あらすじ
誰かの仕打ちで、ひとは傷つく。 でも、ほかの誰かのひとことで、 生きていけるようになる。 施設で育ち、今は准看護師として働く弥生は、問題がある医師にも異議は唱えない。 なぜならやっと得た居場所を失いたくないから――。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
『きみはいいこ』の続編ということで手に取った一冊。
いずれも、「いい子」がキーワード。
いい子でなければ愛されない、いい子でなければ必要とされないことが怖くて苦しかった子供時代。今もやっとのことで手に入れた居場所を失いたくなくて、いろんなことを飲み込んでそこにしがみついている主人公の弥生。
いい子じゃなくても自分は自分。大それたことじゃなくても、今いる場所ですべきことをやっていくことが大事なんだ。無理していい子にならなくてもいいんだよ、と教えてくれた藤堂師長と菊池さん。自分を見つけてくれた人、自分を認めてくれた人との出会いが、弥生自身が自分を認め、いい子でもなんでもないありのままの自分として生きる力をくれた。
彼女の辛い過去も、心を傾けてくれる人とのかかわりがそれを癒す。見守ってくれる人は、見守られる。救いのような一冊。
Posted by ブクログ
生まれてすぐに捨てられ、高卒まで乳児院や児童養護施設、児童相談所ですごし、准看護師として11年勤務している主人公。
その主人公が、新しく入った師長(救急看護認定看護師と手術看護認定看護師を取得している)によって考え方がかわり、成長していく物語だった。
主人公が働く病院には、色々なスタッフや患者がいた。(診察時間より30分おくれて出勤する医者、道具のわたしかたが気に入らないと、すぐ道具をなげつける医者、手術中 しれっと看護師の臀部をさわるなどのセクハラをし、誤診で患者を死なせる院長、毎日見舞いにくる娘を自分が死ぬ直前まで罵倒し、娘をうつ病にさせる高齢者の患者など)実際の医療現場は、メディアに報道されるくらいだから、もっと ひどいんだろうなと思った。
主人公の今後が知りたいと思った。
医療従事者の免許を持っているが、わけあって医療従事者として働いていない僕は この本をよみながら、懐かしいなと思った。
Posted by ブクログ
「いい子じゃないと、いけませんか」という
キャッチコピーに惹かれて手に取った一冊。
いい子でいたい。
もしもいい子じゃなくなっても、
見捨てないでくれるだろうか?
主人公の気持ちがひしひしと伝わってきました。
きっと誰しもがもっているだろう
「いい人に思われたい」という気持ち。
でもその気持ちが自分を苦しめているんだなと
改めて思いました。
「いい子」ってなんだろう?
そう考えさせられた一冊です!
Posted by ブクログ
いい子でいたい、捨てられたくない気持ちがすごくわかる。
経験、知識を身につけて治療をしたい、そして患者だけでなくご家族のその後も善くできる人になりたい
Posted by ブクログ
両親がいない弥生は施設で育ち、人から嫌われないよう捨てられないよう常にいい子で生きている。
施設を出ると住居を確保し手に職をつける為、准看護師になった。勤め始めた病院では医者から見下され疑問を持っても口には出せない。
上司が変わり藤堂師長の元で、病院の問題や看護師の仕事について考えるようになる。
弥生は近所で出会った菊地さんに心を開いた事で長年の苦しみから解放されていく。
そして、院長の誤診を許さない師長と共に行動に出る。
一歩一歩、強くなるために。そして患者さんを心で見て看護師にしか出来ない看護をするために。
生きていくために働く、そして信じる人に出会い苦しみの中から抜け出していく、読み終わった後には充足感に浸れた一冊。
Posted by ブクログ
呪縛から解き放たれた弥生の強い願いに、一緒になって願い祈る。
病院を少しでも良くするために、まだこの病院に残って頑張りたいという弥生の信念はすごいとは思うものの、こんな看護師を見下した医療事故を繰り返す糞みたいな院長がいる病院の体制はそうそう変わらない。弥生がどんなに奮闘しようと、病院が良くなって院長が改心するとは思えない。こんな病院とっとと辞めて藤堂師長について行っちゃえば良いのにと思うけど、今ここにいる患者さん達を、未来の患者さん達を彼女は見捨てることができないんだろうな。
「あなたがたのいる場所は、いつも、患者のそばよ。」去り際に看護師達にかける激励の言葉の温かさと力強さに、背中を押される。師長の人として器の大きさを感じた。院長がクズなだけに余計に。
そして誰よりも忘れてはならないのが、菊池さん。周囲に愛されるその人柄に、弥生の心も救われていく。九九が出来ない彼女の為に、夜な夜なひらがなの小さな文字で書いた九九の紙。
それが幼かった弥生も、大人になった弥生も、まとめて包み込んで救ってくれた。呪いとしか思えなかった呪文のような九九が、菊池さんから弥生への祝福の言葉になったんだと思ったら、もう胸がいっぱいになった。
ただの紙切れじゃない、それは長い間がんじがらめになっていた弥生の呪いを解く温かい魔法だったんだ。
「へば!」と言い合って手術室に向かう場面も、覚えた九九を菊池さんに披露しながら麻酔する場面も温かくて優しい。
それだけに菊池さんの無事を祈らずにはいられない。なのに手術シーンのままページ数は残りわずかで焦る。ちょっと待って、このまま終わらないで。っていうか早く電子メスで無駄に体を傷つけてるこいつの手を、誰か早く止めて。そして手術室から引きずり出して、誰か颯爽とヒーローみたいに有能な医者が現れてよ。
どうかどうか。菊池さんの無事を見届けてから終わって・・・という願いもむなしく、手術の結果がわからずに終わるというモヤモヤ。でもきっと助かったと信じたい。後遺症もなく無事に・・・とまではいかないかもしれないけど。また弥生と二人笑い合う日々が訪れてほしいと切に願う。
「わたしはいい子でもわるい子でもない。
わたしはわたし。
今はただ、このひとを守りたい。」