あらすじ
たんぽぽ色の髪が風に舞う、未来から来た女はいった。「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた」…SF作家ロバート・F・ヤングは、生涯で約二百作の短編を遺した。その魅力を日本で初めて紹介した名訳者・伊藤典夫の編集でおくる、甘く切なく美しいヤング傑作選。永遠の名作「たんぽぽ娘」改訳決定版の他、全十三編。
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Posted by ブクログ
ロバート・F・ヤングが送るSF短編集。全体的にハッピーエンドが多くロマンチックな作品が多い。
「特別急行が遅れた日」
SFでよくある「小さな世界」の短篇。そのネタ自体はオチまで読まずとも察しのつく読者は多いだろう。日常的な日々の中のちょっとした変化と、被造物がこの階層からなる小さな世界とその創造主を意識した所で短篇は終わる。変化はまさに神のいたずらであり、いつもと変わりない日々が固定されているのはゾットするのを通り越して諦観にも似た気持ちを抱いてしまう。
「河を下る旅」
表題作を除けば個人的にはこれが一番面白かった。謎の河下り。薄々その理由に気がついているがそこから目を背けている男女。とどのつまりは三途の川であり、河の上での会話、土手にある宿で泊まっての身の上話などが走馬灯として繋がっていく。途中の自殺の途中であることが分かってからの文字通り急流のようなストーリー展開が見どころである。最後は自殺をきっかけとして二人は運命の出会いを果たすわけだが、ホッとすると同時に非常に美しい終わりであった。最も短篇らしい短篇であり、完成度は高い。
「エミリーと不滅の詩人たち」
詩を読むアンドロイドとそれに魅せられた補助学芸員の話。詩を読むアンドロイドという設定が素晴らしく、そうした芸術は必要とされず、より分かりやすいものほうが喜ばれるという苦悩はとても生々しく嫌というほど理解できる。詩人のアンドロイドを救う方法が、展示物の車に乗車させるという解決策はとてもミラクルで、まさに博物館で働く人間らしい企画とアイデアの勝利であろう。余談だが、「詩の世界の空が落ちてきた」や「エミリーも詩人たちと同じ船に乗っている」などの訳文が雰囲気とあっていてとてもいい。染み渡る一本である。
「たんぽぽ娘」
流石の表題作というだけあって素晴らしいSF短篇である。突然丘の上に現れたタイムトラベラーだと名乗る若い女。そんな彼女に恋をしてしまい、逢瀬を重ねる主人公。彼の知らない不安を目に浮かべる妻。三者三様の思惑が絡み合った恋の物語で、丘の上に現れた若い女の正体が、彼の妻の若い頃だというオチが素晴らしく、まさしく時を超えたラブストーリーである。昔に会っていたからこそ、その日その瞬間に恋に落ちることを妻は知っており、その恋が本物であることを証明するために若い時の主人公と会って結婚する……しかし主人公がその日に恋に落ちることは、すでに決定された未来であり、そこから先のことは分からない。妻の長年の不安の正体が明らかになると同時に、主人公の恋も成就するというアクロバティックなアイディアであり、これはもう思いついたもの勝ちだろう。
「第一次火星ミッション」
子どもの頃のバローズ的世界観の空想的な火星の旅。大人になって宇宙飛行士になり、本物の火星に行くと、そこで子どもの頃になくしたナイフが落ちてあり、それをそっと埋め直す。子どもの想像力は無限であり、ひよっとしたら現実も捻じ曲げてしまう力があるのかもしれない。
だいたい印象に残ったのはこの三篇で、全体的に読みやすい短編集だった。えげつない結末やソリッドな作品はほぼ皆無だが、センチメンタルなアイディアが冴え渡っており、有名作品と言うだけあって一読の価値のある作品集である。
Posted by ブクログ
Robert F. Youngの200以上ある短編から某北鎌倉の古書店作品で登場した「たんぽぽ娘」をはじめとしたボーイ・ミーツ・ガールものを13編収録。SFという括りではあるけど、その範疇ではないと思われる作品もちらほら。やはり「たんぽぽ娘」が抜きんでていると思う。おじさんと少女のロマンスかと思ってからのラストは良い終わり方だった。とてもロマンチックな短編。他に「荒寥の地」「ジャンヌの弓」も良かった。あとがきで訳者が少女愛をこじらせ長編は壊れていると書いているが逆に壊れっぷりが気になってしまった。
Posted by ブクログ
本作は13の短編を収録した本で、作品の多くがロマンス的で、ボーイミーツガールという特徴がある。本作のなかでも有名なのが「たんぽぽ娘」であるが、これは主人公が出会った若い女性と主人公の妻の関係がポイントである。
Posted by ブクログ
好きだなというお話と意味がわからないお話が顕著すぎた。読み終えることが目的になってしまいよくわからない作品がたくさんあった…。
・特別急行がおくれた日
あまりよく分からなかった。列車を動かしている人たちは実は列車のパーツ、擬人化みたいな話?
・河を下る旅
各々自殺した男女が、(夢の中?意識朦朧としてしいる中)河を下る中で出会い、恋に落ち、やっぱり生きたいと思うお話し。幻想的で好きだった。
・エミリーと不滅の詩人たち
アンドロイドの詩人家たちを愛する博物館勤務の女性のお話。これも好きだった。
・神風
ちょっとこれもよく分からなかったけど、昔の「お国のために死ぬ」みたいなお話し。自国の男性と敵国の女性がそれぞれ捨て身で突っ込むが、その中で出会うお話。
・たんぽぽ娘
表題のお話。他の女性には見向きもしないくらいの愛妻家の男性が、山で出会った未来から来たという女性と恋に落ちるが、それは現在の妻の若い頃であったというお話し。ちょっと違うけど、「今会いに行きます」に似ているところがあってとても好きなお話しだった。
・荒廖の地より
このお話も温かくて好きなお話だった
放浪者のローンを、裕福とは言えない心優しい家族が、寝るところを貸してあげたり食事を出してあげたり手を貸してあげる。そのお礼にとローンは働き、お金を入れたり暖炉を買い換えたり、家族とローンは次第にかげかえのない存在になっていく。仕事をクビになったタイミングで、ローンは出ていくという。家族としては、いてもらいたかったが。
ここまで書いたけどあらすじ書くの難しかったので単語で思い出せるように記録。
タイムトラベラー ある地点で忽然と消える 数年後家を建てた 地面から出土品 ちょうどローンが消えたあたり 手紙や靴下や洋服が中に入っている
・主従問題
町単位で売りに出された物件の積算にいく主人公。そこで出会った女性と犬。家から繋がる異世界。
・第一次火星ミッション
よく分からなかった。
・最後の地球人、愛を求めて彷徨す
よく分からなかった。
・11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス
よく分からなかった。
・スターファインダー
二つの神経をもつくじらを助ける話
・ジャンヌの弓
冒頭が死ぬほど読みづらい。
2人の声が聞こえる女性。潜入捜査に向かわされる男性。復讐。ハッピーエンド?
Posted by ブクログ
ビブリアから。
表題作に関して、今時の作品だと本1冊とか映画1冊で描かれそうな内容ですが、無駄を省いて短編にギュッと濃縮されていると思った。
未来から来たという美少女への憧れ、別れの悲しさ、秘密に気づいたときの興奮した様子、奥さんの変化、ひとつひとつが心に響く。
有名だという、一昨日は兎、昨日は鹿、今日はあなたはそんなにピンとこなかった汗
Posted by ブクログ
恩田陸『ライオンハート』の後書き解説を読んで。
ビブリア古書堂でも出てきたが。
13の短編集。
編者あとがき(伊藤典夫氏)によると長編はイマイチらしい。。
SFものは情景が想像できないと辛いが、設定が個性的で面白い。
『たんぽぽ娘』はあらすじを知っていたせいか
『河を下る旅』『神風』あがりが心に残った。
文章のうまさ、というより設定の面白さ というイメージ。