あらすじ
就いた職業は無数、人妻との駆け落ちは三回。寸借詐欺騒動を起こし、新聞沙汰にもなった。逃亡と放浪を繰り返したが、将棋だけには破格の才能を持っていた男・小池重明。プロ棋士を次々となぎ倒し、“新宿の殺し屋”と呼ばれた伝説の将棋ギャンブラーが、闇の世界で繰り広げた戦いと破滅の軌跡を描く傑作長編。話題のベストセラー待望の電子化!
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Posted by ブクログ
将棋の棋士については関心がなかったのだけど、ロマン優光さんがコラムで幻冬舎アウトロー文庫について触れていた際に大好きな本として揚げていらっしゃり、随分前に買った。そうして読んでみると、本当にめちゃくちゃで最高に面白い。将棋の世界で圧倒的に強いのにアマチュアで、プロをどんどんなぎ倒していくのが痛快だ。しかし人生については下手ばかり打ち、袋小路に突き進んでいくのが凄い。将棋の腕前でいくらでもうまくやれただろうし、他の博打にさえ手を出さなければなどと思うのだが、しかしそこで下手を打つところがチャーミングで、応援したくなる。才能とは、幸福とは、など大いに感じさせられる。
Posted by ブクログ
勝負の世界で強い人が生き残る世界にいるにもかかわらず、強いが故に破滅的な人生を歩んでしまった小池氏。
競馬で100万円買った翌日に今度は競馬で全額すって、その翌日には飯場での肉体労働に身を置くというくだりが凄まじ過ぎる。
自分勝手な行動で周囲に迷惑をかけ続ける小池氏ですが、読んでいても全く不快感を覚えず、逆に共感を覚えるのは、書き手の思い入れから来るものなのかもしれない。
Posted by ブクログ
「小池は終生、放浪癖を抜けなかった天衣無縫の人間だった。女に狂い、酒に溺れた荒唐無稽な人生を送った人間だった。〜 とにかく、面白い奴だった。そして、凄い奴だった。」
と、ここまで団鬼六に言わせる小池重明。こういう人が存在していた事が時代だなと思うが、こういう人に生きる隙間がある時代はまだ世の中が清潔になりきっていない、生きやすい時代であったのでは無かろうかと思う。
こんな人生がホントにあるのかと驚きとともに、この本は一気に読めてしまう。
Posted by ブクログ
・ストーリー
最初に,最後を匂わせて,ストーリーテラーから徐々に離れていく,という書き方は読者をひきつける。
・キャラクター~テーマ~世界観
この本は小池重明のキャラクターだけでもっている。
モーツァルトを思わせる破滅型の天才。人間として出来損ないであるが,出来損ないであるという弱さが,そして絶対に将棋だけは負けないという矜持が背反し,人を引き付ける魅力となっている。ある人は,こんな人がプロに勝ちまくっていることに痛快感を覚えるのだろう。ある人は,このような男に嫌悪を憶えるだろう。
しかし,議論を呼んでもそれこそが人間的な魅力であり,これが本作のテーマであり,団鬼六の愛する世界観でもある。。
勝負の中だけにしか生きられない人種。そういう男が勝負の場さえ奪われ,真剣に生きられなくなった男の悲哀。男ならわかるところがあるはずだ。