の意識調査)
・1500万分の30のリスクにおびえる
・いま、日本中でやっている絆の運動は、絆ではなく同一性を強めている。

第13章 注文の多いブラック商店街
・日本最初の商店街は丸ビルにあった。1923年2月に竣工した丸ビルの目玉のひとつが、一階の丸ビル商店街
・むかしながらに店を開け、飛び込みの客が来るのを待っているだけ。努力せずに儲けようとしているものが多い。そんな状態でいるくせに、もうからない、困ったとかいうのは筋が違う。働かずして富を得ようとするのは泥棒と同じだ。そのうえ小売店の数が多すぎる。東京市だけで95,000軒。消費者の4世帯に店1軒の割合だ。おそらく十中八九の店主は、何の成算もなしに商売しているのでしょう。(1931年7月からの読売新聞「小売商売新戦術」という記事)

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2018年11月18日

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自分用キーワード
「古きよき、というのは趣味の範囲でのみ成立するファンタジーです。たまの不便なら楽しいけれど、毎日となると、古いものは不快なだけ」 拍子木で迷惑している人がいる 「日本はだめになったという言説の裏には、自分だけは除くと、但し書きがある」 江戸時代の番太郎 今の時代は犯罪件数が非常に少なくなった、昔は修身・道徳教育があったのに多かった 山本七平「日本人は安全と水は無料で手に入ると思い込んでいる」 大正時代の日本でもコーラと烏龍茶は呑まれていた ハイテンション=緊張、ハイパーテンション=高血圧。上野千鶴子のコラム(1989/8/6, 朝日新聞)は間違っている(生活習慣病自慢?) 丹羽文雄『厭がらせの年齢』(「長生きするから、いろんな罰が当たる」「孝行を説く孔子は、親を早くに亡くしているから老人介護の実態を知らない」などの記述あり) 老人福祉法の定義(成果主義とも解釈できる) 江戸時代の転居率は高かった(本当に人付き合いは濃密だったのか) 

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2016年01月24日

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過去の新聞記事をさかのぼるだけでも、たくさんの思い込みが覆される。「昔は…」といった枕詞で話し始める人は要注意。ちゃんと裏付けを得てから話しましょう。勝手な理屈で自分だけ気持ち良くなっているの、バレてますよ。

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2016年01月13日

Posted by ブクログ

久しぶりに著者の本を読んだけど、面白かった。

昔は今よりもよかったと言いたいおっさん・おばさんの気持ちはわからんでもないけど、何でも調べてみることって大事やと思う。

間違えた事実に基づいて結論を出してしまうのは、今や庶民だけじゃなくて、政治(特に自民党)の十八番状態になってるのも悲しい。

昔の政治はよかった、、、わけないよね笑

個人的には戦前の熱中症の資料や、11章の「ありのままの敬老の日」がツボやった。
高齢者の犯罪率が上がってるけど、元々その人らが若い時もやっぱり犯罪率は高かった。ってね笑


言われてみると納得なんやけど、扇動的に言われると、昔はユートピアで今は危険、、みたいな感じで聞こえてしまうけど、きちんと過去を直視すべき。

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2015年08月19日

Posted by ブクログ

言葉は荒いように見えて正確な日本語。
言説は昔の新聞投書欄を主なツールとして、現在の「昔」に対するイメージとのギャップをえぐり出す。
そのギャップが、これまで抱いていた違和感を綺麗に説明してくれるから、非常に痛快であり、またこれからの反論の武器にも使っていける気がする。
このテーマで書き下ろしの本を書いてほしい。

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2015年08月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

おもしろかった!今まで感じていたいろいろなものに対するもやもやや違和感を、明確に言語化してもらい、痛快に斬ってもらえた感じがした。「安全安心」「絆」「元気をもらえた」に対する違和感、「老人は善で若者は悪」「体感治安の悪化」のうそ・・・等、おっしゃるとおり!と思いながら、一気に読んでしまった。
各章それぞれに、大きくうなずくところばかりで、ひとつひとつあげて書いていくと、結局この本のマルパクリになってしまいそうなので厳選してひとつ、でも各章を貫いている筆者の視点だと思われる箇所を引用したい。
「正義はたやすく暴走する。正義を暴走させるのは、偏見と暴力」

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2015年07月23日

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ラフな文体で読み始めは少し身構えたが、昔はどうだったのかを昭和・大正・明治の新聞や書籍に当たって検証するという、アプローチは真面目な本。親やその親の時代なんてつい最近のことのようでいて、それでも間違ったイメージや情報が跋扈しているのだから恐ろしい。

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2020年11月23日

Posted by ブクログ

まあ、イイ暇つぶしにはなりましたかね……昭和の頃は人情があった、なんて話す人いますけれども、昭和よりももっと前、明治、大正の頃には合理的に物を考える人々も多く、老人は切り捨てられるかのような扱いを受けていたみたいですよ…? 社畜死ね!!

ヽ(・ω・)/ズコー

そんなアレで昔への感傷をバッサリ切り捨てるかのような文章の書き方に好感が持てましたね! まあ、本書もまた、昔の日本の一つの見方程度に留めておいた方がよさげですけれどもね…これが正解!ってわけでもないでしょうから…社畜死ね!!

ヽ(・ω・)/ズコー

昔も人情なんか薄かった、みたいに話されていますけれども、少なくとも今よりかは見知らぬ他人とのトークなどがあったと思うんですよね…今は街中で喧嘩とかも全然見かけなくなりましたけれども、あまりにも人との関りが薄いかと思います…スマホが登場して以来、余計にそれが酷くなったように僕には思えますけれどもねぇ…。

さようなら…。

ヽ(・ω・)/ズコー

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2019年10月29日

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火の用心はありがた迷惑。
防犯対策にはならない。

日本の治安は昔から比べて大幅に改善している。

熱中症は昔からあった。昔は日射病、熱射病と言っていた。

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2019年06月21日

Posted by ブクログ

昔は昔で現実の厳しさがあったし、今は今でその延長線上に。
時を経て社会は変化を起こしてるけど、それは必ずしも悪くなりも良くなりもしているわけではない…ってことかな。

感傷にひたるのではなく、データをもって論じるべき…って姿勢は楽しかった。
もちろんここで挙げられたデータだって、ある主張のもとに集められた偏りがあることには気をつけないといけないのだけど。

何の積み上げるべきモノもなく「たかが自分が育ってきた十数年、数十年程度」を、ただ実体験してきただけという証拠のみで語るような人間にはならないようにしよう…とは考えました。
もっとも、そのようなことは常々、自分へは戒めてるつもりですが。

あとは、今作は「新潮45」に連載されていたものをまとめたもの…という部分は、読んだ人それぞれがそれぞれに考える部分だと思います。
自分は好きでしたが、今作。

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2018年11月24日

Posted by ブクログ

みんな昔を懐かしんで「昔はよかった」とか「最近の若いもんは」と言うけども、
その時期の記事などを見ると、そんなことはないのだよと様々な例を上げて記している本

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2018年11月04日

Posted by ブクログ

昔は良かったと言う高齢者は多いが、それは錯覚であって、よく検証してみると現代と比べてそれほど良かったわけではないというのが著者の主張。社会学の観点から、当時の新聞や統計等の情報を基に当時の社会風俗について考察する。
エッセイ風の軽い文章で気軽に読めて面白かった。日本の社会も数十年前は、社会環境も人々のモラルも低くて、犯罪も多発し、欲望剥き出しの人々も沢山いたようだ。確かに社会全体としてみれば、今よりも劣悪な環境だったことがよく判る。現代の若者がその時代に行く
と、これが日本かと思う位違和感を感じるだろう。
でも昔は良かったと思う高齢者の多くは、自分の経験の範疇のものであり、日本社会全体を言っているかどうかは判らない。自分の両親も高齢者だが、昔は大変だったという話しか聞かない。
例えば日本が好調だったバブルの時代に良い想いをした人は、昔は良かったと懐かしむ気持ちもあると思うけれど、社会に出たばかりの自分は、給料が安いのに家賃も物価も高くて暮らし難い嫌な時代だった。昔を懐かしむ気持ちは人それぞれだろう。
ちなみに著者はイタリア人を標榜しているが、たぶん日本人。イタリアの話はほとんど出てこない。イタリア人を装うなら、イタリアとの比較の観点でも考察して欲しかった。

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2015年12月16日

Posted by ブクログ

昔はよかったというけど、本当にー?という「昔はよかった」で片付けず、ちゃんと当時のこととか考えてみようねっていう本。

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2015年12月15日

Posted by ブクログ

パオロ・マッツァリーノさんの本、たぶんはじめて読むねんけど、想像してた通りの文章を書くひとやった。いい感じの皮肉。本気でやったら、それなりに堅い学術論文書けそうな気いするけど。

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2015年10月24日

Posted by ブクログ

昔は良かったなぁ・・・
これはむかーし昔も大昔からあるセリフ・・・
あの孔子さまも言ってたそうな・・・
孔子さまっておよそ2500年前のお偉い方です・・・
もうこれは人類がかかっている病気なんですかね・・・

さて・・・
本書を読むと、昔は良かったなんてのはまぁ結構なウソっぱちの妄想だってことがわかる・・・
昔は良かった、ってそれなりに年を重ねた個人個人の記憶をもとに語られることがほとんどですが・・・
ちゃんと統計や史料を見れば、そんなことはないって事が多々ある・・・
そんなネタが豊富に書かれている・・・
個人の記憶なんて無意識に捏造・改竄されやすいのに・・・
なぜかあまり検証されずに昔は良かった言説が広まってしまいがち・・・
なんででしょーか・・・
いくつかこの手の本を読んで思うのは、昔の社会も昔の人間も、特にそんなに良くないなぁ、と・・・
今の方が良い場合も多いし、昔も今もたいして変わらないってことも多い・・・

現代で起きている問題は、昔よりヒトが社会が悪くなったから・・・
いやいや、そんなこともないようです・・・
だいたい昔も同じようなことが起こっている・・・
もし今の若いものは、なんて言われたら、ちゃんと客観的なデータに基づいてそんなこと言ってるのか聞いてみてもイイかもしれませんね・・・
さらに文句言われちゃうかもしれんけど・・・

以下はじめに、の引用・・・
むかしの人は立派だったなんてウソを広めても、いいことはなにもありません。
そんなウソで無用な劣等感を植えつけるから、いまが生きづらくなるんです。
むかしの人もいまの人も、何ら変わりはないんだよ、いつの時代も人間はずっとダメないきものなんですよ、と真実を教えたほうが、どんなに気楽に生きられるか。
・・・
語り口が嫌いな人もいるかもしれんけど(ボクは好き)、ネタとして面白いので、マッハで読めるはず・・・
昔は良かったなぁと口走るオッサンオバサン方にこそオススメ・・・
はじめに、と第12章 ウザい絆とキモいふれあい、は少なくとも読んでもらいたい・・・
いや、自分も気をつけなきゃだけどさ・・・

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2015年10月05日

Posted by ブクログ

ごもっとも と 思うところもあり
ん? と 思うところもあり
それでも 最後まで
なかなか面白く読ませてもらいました。

参考文献に紹介されている
本たちが なかなか楽しい

もうちと 深く 考えたい
もうちと 深く 読み説いてみたい
とも 思った

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2015年09月21日

Posted by ブクログ

よく言われる、「昔はよかった」論について、例えば、犯罪、安全、地域の絆、子供や老人のイメージ、勤勉さ、商店街、クレーマーなどについて、これらは皆昔のイメージの方がよいとされているものの例示だが、それぞれについて、きちんと資料に基づいて反証を加えている。
その際の批判精神が辛辣で、表現の刺々しさも心地よい。
「だから何?」と言ってしまえばそれまでだが、日本論、日本人論としても意味のある一冊。

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2015年08月04日

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