【感想・ネタバレ】消滅 VANISHING POINTのレビュー

あらすじ

202x年9月30日の午後。日本の某空港に各国からの便が到着した。超巨大台風の接近もあり離着陸は混乱、さらには通信障害が発生し、あらゆる端末上での通信が不可能になった。そして入国審査で止められた11人が、「別室」に連行される。この中に、「消滅」というコードネームのテロを起こすテロリストがいるというのだ。世間から孤絶した大空港内で、緊迫の「テロリスト探し」が始まる!

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Posted by ブクログ

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いろんな登場人物が入れ代わり立ち代わり登場し、推理小説を読むようにこの中にいるスリーパーは誰だろうと考えながら楽しく読んだ。成瀬の咳がひどくなった時は、騙された。これが推理小説なら、探偵役になる十時の独特で愛嬌のあるキャラクターが好きだ。小津のワンタンへの執着心、気の毒な大島凪人、飛行機好きの岡本喜良、ロボットを欲しいと思う三隅渓など変わり者ばかりだ。SFっぽさを感じさせてくれる、黒澤親子の存在は恩田陸ならでは。そして、題名の「消滅」の意味するものはなかなか深い。ベンジャミンの作り上げた、人と人との間の壁を壊し、双方を繋ぐものが日常的に使う生活用品であるところなんかが微笑ましい。この物語のキーマンであるキャスリンは、皆に好奇心と恐怖心をいだかせる。一般庶民の知らないところで彼女のような未知の存在が誰かによって動かされている、SFによくある話だが、近いようなことは現実にありそうで怖い。いろいろな要素が詰まっていて、スリルもありとても満足だ。

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2019年08月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

飛行機で空港に降り立った小津康久は早く淡々軒の肉ワンタンを食べたかった。入国審査の列に並んだが、列の進み具合は遅かった。超大型の台風が近づいてくるとの情報もあり、早く空港を出たかった。ほかにも多くの人が早く空港を出たかったと思う。台風接近のなか、大規模な通信障害も起きている、そんな中で、入国審査で別室に呼ばれた11人の中に小津も入っていた。なんでこの11人は別室に呼ばれたのだろうか…。盛り上がっていくのだが、最後がどうかな、という感じ、

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2018年10月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

恩田氏の2010年代の作目。2013-2014年に新聞小説として掲載され、2015年に出版。ちなみに新聞小説は以前の『夢違』に続き、二作目。

アフターコロナ後に本作を読むと、恩田氏の未来感(未来勘!?)がかなり鋭いことを感じます。AIロボットや未知のウイルスなど、まるでコロナを経験したかのような筆ぶりでした。

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超大型台風に見舞われたとある日本の国際空港。

入管で足止めされ『別室』に連れてこられた年齢性別もバラバラな男女10名。彼らを迎える謎の若い女(実はAIロボットだった)から命じられるのは『この中にテロリストがいる。そして10人の使命はそのテロリストを見つけ出すこと』とのこと。

果たして10人はミッションを成功裏に収め、家路につくことが出来るか。

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本作、群像劇なんです。

で、群像劇というと、やはり複数のキャラをキチンとキャラ立ちさせることが必要だと個人的には思います。

本作では10人+AIロボットの計11名がキャラとして登場しますが、いささか人数が多いというのが印象です。故に、私は数人誰がだれだか分からなくなるという状況に…。

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それでもやはり、恩田氏もキャラの設定・作りこみが素晴らしいですね。

なかでもAIロボットのキャサリン。当然感情がないロボットという設定なので、外からの印象で描くわけですが、これがなかなか絶妙。

まず、人間と機械のはざまの存在を、どこまで・どう表現するか。本作ではぱっと見は判断がつかないという設定でした。肌の質感ももう人間と分からないという設定。

そこに、判断が難しい問題への対応として「間」を持つという設定にしてあるというくだり。また嘘はつかないという基本設計から、喋ると影響がある質問にたいしては「無言」を貫くというくだり。こうした描写に、逆に人間らしい行為というものが浮かび上がってくるわけですね。「間」とか「無言の承認」とか。

この「間」を演算処理が重くて追いつかない、と登場人物に推理させたり、実は一部で「当局」が反応に介入していると推察するのもなかなか面白い解釈でした。

でも、外見上判別不能なロボットが出てきたら、世の男性などは美しいロボットで(が)いいと、いっそう先進諸国で出生率が下がりそうな気がしました笑

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それ以外にも、世界で散発的に発生する病原菌の保持者が10人の中にいるのでは、というくだりがありました。

作中ではこの病原菌が実はテロ道具ではないかと疑われ、さらには原因とみられることへも登場人物から推理が提出されました。

これなども、5年前に読んだら単なるスリラー小説の味付け程度にしか思えないかもしれませんが、コロナ当時の飛行機移動時の入国の厳しさを思い出すと、実にリアル(小説をリアルっていうのもあれですが)に感じた次第です。

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ということで恩田氏の群像劇系スリラーでした。

ちょっとキャラが多いのですが、幾人かは際立っていて、面白く読めました。

一週間ほどお休みが取れてしかも何もやることがない、というときは試しに読んでみても良いかもしれません。3-4日あれば読めるかな。

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2024年12月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

近未来の空港密室劇的ミステリー。

恩田さん得意の会話による謎の周りをぐるぐる回る感じが、11人という登場人物によって長編に仕上がっています。
冒頭のつかみ、展開は非常に面白く、「消滅」って台風のこと?と的はずれな推理もしてしまいました。
大型台風接近、大規模通信障害、空港内爆発事故、に加えて国際手配レベルの情報操作犯、テロリスト、ヒューマノイドと盛り沢山なので、着地ができないかと思いきや、恩田さんらしくもなく、きれいにでも残念ながらこじんまりとまとめてしまいました。
結末が衝撃的だったり大どんでん返しの連続だったりしたら大傑作になっていたかもしれないだけに惜しいです。

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2025年05月25日

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