あらすじ
お待たせしました。シャールさん&「マカン・マラン」復活です! 病に倒れていたドラァグクイーンのシャールが復活し、いつものように常連がくつろげるお店に戻った「マカン・マラン」。そこには、やはり様々な悩みを抱えた人たちが集ってきて?〈擬態〉だけ得意になるランチ鬱の派遣社員へ「蒸しケーキのトライフル」。夢を追うことを諦めた二十代の漫画家アシスタントに「梅雨の晴れ間の竜田揚げ」。子供の発育に悩み、頑張り続ける専業主婦へ「秋の夜長のトルコライス」。そして親子のあり方に悩む柳田とシャール、それぞれの結論とともに食す「再生のうどん」。共感&美味しさ満載、リピート間違いなしの1冊です。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
シリーズ2作目。何より、まずは「シャール、おかえりなさい。また会えて良かった」。前作同様、読んでいるうちに自然とほっこりする安心感があった。ほっこり系が大好きな自分にとってはとても幸せだった。前作は仕事の悩みが中心だったが、今作は家族の悩みがあり、共感できる部分が多かった。第2話の中で、「無理に奇抜なストーリーを作らなくても、人の心の機敏を丁寧に重ね、響き合わせていけば、豊かな広がりが生まれる。」という表現の中に、マカンマランシリーズの良さが詰め込まれているように感じた。次作も早く読みたい。
Posted by ブクログ
ドラァグクイーンが切り盛りするマカン•マランでの会話、食事を通して悩みを軽くしてくれる話の第二段。第一話は会社の人間関係に悩まされてるOLが自分を取り戻す話。自分をどうでもいい、役に立ってないと、決めつけてる人に対して何かしら人を思って行動することで役に立ってる人のつながりはそういうことの積み重ねだと教えてくれる。第二話は漫画家を目指してるけど実家を継ぐことになり悩む話。誰かは誰かの代わりにはなれない、なる必要もないことを教えてくれる。第三話は子供の成長に悩む母親の話。よくよく見れば、一人一人に特徴がある。ややもすれば、自分の子には自分がされた嫌なこともしてしまう。子供子供の特徴をみて過ごして行くことが大切だと感じる話。第四話は、高校生の娘が進路変更することに悩む父親の話。親の心子知らず、子の心親知らず。子供の時間に余裕を持たせ価値ある人生をどうすれば築けるかを考えることが大切だと教わった。人生にとって何が大切かを考えさせてくれる。
Posted by ブクログ
シャールさんが無事退院。良かった。
まだ無理はできないようだけれど。
今回の登場人物たちの抱えている悩みは
前作よりも、少し重かった。
《蒸しケーキのトライフル》
丸の内で派遣社員で働いている西村真奈。
職場は派遣ボスと呼ばれるベテラン派遣社員が
取り仕切り、ボスの顔色をうかがいながら仕事を
する日々。お昼ご飯をみんなで食べないといけないという謎の強制ルールがあったり、気に入らない
他の派遣社員をいびったりしていた。
嫌なのに嫌と言えないストレス。言えば仲間はずれにされる恐怖。息も詰まるような空間に主人公は
心底疲れている。そんな日々の中、昼の「マカン・
マラン」(舞台衣装を売るお店)に迷い込む。
自分は面白くない、つまらない、だから友達が
いないと言う真奈に、穏やかだが、毅然とした
口調でシャールさんは語る。
「自分のことを”ただの”とか”つまらない”とか言っちゃ駄目。それは、あなたが支えている人や、
あなたを支えてくれている人たちに対して、失礼よ」
グッとくる言葉だ。派遣社員のボスのような存在は学生時代でも職場でもよくいる存在で、
こういう経験は誰もが少しはあるんじゃないのかと思う。一歩を踏み出す勇気さえあれば、
他人から何と思われようと人は変われる。
ちなみに、トライフルとは、“つまらないもの”と
いう意味らしい。
《梅雨の晴れ間の竜田揚げ》
漫画家を目指して上京した藤森浩紀は、
漫画家のアシスタントをしながら日々を
送っている。そんなある日、突然、実家を継ぐようにと連絡が入る。奥日光で有名旅館である実家は、父の亡き後、母の女将と兄が旅館を支え、盛り立てていた。その兄が急死したため、旅館を継ぐようにと連絡が来たのだった。義理の叔父たちは女将のためだと、浩紀を継がせようとするのだが、仕事に忙しかった母と自分との関係はあまり良いものではない。兄のように優秀でもない自分が旅館を継ぐことができるのか、悩む日々の中、雨の日にマカン・マランに辿りつく。
自分は兄のできの悪い代わりだ、と思っていた
浩紀に出されたのはソイ・ミートの竜田揚げ。
ソイ・ミートはただの肉の代替品ではない、
お肉のできの悪い代わりでも、劣化コピーでもない。あなたは決してお兄さんの、ただの代わりではないはず。と、声をかけるシャール。
兄嫁に旅館を任せ、再び漫画家になる夢を追う
浩紀。お母さんとの関係がこれからどうなっていくのだろうと思うけれど、きっと何とかなる‥かな。漫画で旅館を紹介したりとか、別の形で手伝っていけるのでは。
《秋の夜長のトルコライス》
高層マンションに住む専業主婦、伊吹未央。
いわゆる勝ち組の人生を送っている彼女だが、
7歳になる息子、圭のことで悩んでいた。
少し発達に遅れがあるような息子。そのことを
他の人に知られたらと常にびくびくし、
やがて、どれだけ手を尽くしても言うことを
聞かない息子に厳しく当たるようになっていく。
完璧主義すぎると夫に言われ、息子と距離を置く
未央。不安な気持ちを持ちながら、圭が行方不明になった時にいた、シャールの店へと向かう。
”子育てに頑張ってきた"
そう、苦しげに言う未央の前に、
「目一杯がんばったなら、もうそれ以上、がんばる
必要なんてないのよ」と、シャールはピラフとナポリタンと揚げたてのトンカツが載っている、即席トルコライスを置く(美味しそう)
子育てはままならない。ましてや、子どもに少し
発達に遅れがあるようだったら、母親はどれだけ
自分を追い込んでしまうだろう。
シャールの言葉は、魔法のように未央の心に
染み込んでいく。三台の全く同じヒーローカーが
実は、全部違うのだと、圭に教えられるラストが
良かった。
《冬至の七種うどん》
見慣れないスーツに身を包んだシャール。
父親の見舞いに行っているらしい。
縁を切っている父親の具合はかなり悪く、
認知症の症状で、ひとり息子がドラァグクイーンになった記憶が完全に抜け落ちている。
そのため、大手証券会社に勤めていた頃のように
スーツに身を包み、御厨清澄(シャールさんの本名)として病床の父を見舞う。
父親を見送ったあと、柳田(同級生)、ジャダたちと一緒に冬至の七種を入れた特製のうどんを食べる
シャール。
何一つ、親孝行が出来なかったと言うシャールに、柳田が、「病から、ちゃんと戻ってきたじゃないか」と声をかける。
いつも、シャールさんの言葉で人は元気になっているけれど、今回は、シャールさんが柳田さんの言葉で元気づけられる、珍しいパターンだった。