【感想・ネタバレ】越境の時 一九六〇年代と在日のレビュー

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Posted by ブクログ

ネタバレ

プルーストの「失われた時を求めて」を完訳した著者が、自身の1960年代を振り返った私記がまとめられた本。小松川事件と金嬉老事件という在日朝鮮人が裁かれた2つの事件を通じて、著者が民族問題にコミットしていった様子が簡潔に書かれている。李鎮宇をジュネにたとえたあたりや、金嬉老の弁護を支援する支援団体を立ち上げるあたりは、人の美しさや醜さがあらわれていて興味深かった。ただ、在日の問題は60年代よりは多少進展したものの現在もまだとても扱いづらいテーマなので、著者も極論を避けようと穏やかな言い回しをしているし、ここで自分が何かを述べるのも難しい。
李鎮宇は他者から規定された「朝鮮人であること」を日本人に対して告発するために口をつぐんだし、それとは対照的に金嬉老は朝鮮人であることを巧妙に利用しようとした。ここからもこの本で扱われている論が正しく理解されづらいかことを示している。しかし、それでも60年代の時代の勢いと片付けるだけでなく、民族責任について、もっと直接的な意見も欲しかった。

アルジェリア独立やベトナム戦争の頃にフランス留学していた著者の実体験の話も面白い。

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2015年08月14日

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