あらすじ
なぜ、彼女たちは日本で産まないのか。
先進国では出産の高齢化が進行している。それにともない、日本でも不妊治療の件数が増加、2012年には体外受精で生まれた子供の割合が27人に1人の割合になった。
しかし、日本では技術の進歩に法律が追い付かず、「出生前診断」「代理出産」「第三者卵子提供」「出自を知る権利」――など、生殖医療がはらむ様々な問題点について、ここ数年、議論を重ねているという現状がある。この国には、いまだ法律が存在しないのだ。
スペイン在住の著者は、ある日、バルセロナで『卵子提供のフリーダイヤル』という日本語のポスターを目にする。
「なぜ、誰のために?」
その素朴な疑問からスペインだけでなく、フランス、アメリカ、日本、タイ、スウェーデンと、いつしか、世界6カ国に亘る不妊治療現場の旅に出る。異なる価値観を持った、各国の医師や専門家から技術や制度を教えられる一方、不妊に悩む女性たちの体験に耳を傾けた。
6組に1組が不妊に悩む日本。各国の専門医や患者の証言を経て、子を授かることの意義を探りながら、日本で起きている不妊治療論争を多角的に論じる。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ずっと読みたかった本。
尊敬するジャーナリストの宮下氏の少し前に出版された本。
不妊治療と言っても、人工授精、体外受精くらいしか聞いたことがなかった。その2つの違いも明確に知らないくらいだった。
海外では第三者の卵子提供による体外受精も可能だという。
不妊治療の話が出るとほぼ登場する
『諏訪マタニティークリニック』
新聞のトップにもでるような日本ではタブーとされている数々のケースを発表しているドクターだが、この本で知ったのは世界的に見れば、このやり方こそ、世界的に一般的だという。
このドクターの
『昔、たくさん子どもが産まれていたときは養子にだしたりは普通のことだった。精子、卵子の養子縁組と捉えたら良いのではないかと。そして子宮がない人に代わりに産んであげるよと無償で心からいう人がいたらその力を借りる、相互扶助の仕組みにすればいいのだ、と。』
目から鱗の考え方だと感じた。
患者の願いを叶えようとする。
不妊治療で悩んでいる人にはどんなにか心強いことだろう。
不妊治療うんぬんの前に、日本の性教育は、避妊に傾いている。だから、こどもができない方法を知っていても、そこから、子どもは望めばいつでも産める、そういう誤った認識になっているのだとも。
日本で、卵子提供などのハードルはまだまだ難しいだろう。それならせめて、学校の教育現場で出産にはタイムリミットがあり、タイムリミット内でも必ず産める訳では無いことを教えてほしいと思う。もちろん親がすることでもあるが。
宮下氏の
世界の視点を日本にも伝えたい、多くの選択肢があるのに知らないのは不幸だから。
はその直後の文章で身をもって実体験されているから、重みがある。
なかなかセカンドオピニオンまではたどり着けても、他の国の技術まではたどり着けないが、選択肢を調べることの重要性はとても良くわかる。
あとがきの最後の一文が、刺さった。
産んでも産まなくても、子どもがいてもいなくても、あなたが幸せでありますように
Posted by ブクログ
世界の不妊治療に関する本です。
とくに卵子提供に重点を置いて書かれています。
日本では,第三者の卵子提供に違和感を抱く人が多いのに対し,欧米では,それほどでもない国があるそうです。
「家」の意識の強い日本と,「個」の意識の強い欧米では,こんなところにも差があるのですね。
不妊治療について,日本の技術は世界トップレベルといってよさそうです。
が,妊娠率や出産率については,あまり高くありません。
この本を読むと,その理由について納得できると思います。
うわべだけを見て,本質を見失うことは多々ありますが,そうなってはいけないことを,この本を読んで強く思いました。
Posted by ブクログ
おわりにの冒頭「子供を産むことが、必ずしも幸福の証とは限らない。しかし、子供を産みたい人が、産むための選択肢がある中で、さまざまな制約により、産むことができないのは不幸である」◆まぁ、それに尽きる。◆うちは悩まなくて済んだだけだ。