あらすじ
今度は私があなたたちの“言葉”をおぼえる
荒井尚人は生活のため手話通訳士に。あるろう者の法廷通訳を引き受け、過去の事件に対峙することに。感動の社会派ミステリー。
感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
ろう者であったために、誰にも打ち明けられなかった、両親にも打ち明けるための手話がわからなかったというのが悲しすぎる。年少者に対する、逆らえないものからの暴力は本当に許せないが、相手が誰にも言えないとふんでの暴力は本当に腹が立つし、許せない。あの親子は自業自得。
Posted by ブクログ
コーダを初めて知った。
ろう者の親をもつ聴者の子どものことを指すんですね。
恥ずかしながら、「ろう者」「聴者」の言葉もなじみが薄く、耳の聞こえない方々をとりまく様々な問題について、今回の小説を読んで初めて知ったことも多かった。
コーダの存在なんて考えもしなかった。
転んで泣いても親に気づかれない。我慢するしかない。
両親とは、聴者の世界を分かち合えない。
コーダの孤独に気づかされる。
本当に理解や寄り添いが必要なのは障がいをもつ人だけではないのだ。
手話ができる。
仲間だと思われる。
でも聴者だとわかると「仲間ではない」と落胆に近い表情をされる。
ここでも孤独を感じる。
「損なわれた子」
こんなふうに思う人が一人でも減るよう、理解が進むと良い。
また、もう一つ。
声を出せない、コミュニケーションがうまくとれない人たちに対して、それを利用する悪い大人がいる。
悪い人間に利用されないよう、搾取されないよう、傷つけられないよう、人生を壊されないよう、私たちはこれから何をどうするべきなのか考えるきっかけにもなった。
ミステリーに関してはそれほど凝ったものではなく、すぐにピンとくるとは思うが、それ以上に読み応えがあった。少し考えてみたら、わかることなのに、自分はただ「聴覚障がい」を持つ人がいるという情報だけを頭に入れて生きてきたんだなあ・・とこの小説を読んで思わずにはいられない。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
コーダとしての苦悩を抱えながら20年間警察の事務員として働き、警察の闇を暴露して失職した43歳の荒井尚人。手話通訳の仕事を始めたなかで、尚人が17年前に関わった事件(ろう児施設の理事長・能美隆明が殺害される)の被害者の息子(能美和彦34歳)が殺される事件が起こる。
日本のNPO代表で障害者支援を続けていた手塚瑠美27歳は本名を門奈輝子という。17年前、ろう児施設にいた姉の門奈幸子が理事長から性的虐待を受けていると知った輝子は理事長を殺害した。それを知った父親の門奈哲郎は罪をかぶり、コーダの輝子を守るため戸籍から外し養女に出していた。幸子と輝子はその後も会っていて、幸子に性的虐待をしていた理事長の息子の和彦が輝子の存在を知り脅しをかける。輝子を守るため幸子が和彦を殺害する。
17年前に家族との面会をセッティングした尚人がその時会っていた少女が瑠美だった。真相に迫った尚人は瑠美に手紙を出す。瑠美は自分の結婚式で、手話で過去の殺害を自供したが、瑠美が裁かれることはなかった。
【感想】
身の回りにろう者やコーダがいないのでとても勉強になったし、それを題材にしたミステリー小説は初めて読んだので面白かった(内容は重く悲しい話だが)。
相変わらず弱いものが虐げられる世の中、どうにかならないのだろうか。