あらすじ
水の都ヴェネチアで不思議な双子の老姉妹に出会ったことに始まる、夫婦の奇妙な体験「いま見てはいけない」、突然亡くなった父の死の謎を解くために父の旧友を訪ねた娘が知った真相「ボーダーライン」、急病に倒れた牧師のかわりにエルサレムへの二十四時間ツアーの引率役を務めることになった聖職者に、次々と降りかかる災難「十字架の道」など、サスペンスあり、日常を歪める不条理あり、意外な結末あり、人間の心理に深く切り込んだ洞察あり、天性の物語の作り手、デュ・モーリアの才能を遺憾なく発揮した作品5編を収める、粒選りの短編集。【収録作】「いま見てはいけない」「真夜中になる前に」「ボーダーライン」「十字架の道」「第六の力」/解説=山崎まどか
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Posted by ブクログ
目次より
・いま見てはいけない
・真夜中になる前に
・ボーダーライン
・十字架の道
・第六の力
ゴシックサスペンスの小説『レベッカ』で有名な、ダフネ・デュ・モーリアの短編集。
全体像が見えないことによるドキドキ感は健在で、「どういうこと?どういうこと?」と手さぐりで読み進めていくことの快感。
特に表題作の「いま見てはいけない」は、なんとなく結末が想像できるのではある。
けれど、押し寄せる不安で、結末を確認しないではいられない。
ただ、カタルシスを得られるかと言えば、それはない。
この短編集全体がもやもやを抱えたまま沈んでいくような読後感。
「ボーダーライン」はアイルランド問題、「十字架の道」はキリスト教をもっと知っていれば理解が深まったのだろうか。
私の中で消化不良のまま残されている。
「第六の力」
映画化作品が多いデュ・モーリアだけど、これについては清水玲子で漫画化を希望。
絶対合うと思うんだ、彼女の作風と。
オカルトと科学の融合?混濁?
濃密なイギリス臭漂う作品集。
全部違う作風なのに、全部イギリスだったわ。
Posted by ブクログ
ずっと読みたかった「いま見てはいけない」。唯一無二の存在感のある作品だった。水面下で不吉なことが起こりつつある不安感。唐突の幕切れは鉛のような後味の悪さを残す。
ホラーかと思っていたので、想像していたストーリーとは違ったが、ある意味これもスピリチュアルホラーか。
そのほかの収録作品は、暗示的な内容が多くて少し難しかった。【鳥】のほうが娯楽小説として楽しめたが、「いま見てはいけない」ではモーリアの底知れぬ筆力を再確認できたので、読んでよかったと思う。