【感想・ネタバレ】青い壺のレビュー

あらすじ

読めばハマる有吉佐和子。幻の名作長篇
無名の陶芸家が生んだ青磁の壺が売られ贈られ盗まれ、十余年後に作者と再会した時。人生の数奇な断面を描き出す名作、復刊!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

(2025.11再読)
昭和50年頃の話。ちょうど今から50年前。終戦から30年ばかり。
40代以上は、戦争経験者であったり、戦争の記憶があったり、というところだろうか。
ちびまる子ちゃんと同じくらいの年代。もちろんスマホなどない時代だが、ちびまる子ちゃんを観ている時と同じで、それほど古さは感じない。古いというより懐かしいという感じ。
むしろ、シングルマザーや、マンションを持っている独身キャリアウーマンがさらっと登場し、意外に現代的で驚いてしまった。

作中で、印象に残った石田先生のお母さんのセリフ。
「戦争に敗けて、何もかも根こそぎ変ってしまった」「世の中は、私の生きている間だけでも千変万化しましたよ、本当に」

私は戦争経験はしていないが、2つめのセリフには、とても共感してしまった。レベルは全く違うかもしれないが、戦争経験がなくとも、子どもの頃からは信じられないような、ほぼSFのように進化した技術や、アップデートされていく価値観に、私も時々、そのように感じているからだ。

本作では、戦争を経た時代の変化(法律、高層建築や集合住宅などの住環境、社会制度など)を意識的に描いていると思われる。十三話あるので一つ一つの話は決して長くはないのだが、語られない部分の余白があり、社会の変化をさりげなく盛り込みながら、一人の人間の人生という歴史の意外な長さと奥行きを感じさせる。人の人生って、歴史なんだなぁ。さらに同時代に生きている人の間でのジェネレーションギャップも描かれているのがまた面白い。

美術品であり、贈答品であり、花器や花瓶などとしての実用品でもある。実は無名の作家が作ってたまたまうまくできてしまった、という作品であるのだが、時に貴重な骨董品だと思われたり、見い出す価値や評価もバラバラで、人それぞれ。そんな壺をキーアイテムにしたのは非常に見事。青い壺は、様々な家庭を渡っていきながら、様々な人生の厚みと奥行きを垣間見せてくれた。「思い込み」が人生のスパイスであるということも。

今回初めて気づいたが、表紙の円筒形のシルエットが壺の形!?

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2025年11月24日

ネタバレ

牧田がデパートに売りわたした壺と骨董品鑑定家園田の邸で再会したのが1977年1月、巳年だった。

第12.話は前年、1976年終わり頃、園田は入院中、同じ病院のやはり特別室に第9話の京都旅行の主人公弓香が入院していた。

第9話の京都旅行は1974年または1975年、
9月の弘法市で弓香さんが壺を3000円で買って
新米栄養士の孫娘に、
そして孫娘の上司の修道女がスペインに一時帰国するときの餞別として贈られる。

海を渡った青い壺はどういう経緯でスペインの
骨董品店に並ぶのか?

また、第8話で空き巣に盗まれた壺が京都の弘法市に並ぶまでの経緯も興味がある、

#癒やされる

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2025年01月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

青い壺がめぐる十三の連作短編集。それぞれの話は短いからサクッと読めると思ったが、そうならなかった。それぞれの話に出てくるそれぞれの人の人生の片鱗のようなものが重く感じられ一気読みできず、途中で休みを入れないと読めなかった。
最後の省造の話は省造にとって辛い面が強いと思った。でも、解説の「さいごに省造が思いいたる心境に、人間の執念や美意識にたいする救いがもたらされる」を読み、タクシー運転手の唐突な語りの意味がわかった。辛さを越える心境に至れ、「喜ぶべき」となれたのだろう。
帯の爆笑問題 太田コメント「信じられないくらいに面白い!」は感じられなかったけれど、後からじわじわ来そう。

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2025年12月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

青い壺がさまざまな人の手に渡って最後に作者の前に現れる。
50年前の作品との事で戦後間もない話や戦時中の話なども出てきた。
嫁姑問題、遺産相続、退職後の話など現在にもつながる話が多い。中高年の世代が読むと頷く所も多いのだろうけど、会話がやや冗長で読んでいて親戚のおばさんの悪口をひたすら聞かされているような心境になり読後のすっきり感はあまりなく、自分が読むにはまだ早かったか。

陶芸家が作った作品を10年の時を経て目の前に現れた時、古美術の鑑定家が12世紀の中国の代物だと勘違い?で絶賛する。生涯の最高傑作な訳なのだが、逆にこの10年はそれを越える作品はできないのかと思うと、経験を積んで徐々に熟練の域に達するというのとも違うのだなと芸術家の難しさを感じた。
後書きにも書いてあったが、その最高傑作であっても3千円程度で売られていたり二束三文で譲り渡されたりと持つ人によってその物の価値というのは委ねられるものなのだとも感じた。

ラストで陶芸家が決意したこと、往時の陶芸家と同じように自分の作品に名を彫らないこと。印象的だった。

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2025年11月30日

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