【感想・ネタバレ】三越伊勢丹 ブランド力の神髄 創造と破壊はすべて「現場」から始まるのレビュー

あらすじ

21世紀に入っても日本経済のデフレは続き、個人消費においては極端な二極化が進む。多かれ少なかれ“殿様商売”をしていた百貨店業界の売り上げがシュリンクしていったのは、当然といえば当然の帰結だった。こうしたなか2009年6月、三越伊勢丹ホールディングスでは、大西洋氏が社長に就任。すると、生き残りのカギは「現場力」にありとばかりに、仕入構造改革をはじめ、次々と新たな挑戦を行い、「結果」を出しはじめた。来る16年度からは、第一線の販売員約5,000人の一部に対し、成果給制度も導入するという。そこで、「三越伊勢丹」という圧倒的なブランド力がいかに現場に支えられているか、バイヤーやスタイリスト(販売員)をはじめとする現場の声を交えながら、大西改革の全貌と経営哲学に迫る。「現場の重要性を忘れた瞬間に、三越伊勢丹という会社はダメになる」と断言する大西社長。経営トップの鬼気迫る思いが結実した渾身の一冊である。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

世界一の営業利益を上げる、
三越伊勢丹グループの社長(当時)・大西氏自らが語る、
百貨店にとってもっとも大事なことと、
取り組んでいることについての話。

百貨店という商業形態そのものが、
衰退の一途を辿っているそうです。
売り上げ規模がずっと減少している。
そんな中、百貨店としてトップの地位にいる
三越伊勢丹ですが、
そうえいば、なにか良からぬニュースになっていたな、と
関係するニュースを過去へと追っていくと、
大西氏はクーデターでその座を追われたなんて記事も出てくる。
本書にはあまり書かれていませんが、
三越伊勢丹ホールディングスには、
ドロドロしていて保守的でどうにもならない体質が強くあるように見えてきます。
そんなわけで、頓挫してしまったのですが、
百貨店業界に革新を起こすその青写真はどうだったのかが
本書で語られているので、
それを読んでいくことになりました。

もっとも大事なことは、現場力だと言います。
スタイリスト(接客をする店員)こそが、
百貨店の顔であり、モノを売る最前線で活躍する社員であり、
彼、彼女らのモチベーションがちょっとでも上がれば、
顕著にそれが数字になって表れるそうです。
だから、スタイリストたちをどう大事にし、
働きやすくし、勉強してもらうか、なんですね。
三越伊勢丹では、営業開始時間を遅らせて営業時間を短くし、
スタイリストの負担を減らすことで、
逆にその接客の質をあげていく戦術をとりました。
長く働かせればいいってものじゃないのは、
他の業種でも一緒で、昨今よく言われていることです。
短い労働時間で効率よく仕事をするドイツ人と
比較されたりもしてますよね。

本書では、
これからの三越伊勢丹ホールディングスの戦略を簡便な形で述べてもいて、
その考えの道筋をたどっていくと、
なかなか勉強になるというか、面白いのです。
三越日本橋のコンセプトはカルチャーにあんるだとか、
伊勢丹新宿本店のコンセプトは、ファッションミュージアムだとか、
そういうのだけでも、へえ、と興味深くてイマジンーションをそそられますし、
脱・デパ地下という考え方も、それで足を運ぶのに抵抗を感じないのであれば、
いいんじゃないかなあと思えもしました。

百貨店の同質化が、衰退の主たる原因だと大西氏は喝破しています。
それ解消する策をいろいろと打ちながらも、
志半ばで社長を退任せざるを得なくなったのですから、
残念だったろうなあと思います。

僕は子どものころから何年か毎年、用事で一週間とか十日間とか、
東京の池袋に滞在することがあったのですが、
その頃は、西武デパートや東武デパートをぶらぶらしたりしてました。
まあ、ほとんど、夕食を食べに行って帰りに本屋さんに寄るような感じで、
子ども服売り場だとかいかなかったですけど、
一フロアが広大で何階もあるビルを歩いているのは楽しかったですね。
地下の惣菜売り場で弁当なんかを買って食べるっていうこともあって、
たとえば京樽の巻き寿司なんか、おいしかったなあと覚えています。

ただ、やっぱり、庶民としては、
デパートって高級で、背伸びしないといけないような、
上客になんてなれない異世界でもあるわけです。
シャツ一枚二万円、ネクタイに三万円、靴に十万円。
なかなか手が伸びないですよ。
でも、そういう場所があるのは、なんだか楽しいことは楽しい。
と、最近、買い物はずっとアウトレットで済ませている僕は思うのでした。

こういう業界の話ってなかなか知ることができないので、
おもしろく読みました。
そういえば、某百貨店に勤めていて、
今はどうかわからないですが、
酒類のフロアマネージャーをやっている友人がいました。
最近は連絡を取っていないからどうなっているかわかりませんが、
その世界の空気をちょっと感じられて、よかった気がしました。

0
2018年01月27日

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