【感想・ネタバレ】世界の誕生日のレビュー

あらすじ

両性具有人の惑星ゲセンを描いたヒューゴー賞・ネビュラ賞受賞作『闇の左手』と同じゲセンの若者の成長を描く「愛がケメルを迎えしとき」、男女が四人組で結婚する惑星での道ならぬ恋を描く「山のしきたり」など〈ハイニッシュ・ユニヴァース〉もの6篇をはじめ、毎年の神の踊りが太陽の運行を左右する世界の王女を描く表題作、世代宇宙船の乗員たちの運命を描いた中篇「失われた楽園」など、全8篇を収録する傑作短篇集

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Posted by ブクログ

ネタバレ

性や性別、人種、宗教、文化を巡って、幾つもの星々の物語を描く短編集。

各星の習俗や歴史を丸々造り上げているから、短編ひとつひとつの情報量が凄まじい。結婚のあり方、孤独のあり方、流浪のあり方…緻密かつ大胆に語られる未知の生活様式。読むごとに気力を使い、読み終えるごとに呆然とさせられるのは、まるで異文化を理解しようとして、し切れなかった感覚のよう。

最後の短編『失われた楽園』のみが、異星の物語でなく、地球を出発し、植民星を目指す宇宙船の物語。本書全体の3分の1ほどを占める長い作品だけれど、読んでみたら、この作品が一番読みやすかった。
地球と違った宇宙船内の生活様式や、そこで生まれた新興宗教の興隆など、細部が面白いのも理由のひとつだけれど、おそらく登場人物たちが(宇宙船生まれの世代であるとはいえ)地球の文化や言葉を背景に持っていることが理由なのだろうと思う。
裏を返すと、そこまでの7つの短編が、地球の文化と隔絶した異質なものとして、いかに完成度が高いかということでもある。

ル=グウィンが序文で、短編『古い音楽と女奴隷たち』について「ある批評家は、奴隷制度をわざわざ書くに値する問題としているわたしを嘲笑した。彼が住んでいるのは、いったいどこの惑星かとわたしは不思議でならない。」と述べているように、きっとこれらの話は異星の話でありながら、また、地球の話であるのだろうと思う。
異なる文化を理解することの困難を突きつけはするけれど、豊潤な物語を読むよろこびの後ろに、他者を理解しようとする試みの面白さもまた垣間見せるような、奇特な作品だと感じた。

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2018年01月05日

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