【感想・ネタバレ】武曲のレビュー

あらすじ

これが二十一世紀の剣豪小説だ!

無自覚な天才少年・羽田融とその「殺人刀」の血を恐れる剣道部コーチ矢田部研吾。反発と無視を乗り越えやがて二人は運命の対戦へ。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

真剣に剣道と向き合って己を研く矢田部研吾。それが過ぎて、研ぎすぎて薄くなった刃のようにその技は鋭く、けれど脆くもなり……いわゆる闇落ちのような状態になってしまう姿に、なぜか同情してしまいます。

真面目だけど不器用すぎて、要領よく生きられない姿がそうさせるのかもしれません。

対する羽田融。剣の技に没頭するあまり、矢田部親子と同じように殺人刀の道に落ちかけます。憶測ですが、表層的な格好よさに魅せられて自己満足に陥り、相手を殺し自分を活かすことだけを考えていたからなのかな、と(若人なら普通のことだとは思いますが)。

しかし一級審査後、その印象がガラリと変わりました。「完全な捨て身の状態であることが、最も自分自身でいられる気がした」という一文から「無防備=相手を自由にさせる」と連想し、そこから融が活人剣に目覚めたように思った次第。

それまでは悩み・混迷・惑いという要素が多く、どこか鬱屈した雰囲気が作中に漂っていたように感じられましたが、上記の一文以降は爽やかで明るい空気を感じました。年齢的に近い研吾の方により感情移入してしまいましたが、融の今後の成長も気になるところ。「武曲II」が純粋に本作の続編なら、文庫化を待たず単行本を手にとって読んでみたいくらいです。

0
2017年09月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2025.08.24-2025.12.13

なかなか時間が取れずゆっくりとした読書になってしまったが、面白い物語だった。

「剣道の空気感や試合う時の表現ってどんなものがあるんだろう?」
これが本書を読むきっかけであった。
私自身、小学生〜高校生まで剣道を習っていた。相手と剣を交える時の緊張感や、多種多様な剣風、面金の奥から不思議とよく見える相手のまなざし。
ああいった独特の要素は、自分の視点でしか体感することはできず、客観的に剣道の体感を言語化してあるものを読んでみたかった。

結論から言えば、この小説は剣道だけでなく、それ以外の生身の表現が非常に秀逸だった。登場人物たちの闘争心をはじめ、絶望感、焦燥感、絶頂感…すべてがじっとりと書かれている。そのため、間違いなく目的は達成した。

p250-l11
木刀を構えながら、静かに霜が降りるように蹲踞くる。そして、煙が一筋上がるように、また静かに立ち上がる。

この部分を読んだ時、静謐。それでいて圧のある人物が私の目の前に立っている気さえした。静なのに、重く、大きく目の前の存在を感じる。剣先を逸らすことにひどく緊張する。あの感覚を、思い出すのである。

剣道をやったことがない人には、詳細に。剣道をやったことがある人には、緻密に。剣道の空気が伝わる文章で、非常に良いと思った。

ストーリー自体は、自己との対話、欲望の行末、他者への寛容が、メインになっていると感じる。個人的に、登場人物たちの行動や精神の変遷には、仏教的精神性が絡められており、羽田や矢田部が目の前の問題を乗り越えていく様は小さな解脱のように感じた。

抜けた先にはまた各々の葛藤に絡め取られていくのだろうが、それぞれベクトルの異なった問題へ、己の力と剣に向き合うことで、また解放に向かうのだろう。
この繰り返しと、彼らの成長を予想することのできるラストは、ワクワクとしたまま物語を終えることができた。

0
2025年12月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作家さんを存じ上げなかった&表紙と帯に釣られて購入しましたが、剣道部だった自分の経験も踏まえて級落ちする人間は実際に回りにいたからなあとも思わなくもなく…w
アルコール中毒で落ちていくところは心がしんどかったですが現実味はあんまりないです。それもそれで話しとして受け入れて、青春スポ根というよりも駄目な大人が高校生と向かって自分のアイデンティティを問いグラグラする話しって印象がありました。
ちょっとした文章にドキッとするのでこの作家さん中二心を掴んでるな・・・とも思ったり。

0
2015年04月27日

「小説」ランキング