あらすじ
葬式帰りの中年男女四人が、居酒屋で何やら話し込んでいる。彼らは高校時代、文芸部のメンバーだった。同じ文芸部員が亡くなり、四人宛てに彼の小説原稿が遺されたからだ。しかしなぜ……(「楽園を追われて」)。ある共通イメージが連鎖して、意識の底に眠る謎めいた記憶を呼び覚ます奇妙な味わいの表題作など全14編。ジャンルを超越した色とりどりの物語世界を堪能できる秀逸な短編集。
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Posted by ブクログ
読んでいて思ったのは、「恩田陸って、やっぱりプロの作家なんだなー」って(爆)
なんて、そんな失礼なこと言ったら、間違いなく怒られそうだけどw
でも、発想の豊かさだったり、読んでいてビシッと決まる表現にハッとさせられたり。あと、作家だけに人生の場面場面において、鋭く目を光らせていたりしているんだなーとか。
冗談抜きで、これは上手いと思った(全部じゃないけどw)。
「おみそれしました。はぁはぁー!」って感じ。
ただ。恩田陸の小説の魅力って、必ずしも「上手い小説」ではないんだよね。
自分は、最初に「六番目の小夜子」を読んで。その煮え切らない結末に不満を抱きつつも、ストーリーが醸し出す謎めいた雰囲気にファンになって。
その後、1、2冊読んだ後、「月の裏側」を読んで、恩田陸は二度と読まない!と誓ったことがある(爆)
でも、その後、知り合いから「ユージニア」が回ってきて。嫌々読んだら、これがよくて、またファンになったという口だ。
そういうこともあって、恩田陸の小説に結末は絶対期待しないことにしているのだがw、ただ、昨今は「どんでん返しがなければ小説にあらず」みたいな風潮があることもあって。怒涛のどんでん返しや、伏線全て回収のような至れり尽くせり小説じゃないけど、結末の前までは読んでいて本当に楽しいのが恩田陸のスゴさだって思うのだ。
その「結末の前までの面白さ」は、ファンそれぞれだと思うが、個人的には、謎を謎で思いつくまま繋いでいく(プロットなんてもんを全く無視した)ストーリーだと思っている。
プロットを無視なんて言うと、今はプロットで書く小説が全盛っぽいから。それは悪いことのようだが、自分はプロットで書く作家は嫌いなのでw、むしろそれがよいのだ。
…と、何だかプロットの話になってしまったが、そういう意味では、この「朝日のようにさわやかに」は短編集だからなのか、それとも恩田陸だからか、プロット云々はあまり感じられない(その反面、短編だけに、著者は自身が苦手とするプロットをつくっているのかな?という気がしないでもない)。
それこそ、これって絶対夢だよねって思ったらその通りだった、「赤い毬」みたいな話も入っている。
短編集だから、他愛のない話もあるのだが、ハッとさせられる話もある。そのハッとさせられる話のハッとさせられる部分、それが「上手いなー」と思わせられた点なんだと思う。
ということで、以下は個々の話の感想。
「水晶の夜、翡翠の朝」は、「恩田陸の小説の魅力というのはこの雰囲気にこそある」と思う人はよいのだろうが、自分はそうではないでダメw
ていうか、自分はこれを読んで、恩田陸に「推理小説」は合わない。恩田陸に合うのは「ミステリー」だ!と思った。
「ご案内」はなー。
正直、文革的なアコギさよりも、今はプラットフォーマーと呼ばれる企業の方がよっぽどアコギだからなぁーって感じw
「あなたと夜と音楽と」は、ある意味「推理小説」なのだが。でも、会話で物語が進んでいく、恩田陸ならではのところがあってよかった。
あくまで短編なので、ちょっとショボいところがあるのだが、物語としてみるならこの本の中で一番面白い話なんじゃないだろうか?
「木漏れ日に泳ぐ魚」だったか。二人の会話で成り立つ話があったが、読んでみようかなという気になった。
「冷凍みかん」は、(自分は)恩田陸はこういう話は合わないかなーと思った。
たぶん、旅行していて、売店で売っている冷凍みかんを見て発想した話なんじゃないかと思うけど、作家ってそんなこと考えているんだなーと面白かった。
「赤い毬」は、展開される場面が次々、ぱぁーっと浮かんでくるのが、何だかすごく快感だった。
自分は、この話と「あなたと夜と音楽と」が好きかなー。
オチは、さすがに夢じゃないんだろうな?
「深夜の食欲」と「いいわけ」は、正直よくわからなかった。
ぶっちゃけ、短編集によくあるような話だなーという印象しかない。
「一千分の一秒殺人事件」は、ある意味恩田陸らしい話。結末は弱いのに、その前までがすごくいい!
あとがきには書かれてないけど、これも夢が元になってるよーな気がするけどどうなんだろう?
その家の意味不明さとか、唐突に出てくる富士額の植木屋とか、かなり夢っぽいw
「おはなしのつづき」と「邂逅について」は、うーん。なんだろ?w
全然違う種類の話で、本来はまとめて感想を述べられないのだろうが、とりあえず「うーん…」w
「寂しいお城」は、去年読み始めてつまんなくてやめたw、あの2冊の元らしい。
これを読む限り、あの2冊とつながっているようには思えないのだが、この話は結構好みだったりする。
「楽園を追われて」が、恩田陸って、実は上手い小説を書く人なんだなーと思った話。
あとがきで著者は、“私にしては珍しい「普通の」話”と書いているが、なるほどな―と色んなことを思った。
実は読み始めてすぐ、恩田陸オールスターズの一員の煙草をくわえた中年女が出てきて、「え、またこの人?」とちょっと引いたw
でも、この話は、それがそんなに気にならないだけの不思議な魅力があるように思う。
といっても、たんに面白い話ではない。亡くなったかつての友人をみんなで上から目線でこきおろすだけの話で、そう言ってしまうなら結構嫌な話だw
ただ、かつての友人の葬式の後の会話って、実は普通にこんなものだったりもするわけだ。
もっとも、考えてみれば、登場人物たちが「あいつはいい奴だった」とひたすら語り合う話を読まされても面白くも何ともないのか(爆)
ていうか、この話の登場人物、例の「Y島」に行く話の登場人物とそっくりそのまま入れ替えても全然違和感がない気がするw
この話は著者が「普通の」と言うだけあって、恩田陸特有の謎を謎でつなぐ展開はない。
また、著者の魅力の一つである、多感な時代の登場人物たちを描くことで、読者にノスタルジーを想起させるのではなく。
疲れた中年が、かつての多感だった自分たちを語ることでノスタルジーを想起させる形になっている。
物語としては、そんなに大した話ではないのだろう。オチも弱い。というか、あれは、実は誰もが彼の才能に舌を巻いていたということなのか?
それとも、「楽園」だった自分たちの過去への憧憬として、それを無意識に持ち帰ったのか、その辺はよくわからなかった。
にもかかわらず、上手いなーと思ったのは、登場人物たちが語る、ちょっとしたエピソードや思いをさりげなく取り入れている所なんだろう。
何度も書くようだが、恩田陸というと個人的には謎を謎でつなぐストーリーと、それによって醸し出される雰囲気なのだが、逆に言うと、著者はそれだけとも思っていたのだw
でも、これを読むと、実は人の営みの断面を鋭く見ているんだなぁーって。
変な話、やっぱりプロの作家なんだなーって思わされたw
ただ、しつこいようだけど、恩田陸の小説の魅力はそこではないと思う。
「卒業」は、「寂しいお城」みたいに長編の元なのかな?
自分は描写がまるっきりアニメを連想させることもあって好みではなかった。
で、「朝日のようにさわやかに」は、なに、またエッセイなの?
と、拍子抜けしたら、(あとがきによると)どこか途中からフィクションになっているらしい。
前に「ブラザー・サン シスター・ムーン」を読んだ時。巻末の対談って、これは本当の話なんだろうか?もしかしたら、この対談も含めて「ブラザー・サン シスター・ムーン」という話なんじゃないのかな?と思ったが、これを読んで、あれはフィクションだと確信したw
Posted by ブクログ
理瀬シリーズが好きで買いました。
タイトルの朝日のようにさわやかに、全然内容はさわやかっぽくない、だけどそこがいい!
この短編集は買って当たりだと思います。
Posted by ブクログ
スプラッタホラーから児童文学まで、様々なジャンルの物語を詰め込んだ短編集。
著者の自由な発想のいいとこ取りをしたような贅沢さを感じる。パチパチと頭を切り替えて楽しめた。
特に、奇妙な連想で進んでいく表題作にとても惹かれる。 無意識に連想するときのきっかけは何なのか、想起させるポイントは記憶とどう結び付けているのか、自分と他人の解釈の違いなど、考えてみたくなった。
Posted by ブクログ
短編集。 全然違う作風で、多様多彩でそれぞれ面白い。
タイトルの作品はエッセイだった。 曲、きいてみようか。。
文庫本にあたっての後書きあり。
が、その後書きを読んでも分からない事もあって、もっと色々知りたいと思う。。
(アガサクリスティとか、『いいわけ』のモデルとか。。)
フォロワーさんに教えて貰って『淋しいお城』目的。
(『七月に流れる花』と『八月は冷たい城』の予告として書かれたもの)
こちらの方が、直接的な死 ではないけれど、悲しい、と感じた。
けれど、淋しい子どもを探してくるみどりおことが妙にサバサバしていて。。 役割交代の時に以前のそんな感情すら食べてしまうのだろうか。。
他作品も面白いが、読んだ時の状況、年齢によって、どの作品が心に残るか、違ってきそう。
『おはなしのつづき』
ネタが白雪姫だったから、お母さんが美人なお医者さんを殺してしまったのかと思った。。
全然違った。。。
そんな予想をたてた自分にヘコんだ。。
今江さんの『さよなら子どもの時間』も読んでみたい。
『卒業』
このタイトルでこの内容を予想できる人がいるのだろうか。。
強烈に記憶に残る。。