【感想・ネタバレ】湿地のレビュー

あらすじ

雨交じりの風が吹く10月のレイキャヴィク。湿地にある建物の地階で、老人の死体が発見された。侵入の形跡はなく、被害者に招き入れられた何者かが突発的に殺害し、逃走したものと思われた。金品が盗まれた形跡はない。ずさんで不器用、典型的アイスランドの殺人か? だが、現場に残された3つの単語からなるメッセージが事件の様相を変えた。しだいに明らかになる被害者の隠された過去。そして臓腑をえぐる真相。ガラスの鍵賞2年連続受賞の前人未踏の快挙を成し遂げ、CWAゴールドダガーを受賞した、北欧ミステリの巨人の話題作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

話題の本を読んでみた。北欧の作品だがアイスランドは初めて。ガラスの鍵賞2年連続受賞。 CWAゴールドダガー賞受賞。
いま世界のミステリ読者が最も注目する北欧の巨人ついに日本上陸

この帯を読んで期待して待っていた。久しぶりに完成度の高いミステリが読める。
ストーリーは分かりやすく、読みやすいのだが、悲しいかな舞台が北極圏に近いアイスランド、登場人物の名前が出るたびに、コツンコツンとぶつかり、慣れるまで流れに乗りにくかった。
ついにグーグルアースさんのお世話にもなった。


事件は、湿地帯に建った住宅地の中にある、石造りのアパートで起きた。
半地下にある部屋は湿気と、猛烈な馬屋に似た匂いが充満した居間で、70歳前後の白髪の男が頭から血を流して倒れていた。

レイキャヴィク警察の犯罪捜査官、エーレンデュルとジグルデュル=オーリ、エーリンボルクが男の過去、背後関係を調べ始める。

エーレンデュルは娘と居間に腰を下ろした、殺人事件の捜査と経緯と現状をくわしく話した。頭の整理でもあった。ここ数日間におきたことをはっきり把握するためでもあった。死体の発見、アパートの臭い、意味不明の走り書き、引き出しの奥から発見された写真、パソコンに満載されたポルノ、墓石に刻まれた言葉、コルブルンと姉のエーリン、ウイドルと謎の死因、いつも見る夢、刑務所のエットリデ、グレータルの失踪、マリオン・ブルーム、もうひとつのレイプの可能性、エーリンの家の窓の外に立った男、もしかするとホルベルクの息子かもしれない。エーレンデュルはできる限り論理的にこれらを話した。

異常な臭気から、湿地の上に建つアパートの床を調べ、破壊された下水道のために陥没した穴を見つける。

殺されたホルベルクの港湾労働者仲間、エットリデ、グレータルを追う。エットリデは刑務所にいて、ホルベルクにはコルブルンのレイプだけでなくもう一件レイプ事件があったことを匂わす。

40年前のレイプ被害者を探す。だが女性たちには家庭があり、難航する。

最初のレイプ被害者のコルブルンは警察に届けたが、ホルベルクが、合意だった、誘われた結果だと主張して不起訴になっていた。
もう一人の被害者にたどり着く。そしてその時期に生まれた息子がいるという。

事件はホルベルクの過去とともに意外な展開を見せて終結する。

アイスランドは10月の長雨で、垂れ込めた雲の下で暗い話が続いていく。
小さな島国に暮らす人たちの生活が伺える。
エーレンデュルはこの事件に関わる仕事にたまらなくうんざりして述懐する。
「どうしたらいいのかわからない。もしかすると何もしないほうがいいのかもしれない。なにも手を出さずに、ことが起きるままにさせておくのがいいのかもしれない。全てを忘れて。なにか意味のあることをするのがいいのかもしれない。なぜこんな惨めなことに首を突っ込むんだ?なぜエットリアのような悪党と話をしなければならないんだ。エディのようなごろつきと取引をしたりホルベルクのような人間がどんな楽しみをもっていたかなど知りたくもないのに、レイプの報告書を読んだり、ウジ虫ののたくる肥だめとなった建物の土台を掘り返したり、子どもの墓を掘り返したり、もううんざりだ!」

また
「人はこんなことに影響など受けないと思うものだ、こんなことすべて、なんとなくやりこなすほど自分は強いと思うものだ。年とともに神経も太くなり、悪霊どもをみても自分とは関係ないと距離をもって見ることができると思うのだ。そのようにして正気を保っていると。だが、距離などないんだ。神経が太くなどなりはしない。あらゆる悪事や悲惨なものを見ても影響を受けない人間などいはしない。へどがのどまで詰まるんだ。悪霊にとり憑かれたようになってしまう。一瞬たりともそれは離れてくれない。しまいには悪事と悲惨さが当たり前になって、普通の人間がどんな暮らしをしているのかを忘れてしまうんだ、今度の事件はそういうたちのものだ。しまいにはおれ自身、頭の中を勝手に飛びまわる悪霊のようなものになってしまうんだ」
エーレンデュルは深いため息をついた。
「この話はすべてが広大な北の湿地のようなものだ」

かれは自分の仕事に飲み込まれないようにつぶやく。 暗い悲惨な事件は、こうして彼の人となりも浮き彫りにする。

エンターテインメントとして成功しているが、不明な部分もある。双子の姉妹を襲った迷彩服の男はどうなったのか。結婚式から消えた花嫁は何の意味があるのか。

レイプ犯が集めた容量いっぱいのポルノ映像はいたずらに醜悪感を増すばかりで、殺された男の写真趣味も思わせぶりだ。
話を人間の醜悪さに徹するなら、上記のような独白は警察官の感傷に思える。


ストレートな簡潔なストーリーは面白いし、犯罪原因も目新しい。アイスランドという馴染みが薄い国に少し慣れた。

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2026年02月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アイスランドの作家、インドリダソンのエーレンデュル警部シリーズ。一時期多かった途中から邦訳されはじめるシリーズの一つ。この作品は三作目。

アパートの一室で男が殺される。一見平凡な事件に思えるが、死んだ男のそばには不可解なメッセージが。メッセージを頼りにエーレンデュルが操作を開始するが…

10年ほどぶりに再読。淡々とした文章で残酷な描写だが、なぜか読み始めると止まらない。事件そのものはそこまで複雑ではないが、非常にやるせ無い。そこがまたこの作品のいいところ。おすすめ。

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2026年01月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

原作は2000年、日本語版は2012年、そしてこの文庫が2015年。そこから約10年経って読んでいる。なんか勝手に歴史を感じる。

でもまあ、舞台が2001年のアイスランドなのはなにか理由があるのかと思ったら単に書かれた時期だったというのが分かったので、調べて良かった。

アイスランド文学を読んだのは初めてかもしれない。翻訳自体はアイスランド語 > スウェーデン語 > 日本語らしい。アイスランドとスウェーデンがどのくらい違うのか似てるのか知らないが、通貨であるクローネはアイスランドとスウェーデンどちらでも通用するので、英語とかよりはニュアンスがキープされやすいのかもしれない。
あとがきにもあったが、著者自身もスウェーデン語翻訳のクオリティは高いのでそこから翻訳されるのは良いことだと喜んだらしい。

ミステリー小説ではあるが、大どんでん返しとかあっと驚く展開とか、刑事と犯罪者のライバルとかそういうのが出てくるわけではなく、中年のタバコを吸いまくる刑事が、同僚に皮肉や文句を言われ、麻薬中毒の娘と喧嘩をしながら淡々と着実に調査をしていき、しっかりと結果をあげていくという作品。
この著者の作品は安心して読めそうだな。

というわけで本編ネタバレ感想。

アイスランドが舞台なので、登場人物の名前がかっこいい。シグルデュル、エーレンデュル、エリンボルク…
ただ、地名も名前と似たような響きに聞こえて、地名なのか名前なのかいまいちわからないときが多い。

死体のそばに置かれていたメモに書いてあった3つの単語、という、作品の根幹を為す重要キーワードに思えたが、最後が「あいつ」というだけで他がわからない。なぜ隠す?単語自体がネタバレになってしまうとかかな?
それとも自分の読み方が単に斜め読みすぎて読み飛ばしたのか?と何度か最初あたりを読み直したが、やっぱりなくて、真ん中あたりでようやく出てきた。「おれはあいつ」。3つじゃねーじゃねーか!まあ、そこは翻訳なのでしゃーない。
というか、確かにこの単語は色々と彷彿させてしまう。

犯罪者が山ほど出てくるが、保険金詐欺と殺人に関与して刑期4年とか、なんか短い気がする。他の犯罪者もなんか処罰が軽いし、女性被害が泣き寝入りというのが多い模様。これが00年代のアイスランドだったということか?そしてあとがきにもある通り、女性への暴行描写がやたらと詳しい。いや、やり方とかではなく、心理的に。でもこれは著者があえてやっていることらしい。こういうやり方をすること絵、問題定義も含んでいると。女性たちが救われるわけではないが、主人公はとにかく大事に丁寧に対応していて、逆にクソ男どもにはそれなりの対応をしてくれるので読んでて安心する。

ちょうど半分くらいでタイトルの「湿地」が出てきた。が、最後まで読んで思い返すと、あんまり事件には関係なかったのではという感じ。でも、この事件自体がなんか湿度高めというかじゅくじゅくしているニオイがするので、良いタイトルなのかもしれない。

合間合間で主人公とその娘さんの、全く穏やかではない日常が挟まれるので、この娘さんも実は事件に関与があるのか…?と途中までは思っていたが、単に主人公についての深堀りをさせるためだけの存在なんだろうなというのが途中でわかった。でも麻薬中毒で、悪い奴らと付き合いがあり、借金もしているこの娘さん、なぜか憎めない…
そして主人公自体もタバコ吸いまくりでずっと真顔なイメージがあり、部下が言う通り確かに事件と全然関係なさそうな調査ばかりさせてる感じはしたけど、どの調査も外れがなく、着実に真実に突き進んでいるため、少なくとも読者側としては信頼度がバンバン上がっていく。ただ、もうちょっと部下に説明はした方がいいんじゃないかな… 市民にはだいぶ優しいけど、部下との会話では突然話を終わらせてどっか行ったり、上から命令を押し付けたりしがち。危うい。
まあ、そんなのが吹き飛ぶくらいの悪徳警察官も出てくるから気にならんけど。

事件自体は最初の方の流れでは想像できなかった、遺伝子欠陥の話で、最後で一気に回収される。すんなり理解できて読書体験的には気持ちいいが、真相はとても切ない。小さい子が病気で亡くなるのはきついよー。

主人公と娘さんの関係性は良くなったっぽいが、続編でまた悪化してたりしそうだな。

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2024年05月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ネットで見かけて。

北欧ミステリーの現在、らしい。
アイスランドは寒いのに火山の島だということぐらいしか知らない。
アイスランドのミステリーを読んだこともない。
典型的なアイスランドの殺人、と言われても何のことやら。
それなのに、なぜか懐かしさを感じるのはなぜだろう。

北欧ミステリーに分類されるがゆえだろうか。
ドラッグの蔓延、若者の失業、伝統的な家族の消失が、
他の北欧の国々と共通しているからだろうか。
それは日本の行く末でもあるのだろうか。

湿地の半地下室で老人が殺された。
2時間ドラマをほうふつとさせる重いガラスの灰皿で。
汚くて無意味で証拠を消すこともない、
不器用な典型的なアイスランドの殺人らしい。

死体に置かれたメッセージには三つの単語、
「おれ は あいつ」。
最初、それが書かれていなくて読み飛ばしてしまったかとあわてた。

殺された男は若い時にレイプ事件を起こしていたことが分かったが、
被害者はすでに亡くなっていた。
殺人の動機は復讐ではないのか。

主人公エーレンデュル捜査官は離婚で息子と娘を失い、
娘は戻ったが麻薬中毒で荒れた生活をし、妊娠中。
だが、一緒に暮らして、少しづつ歩み寄れたし、
胸の痛みが病気ではなくてよかった。

あと、かつての指導者で引退した警察官の存在が謎。

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2022年11月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

※ネタバレ注意

不可能だったことが可能になることがメリットばかりではないよね、という話。
アイスランドの歴史や人種特性、キリスト教圏の宗教観が絡み合って、物語が成立している、お国柄を感じる作品。物語の最後に漂う孤絶感が印象的。
ゲノム解析とミステリーというキーワードで思いだすのが、ソウヤーの「フレームシフト」で、あちらの日本での刊行年が2000年で本作が2015年。15年でぐっと自分の周りに近づいたな、と感じた。

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2025年01月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2013年版このミス海外編4位。
暗いアイスランドの空(想像です)のような静かな警察小説。但し展開は早く読みやすい。
妻に去られ娘は麻薬中毒というベテランの刑事が部下とともに殺人事件の真相を追っていく。
殺された老人は、レイプで訴えられた過去があった・・・というところから展開していく話で、女性にはつらい部分もあるかもしれない。
過去が明らかになっていくことにより、悲劇が起きたという真相は、痛ましく悲しい。

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2023年07月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

久しぶりに寝る時間を削って読みたい本を読んだ。
主役エーレンデュルはシリーズぽくなってるようなので、この次も読みたい。
馴染みのないアイスランドが舞台なのも自分にとっては新鮮で良い。、

追記
確かホルベルクの悪友グレータル?の内臓が無かったと思うのだけど、その理由を読み飛ばしてしまった気がする。誰か教えてください。

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2022年06月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

アパートで見つかった老齢の男の死体。突発的な犯行の様子は、殺人事件の少ない典型的なアイルランドの殺人。だがそこには「おれはあいつ」という、犯人が残したと思われるメッセージがあった。
調べを進めると、殺されたホルベルクは過去に女性をレイプしていたことがわかった。さらに、ホルベルクにレイプされた女性コルブルンはその事件の結果妊娠し、娘を産んでいたことも発覚する。だが、その娘は4歳で脳腫瘍のため死んでしまった。
エーレンデュルたち警察は、死んだ娘の病気はホルベルクからの遺伝性の疾患なのではないかということと、ホルベルクにレイプされ、子どもを産んだ女性が他にもいたのではないかと睨む。
時を同じくして、ホルベルクが住んでいた湿地のアパートの床下から、かつてホルベルクとともに悪さをしていて、後に行方不明になっていた男の死体が見つかる。
エーレンデュルはかつてホルベルクにレイプされた女性を見つけだし、彼女がエイナルという男の子を産んだことを知る。そしてそのエイナルは、アイスランドが全国民の健康状態を記録したデータベースにアクセスして、自分の出自とホルベルクから受け継いだ遺伝性の疾患のことを知ったのだった。
北欧ミステリ特有の陰鬱さ。主人公の刑事・エーレンデュルも、家庭に大きな問題を抱えている。そういった要素もまた惹きつけられるポイント。

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2025年06月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

このミス海外編2013年度3位。
アイスランドの作家が書いた刑事ものの推理小説。不良娘を持つシングルファーザー刑事が主役。不規則な生活で身辺が荒れ放題、海外の刑事もので良く見るような設定。ボクはサッカーが好きでW杯2018ロシア大会でのアイスランドの活躍とバイキング・クロップスが記憶に新しく、そこを舞台にした小説は過去に記憶がなく興味深く読めた。
ただ、全体の流れがあまりスムーズでなく読み進めるのが少ししんどかった。そんなに長くない小説なんだけど全体的に冗長な感じがあり、事件が進展するところはご都合主義的な部分があってうまく興味がつながっていかない感じでした。

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2022年10月22日

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