あらすじ
弘法大師空海の足跡をたどり、その時代風景のなかに自らを置き、過去と現在の融通無碍の往還によって、日本が生んだ最初の「人類普遍の天才」の実像に迫る。構想十余年、著者積年のテーマが結実した司馬文学の最高傑作。
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Posted by ブクログ
空海の幼少期から唐に入り密教を授かるため恵果を訪問するまで書かれています。空海の風景という題名の通り、空海が見た風景、あるいは空海を写した風景を司馬遼太郎の考察を多分に含み表現しています。小説というよりは考察文に近い印象を受けるほどです。10代で三教指帰を書く天才性(しかも仏教の優れさを戯曲で表すという発想性)、唐に入った後の地方役員に上奏した漢文の見事さなどが伝わってきます。また仏教にただ詳しいだけでなく社会を渡り歩く機微も持ち合わせており、本当に杞憂な人物だなと思います。空海についてもよく分かり面白いのですが、遣唐使の航海の厳しさや唐の長安の先進性(人種差別がなく、多様な人種を受け入れ、宗教でさえ様々な宗教が保護されていた)や街路樹を植えていたなどの街造りとしての先進性もあったことに驚きと魅力を感じました。改めて司馬遼太郎の造詣の深さを感じることができる本です。