【感想・ネタバレ】漂流郵便局 届け先のわからない手紙、預かりますのレビュー

あらすじ

届け先不明の想いが流れつく郵便局の物語。

恋人へ、10年後の孫へ、がんで急逝した夫へ、
11歳で天国に行ってしまった息子へ、祖父母の愛犬へ、ボイジャー1号へ・・・。
心に響き、心を揺さぶる手紙69通を収録。

これらは瀬戸内海の小さな島・粟島にある、不思議な郵便局に寄せられた手紙。

瓶に詰められた手紙が海を漂うように、
届けたくても届け先がわからない想いがブリキ製の漂流私書箱に集まる。
その名は「漂流郵便局」。
旧粟島郵便局を現代アートとしてよみがえらせたものだ。

胸の内に秘めた想いが綴られた手紙と、瀬戸内国際芸術祭作品としての精巧なしつらい、ゆったりと時がすすむ粟島の佇まい…。
涙とともに、なぜか懐かしく心地よく癒される世界へと、読む人を誘う。

【ご注意】.※お使いの端末によっては、一部読みづらい場合がございます。お手持ちの端末で立ち読みファイルをご確認いただくことをお勧めします。

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Posted by ブクログ

漂流郵便局の成り立ちについて、本書のはじめに次のような注意書きがあります。
「漂流郵便局はプロジェクト型のアート作品であり、日本郵便株式会社との関連はありません」
そもそもは瀬戸内国際芸術祭2013の出品作品です。しかし、2020年8月時点においても、香川県の粟島に現実にこの郵便局は存在しています。

本書は2015年2月に発行され、2020年4月には2冊目の「お母さん」に向けて書かれた手紙を主にした本が出版されています。これまでに、いくつものメディアで取り上げられてきました。その結果、全国から届け先のわからない手紙が送られ続けています。
私も少し考えてみました。亡くなってしまった人だけでなく、例えば、初めて付き合った人のこととか。本気になって探せば、宛先が見つかるかもしれません。でも、伝えたい言葉は今のその人にではなく、当時のその人に対してであったりします。

現代アートと聞くと、インスタレーションのような空間芸術が思い浮かび、それは鑑賞するよりも、体験するものと言われています。
漂流郵便局は久保田沙耶さんのれっきとした作品です。しかし、この作品は鑑賞だの、体験だの、の枠を既に飛び越え、多くの人々の生活や生き様に深く関わる存在になっています。

漂流郵便局は誰かのものではなく、誰のものでもなく、作品ですらなく、特別な使命をもった郵便局なのです。普通の郵便局であれば、郵便物や荷物を送り主から一時的に預かって、指定されたお届け先に配達します。しかし、漂流郵便局に届く郵便物は、そこに留まります。預かっておくことが肝心な役割です。

その場所をゴールと呼んでいいのか分かりません。一回で満足する人もいれば、定期的に何度も手紙を送っている人もいます。
アート作品からは、癒しや美しいものを愛でて気持ちを落ち着かせることができます。漂流郵便局はそんな心やさしい作品とはいえない面もあります。この本を読んでしまうと、溜め込んでいたものを放つ、人をその気にさせてしまう何かが滞留しているからでしょう。

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2020年08月30日

Posted by ブクログ

どこかの小さな島の入り江、

雁木のある港の防波堤の端を
いっぴきの犬をつれて散歩させている
一人のおじいさん、

石の狛犬、朱い実をたわわにつけた山桃、
なぁるく湾曲ししている入り浜、

朝もやに包まれたオミナオシ、
一匹の白いシバヤギ、

古い家の軒下の細い道を右手にバケツを持って
野良着と頭を日本手ぬぐいでおおった
一人のおばさん、

そして
その細い路地を抜けると
視界がひらけて
白い平屋の郵便局が現れる

ここまでを
数枚の写真で読者をいざなってくる

そして
ここから
届け先のわからない手紙を
預かってくれる
漂流郵便局の
日常業務が始まっていくのです

この小さな島だから
できていること
この素敵な発想があるから
できていること
この素敵な思いを共有できる人がいるから
できていること

素敵な一冊です
本当に実在する郵便局です

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2018年02月10日

Posted by ブクログ

201504.11
友人に誘われて行った漂流郵便局
軽い気持ちでてがみを手にしたら、そこに込められているパーソナルな気持ちと次々対面しててがみをめくる手がとまらなくなった
じんとするもの、悲しいもの、でも前向きなもの、未来の自分へあてたもの、にっこりするもの、すべてが絶妙なバランスでそこに収まってい

この離島にあるちいさな郵便局は、たとえば現世と来世を、あるいは過去といまをつなぐ、天国のような場所だった。中田さんの笑顔と、話し方、すべてのてがみを受け取り、ひとつひとつに目を通して受けとめる。話していたら存在の大きさに涙がとまらなくなった。

「存在」というものについて、昨日からずっとぐるぐる。写真をみては、本を開いては、涙ぐんでいる。涙腺スイッチがどっか故障したみたいだ

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2015年04月12日

Posted by ブクログ

自分の気持ちを書き出して、気持ちの整理や、読み返すことで当時の気持ちを振り返る機会を与えてくれた本です。
様々な年代や環境の違う人たちの手紙を読んで、
辛いことがあっても乗り越えようとする過程を見ることができて勇気が湧きました。
私もいつか漂流郵便局を利用する日が来るのかもしれません。
とても温かい気持ちになれる本です。

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2024年12月01日

Posted by ブクログ

宛先のない大切な人への想いや、封じ込めていた気持ち。それをそっと受け取ってくれる漂流郵便局。訪れてみたい。

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2024年11月06日

Posted by ブクログ

ほんの一瞬で心を
ここでは無い何処か清らかな場所へさらわれる。
そんな圧巻の読書体験をした。

迫力とか、盛り上がりとか、そんなものはなく
たったひと突き、胸の核心をトンとやられる感じ。

きっとそのくらい、「手紙」には魂が宿っていて
その上それが誰が書いた、とか
誰に宛てられた、なんてことは関係ないのだろう。


亡くなった誰かに宛てた手紙は
ただただ胸が詰まる思いがしたけれど、
宛先はそれだけではなかった。

未来の自分や過去の自分。
フォークダンスで一緒に踊れなかった気持ちを伝えられなかったあの娘。
昔飼っていたペットや、毎日のように一緒だったピアノ。
これから買う予定のカメラや、親不孝な息子。
それから、飲酒中の自分へ。笑

さまざまな人間のドラマというか、心の揺れのようなものが垣間見れた気がした。


それぞれがそれぞれの人生を生きていて、わたしには分かり得ない事ばかりだけど、同じ人間同士、やはりどこか似ていて、、、

「みんな違って、だいたい同じ。笑」


自ずと「人間への愛」が溢れてしまう、本だった。

この企画自体が、
久保田沙耶さんのアート作品だというんだから面白い。


こんなに辛い経験をした人と比べたらわたしなんて、
なんて思わず、あなただってあなたなりに一生懸命生きているじゃない。

胸を張りなさい。


未来の私へ。
私は、私で、私なりに、私をやってます。

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2020年03月26日

Posted by ブクログ

文喫さんのオススメ本だった本書。
面白そうだなーと手にとってみたら、想像と違っていた。

届け先のわからない手紙、預かります。とあったので、そういうハートウォーミング的な小説なのかと思った。
しかし、中身は、瀬戸内海に浮かぶ粟島にある、実在の旧粟島郵便局。
瀬戸内国際芸術祭で発表されたアート作品だった。
アート作品は、芸術祭が終わった後、現在も郵便局長を置き、宛先のない手紙を保管してくれている。実在の物語。

宛先に届かない手書きの手紙たちは、たくさんの思いを打ち明けている。
時に泣きそうになる手紙もある。
力強く励まされる手紙もある。
気づかされる手紙もある。

いつか、この地に降り立って、届け先のない手紙たちに、自分もあってみたいなと思うと同時に、自分も出してみたくなった。

さて。
自分は誰宛にだすだろうか。
過去、未来の自分?
亡くなった身内?

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2019年07月12日

Posted by ブクログ

「ー」

宛名不明の郵便物が届く場所ではない。
どこに送れば届くのかわからない郵便物を送る先だ。
それが誰かの心の支えになるのなら、とても意味がある。

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2016年07月16日

Posted by ブクログ

良かったです。
小説だと思っていたら、アートとしての漂流物・受取人のいない手紙など芸術作品が始まりだったのですね。

いま目の前にいない人、人ではないもの、これから生まれてくる子・・・様々なシチュエーションで、書き手と宛先はあるのだけど、
届くことがない手紙

でも ちゃんとこの郵便局で保管されて、「不在」通知とともに戻ってくることはない安心感。

先にこの世を去ったご主人にあてた手紙を 山手線で読んでいたら 涙が止まらなくて・・・

夕暮れ時や静かな場所で ゆっくり味わうことをお勧めする作品です。

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2016年01月04日

Posted by ブクログ

瀬戸内海の小さな島・粟島に実在する「漂流郵便局」。
届け先の分からない手紙はここに流れ着き、受取人を静かに待つ。

恋人へ、10年後の自分へ、未来の孫へ、地元を離れた息子へ、急逝した友人へ…
文字に起こすことで人は、心に溜め込んだものを消化する。
道なき道を彷徨う旅人の背中を見届けているような気分に

ふとクラフト・エヴィング商會の作品を思い出した。
手書きっていいな。

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2015年10月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

届け先のわからない手紙を受け付ける郵便局。
コンセプト、外観、内装、なぜか長野まゆみ作品を
思い出しました。手書きの手紙って素敵です。

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2015年10月11日

Posted by ブクログ

タイトルから小説と思って手に取ったら、瀬戸内国際芸術祭出展作品のルポ本だった。届け先の分からない手紙を預かる郵便局。死者や長年連絡の付かないかつての大事な人などに向けて思いの綴られた手紙が集められ、他人のそれを見ることができるインスタレーション。作者は「私たちは大きな流れの中の一部に過ぎない」という。なるほど、人にとって、多くの思いが集まったこの漂流郵便局で、他の人の思いを見る行為は、自らの思いを大きな流れの中で相対化する意味があるのかな、と思えた。それは自分の思いを、一歩前に進める行為なんだろうな。

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2015年07月02日

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この本読むと、いままで出会った友人やモノたちに手紙かきたくなるなぁ。また、この郵便局に一度行ってみたい。

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2015年03月21日

Posted by ブクログ

心が温かくなる。切なくなる。ロマンを感じる。
自分も亡き祖母に手紙を書きたいと思う。
そしていつかここへ行ってみたい。

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2025年08月29日

Posted by ブクログ

涙腺刺激されましたわ、
手書きの文字ってどんな人か想像しちゃうからいいよね。
いつもより綺麗とか、崩れてるとか、そんなことで'どんな状況で書いたんだろ~'とか考えるの楽しい。
誰しも吐き出したいことってあるんよ

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2024年04月26日

Posted by ブクログ

ずっと伝えられない、心に秘めている想いがある。
だからこそこの本に惹かれたんだろう。
ここにだったら思いの丈を送ってもいいかもしれない。

もっと手紙がたくさん載っているかと思ったけど思ったよりも説明等が多かった。
字や書き方にもその人の個性が溢れていて、その人の人生を想像させた。

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2020年07月05日

Posted by ブクログ

そのまま、手紙がその人たちそれぞれの字のままで載っているのがすごくよかった。

読んだ後、わたしも手紙を書きたくなった。

漂流郵便局、いいなあ、、

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2018年07月20日

Posted by ブクログ

プロジェクト型アート作品「漂流郵便局」。2013年に開催された瀬戸内国際芸術祭で発表された後、再開された郵便局。そこへ流れ着いた(送られた)、届け先の分からない手紙たちが美しい空間を漂っています。
亡き人へ向けて、未来(過去)の自分へ向けて、またペットや物などに向けて。不覚にも涙を落としてしまうページもありました。
まだ存在しているなら、実際に足を運んでみたいです。

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2017年07月03日

Posted by ブクログ

瀬戸内国際芸術祭のためのアート作品として粟島に作られた「漂流郵便局」。芸術祭終了後もなくなることはなく、全国から宛先不明の便りを預かる場になっている。この本は、そんな漂流郵便局に届いたハガキが何通も紹介されている。行き場のない想いを抱えていた人も、書くことで気持ちが整理できたり、前向きになれる。漂流郵便局に救われた人も多いのだろうな。浩太くんへの手紙は泣けました。

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2015年11月03日

Posted by ブクログ

久保田沙耶さんが仕掛けたパフォーマンスであった「漂流郵便局」がこのように人々の拠り所になるのは,とても稀有なことであり,素晴らしいことだと思った.

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2015年10月16日

Posted by ブクログ

瀬戸内海の粟島に実際にある「漂流郵便局」。
亡くなった家族へ、未来の自分へ、過去の自分へ、お世話になった物へなど、宛先は様々。
ハガキという限られた中に、伝えたいことが溢れている。
時間や空間を超えて、様々な想いが漂っているステキな場所だと思いました。いつか行ってみたい。

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2015年05月19日

Posted by ブクログ

はじめに漂流郵便局のことを知った時は、なんて素敵なことをする人がいるんだろうと思いました。返事を期待しない手紙を受け付けてくれるなんて、本当にロマンチックだなと。
この一冊には、漂流郵便局に届いた手紙がたくさん掲載されています。読後、その一つ一つが私の心にも漂っているように感じました。
2015.4.14

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2015年04月15日

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