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就いた職業は無数、人妻との駆け落ちは三回。寸借詐欺騒動を起こし、新聞沙汰にもなった。逃亡と放浪を繰り返したが、将棋だけには破格の才能を持っていた男・小池重明。プロ棋士を次々となぎ倒し、“新宿の殺し屋”と呼ばれた伝説の将棋ギャンブラーが、闇の世界で繰り広げた戦いと破滅の軌跡を描く傑作長編。話題のベストセラー待望の電子化!
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Posted by ブクログ
小池重明さんの一生を描いた作品。天才とあほが入り乱れている人物。こんな人がいたんだなーって感じです。将棋に関しては天才であったのかな。今で言えば何か発達障害の様な障害があると診断されるかもしれない。 いずれにしても、勉強になる作品でした。
どうしようもなく駄目な人間だが、人を惹きつけずに止まない魅力と才能を持つ男の伝記。自分はこういうアウトローの生き方に未だ憧憬を感じてしまう。どうして自分はまとも過ぎるのかとも思う。 2年以上将棋から離れていた晩年の小池が、アマ名人や奨励会会員などを次々と打ち破っていく「果たし合い」のくだりは何度読...続きを読むんでもぞくぞくする。そして通奏低音のような、鬼六先生の無頼漢に対する優しさ。どんなに酷い話であっても、それがどこか喜劇的な色彩を伴うのは、この底無しの優しさによるものだろう。
団鬼六と言えばSMというイメージしかないのだが、趣味の将棋では89年から将棋ジャーナルのオーナーとして93年まで私財をはたいて発行を続けた。その団が6年ぶりに小説家として復帰したのが92年に亡くなった新宿の殺し屋こと真剣師の小池重明の懺悔録「流浪記」を基にした本作だった。余命1年と宣告された小池に懺...続きを読む悔録を書かせ将棋ジャーナルに連載したのもその団の仕掛けだった。団と小池の付き合いが始まったのが88年ごろで、冷静に見れば団はいいカモにされているのだが、破滅型の小池を見捨てきれなかったようだ。 中学生で将棋を覚えた小池は高校に入ると学校に行かずに将棋にのめり込む。ほぼ一年で三段になり中部日本学生将棋選手権では大学生も破り優勝した。小池の最初の真剣(賭け将棋)は通いつめた将棋クラブで席主の娘に片想いし、その娘と仲の良い大学生に彼女をかけての勝負を挑んだのがきっかけだった。結局不良高校生の応援団を引き連れた小池は勝負には買ったが真剣禁止の将棋クラブからは出入り禁止にされ、彼女はのちにこの大学生と結婚している。 高校を中退し売春宿の番頭を振り出しに喫茶店、酒場などで働くが長続きしない。岐阜のホテルに勤めた際には浮気をするオーナーの当て付けにとオーナーの奧さんに誘惑され関係を持つのだが、わざわざそのことをオーナーに言いつけ、逆にそのまま関係を続けろと言われたのに逃げ出してしまう。後にも度々仕事場から金を持ち出したり、未亡人や人妻と3度駆け落ちしているが金と女にはとにかくだらしない。 酒にもだらしなく団には娘に会いたいと泣きつきもらった金をその日のうちに飲んで使い果たしてしまうなど、飲みだすとコントロールが効かなくなる。大山名人との対局前夜には深夜営業のスナックでビールを飲み始めて口論になったボーイを殴り、留置場から対局場へ二日酔いで向かうのだが角落とは言え大山名人の考慮時間74分に対しわずか29分しか使わず完勝してしまう。この辺りが破滅型の天才と言われる所以だ。 岐阜から戻った小池は名古屋の将棋クラブに居候をしながら真剣師と交流を持ち始めこのころ将棋の腕を上げていく。21歳でアマ名人戦の愛知県代表になりこの年名人になった関則可を頼って東京に出将棋修行を始める。奨励会入会試験の口利きを松田八段の推薦を取り付けたのはいいがキャバレーの女に入れ込んで道場の金を使い込み、松田にも関にも顔を合わさず名古屋に逃げ帰ってしまう。一定期間は真面目に働くのだが周りが信頼し始めたころに酒や女に溺れるとコントロールが効かなくなり逃げ出すしかなくなってしまう。時には世話になった店の金や車を持ち出して逃げるのだが、一応借用書だけは書いておくあたり弱い自分に対して言い訳を作っている。 小池が新宿の殺し屋として名を挙げ出したのは名古屋で働いた葬儀屋をその仕事で知り合った未亡人と駆け落ちし再度東京に出てきてからだ。32歳になった小池は鬼加賀と呼ばれるアマ名人にもなった大阪の真剣師と死闘に挑んだ。初日勝てば50万円の5番勝負、二日目は1番10万の10番勝負を戦い、トータル7勝7敗ながら初日の勝ちが効いて加賀は小池を日本一の真剣師と認めることになった。翌80年からは2年連続でアマ名人を取り表の世界でも日本一となるとプロにも連勝し1982年には棋聖を取った森雞二に角落、香落ち、平手と3連勝をする。将棋は勝ち続けるが生活は破綻しており出入りしていた将棋酒場の金を持って女と逃げ出し、さらにはサラ金地獄。賞金百万円の大会で優勝してもその場で借金取りに抑えられてしまう。 このころ再度プロ入りの話が出たのだが棋士会は反対し、更には新聞にに寸借詐欺の記事が出てアマチュア将棋界からも追放された。子供の将棋道場を作る、プロになるために紹介料がいると言って集めた金はすぐに使い込んでしまうのだった。この時小池は35歳になっていた。そしてまた数年間将棋界から姿を消した。 小池の最後の公式戦は亡くなる前年で相手は竜王戦でプロ相手に3連勝をしたアマ名人の天野高志、結果は小池の2連勝だった。すでに肝硬変を発症していた小池は対局数日後にまた血を吐き、負けた天野は準決勝で丸山忠久相手に必勝の将棋を落とした。今やコンピューターが強くプロでもなかなか勝てなくなってきているが20年前はまだこういう時代だったのだ。
もう何度か読んでいる本だが、ときどき読みたくなる。 こんなにわかりやすく、かつ、とてつもないスケールで破綻する人なんて、他にいないだろう。誰にでもできることではない。そこに、憧れのような気持ちを持ってしまう。
まっとうに生きるチャンスは多々あったのに残念だ。 才能があっただけに悔やまれる人生だったと思う。 表現を変えれば「健康的・建設的な人生」と「そうでない人生」との わかれ道に何度もさしかかり、そしてみごとにそうでない人生を 選択してしまう。 これは偶然ではないと思う。 感情的な生き方から、冷静に人...続きを読むを洞察し、 周囲に調和する生き方に変わる。 すなわち社会性を獲得することが人としての成長だとするなら、 彼に何があれば建設的な人生を選択できたのか。 もう一回読み返してみたい。
新宿の殺し屋の異名を持った最強の真剣師小池重明の軌跡を描いた名著。将棋の天才、いや、賭け将棋の天才と呼ばれ破天荒な生涯を遂げた男、小池重明。彼の生き様を垣間見る事ができる。将棋以外はなんとも人間らしいというか、一芸に秀でてはいるものの妙に人間臭いところが共感を呼ぶ。将棋に明け暮れては、女と駆け落ちし...続きを読む、酒におぼれては、路頭に迷う日々。滅茶苦茶な人間だが魅力がある。そんな一人の人間をこの本の中で見れる。
痛快、破天荒、将棋以外は全くダメ男の小池重明を、ポルノ小説界の大御所、団鬼六センセが書き上げた怒涛の人生。読み始めたらやめられません。将棋の綺羅星をバッサバッサと破って行くさまはまさに痛快。でも将棋以外はホントにダメ男です。こんな天才、もう出てこないでしょうねぇ。
ギャンブルに直接絡んではいないが、まさに破滅的人生の生き様を綴った、近年稀にみる傑作だと思う。悲哀、そして愛くるしさ、かっぱエビせんではないが、余りに面白くて、読むことが<止められない、止まらない>僕でした。 (Feb 15, 2000)
本当にクズでどうしようもない、でも、まばゆい煌きを放ちつづけた純真な男の一生を、一筆入魂で描ききったセミドキュメント。 私は将棋は駒の動かし方を知っている程度の素人ですが、どんどん引き込まれてゆき、何度も読み返してしまいます。 そして、どうしようもないほどの喪失感に圧倒されるのです。 作家名で偏見を...続きを読む持たず、是非一読を。 【大傑作】。
藤井君とは違う昭和の天才
久しぶりに読み返した。藤井聡太君と同じ愛知県出身であることに気づいた。もし小池さんが生き返って藤井君やAIと対局したらどんな感想を持つだろう。その対局を先生はどう表現しただろう。
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真剣師 小池重明
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