あらすじ
超人気シリーズが、書き下ろし長編小説に!
髪結いの伊三次と芸者のお文。仲のよい夫婦をめぐる騒動を、江戸の夜空にかかる月が見守っている。大河ロマン的な人情時代小説です。
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Posted by ブクログ
2019/2/5
すっ飛ばされて気になっていた年月を回想する形。
読んでる間は夢中だから思わないけど、章を読み終えるたびに思うのは作者が死を宣告されていて、おそらくもうかなり目前に迫ってると思われること。
だから感謝して生きようとか言われると何とも言えない気持ちになっちゃうのよね。
身につまされるけど現実にも戻ってしまう。
龍之進と本所無頼派の次郎衛の邂逅はとびきり素敵だった。
近頃影の薄い不破様の活躍も見られてよかった。
髪結い伊三次シリーズは、未完になったんだっけ?伊与太が、聞いたんだよね。「月は、誰のもの?」って、誰のものでも無いけれど、一人占めしちゃいけないって、教えてくれたのは、お文の実の父親で、伊与太の実のお爺ちゃんだったよね。何か、胸にしみる話だな。
Posted by ブクログ
とうとう本当にこれで最後です。
最初で最後の長編が描いているのは、シリーズ中で飛ばされた10年の出来事。
家事で焼け出され、すべてを失ったことから伊与太は何を見ても「これは誰のもの?」と聞くようになった。
自分は何も持っていないことを確認するかのように。
そんな伊与太が「月は誰のもの?」と聞いた相手は…。
火事の後妊娠に気づき、出産までの間今まで以上にお座敷仕事をすることにしたお文。
そこで知り合った老人が、実の父親だと知りながら、父親の家族を思い知らぬふりをするお文。
そんなお文の気持を受け入れる父だが、伊与太にはこっそり「伊与太のお爺ちゃんは、このわしだ」と言っていた。
そして、お文の娘の名付け親になってくれた。
お吉…お文がお座敷に呼ばれる時の名前、文吉からつけてくれたのだろう。
決して出しゃばらず、蹴れどしっかりと娘を見守ってくれる父。
お文にとって、何より幸せなことだったろう。
龍之進が仕事終わりにふと見かけたのは、本所無頼派の首領・薬師寺次郎衛。
家を勘当され町人になった次郎衛は、駄菓子屋の親仁になっていた。
共にあれから所帯を持ち大人になった二人は、改めて友人になる。
だからか。
短篇の方では唐突な感のあった、龍之進の手下を次郎衛にという話は、ここから繋がるのだった。
この長篇を読んで、作者が細かなところまでしっかりシリーズの構成を考えていたことがわかる。
この作品にすら入りきらなかったエピソードはいくらでもあるのだろう。
小さな伊与太の可愛らしいエピソードをもっと読みたかった。
龍之進の、茜の、伊与太の、お吉のその後も読みたかった。
本当に寂しい。
Posted by ブクログ
すっとばされた気がしていた大火事後の十年が
描かれていた良かった。
お文さんが実の父親と交流が出来たのも、
本所無頼派の最後が知れたのも、
龍之進と無頼派の一人が心を通わせていたのも、
龍之進がふてくされていた時につ
き合っていた芸者が幸せになっていたのも、
伊三次の読みがあたって誘拐が解決したのも、
良かった。
Posted by ブクログ
文庫まるごと書き下ろしという贅沢な1冊。
『無頼派』と『純情派』(中二病的で恥ずかしくなるけど、当時彼らそれくらいなんだよね)の決着やら、お文の父親のこと、不破さんちの長男のやさぐれに巻き込まれた感がある芸者さんのその後など、気になっていたいろいろなことをこれでもかというほど、書いている。
個人的には緑川さんちの御新造があのぎすぎすした家庭や男衆や奥さんをなごませてくれているエピソードがよかった。
不破さんちの奥さんも1巻の頃と比べると大人になって、自分の人生をいいものだと受け止められる度量も出てきてよかった。
伊三次の浮気未遂事件もいつもの宇江佐さんなら嫌な終わり方をしそうだけれど、ほろ苦いくらいで終わっているし、それなりにすっきりした終わり方。
家を乗っ取られた娘さん姉妹も性格がよい子で、容疑者になった奉公人を思いやってるし、その奉公人もご主人夫婦を本当に慕っているし、姉妹のおばさんも殺されたご夫婦もいい人ばかりで、悪い人は真犯人のみという、どうしたんだ、宇江佐さん! めっちゃいい話のうえにラストも放り投げたような書き方じゃない。
後味のよい番外編集でした。
Posted by ブクログ
お文のお父さんが出て来た。すごくあたたかい人で泣きそうになった。良かったね。あと、伊佐次が浮気しなくて良かった。自分が弱ってる時は危ないんだなあと。とりあえず、伊佐次になんで良いことないんだろう。伊佐次が主人公じゃないのか…