【感想・ネタバレ】黄昏のベルリンのレビュー

あらすじ

1988年「週刊文春傑作ミステリーベスト10」第1位!

ナチの収容所で生れた日猶混血児がたどった運命とは? 流麗な筆致で東西ベルリンに集まるスパイ群像を描いた幻の傑作がいま甦る

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Posted by ブクログ

ネタバレ

注!思いっきり内容に触れています



途中までは、これは今まで読んだ連城三紀彦の中で一番! 間違いなく★5つ!と思っていたんだけどなー。
なぜか後半、真相が明らかになってきた辺りから、急にイマイチっぽくなっていく。
特に、最後でのブルーノと青木の関わりの展開が、丸っきり見えてしまうのはなー。
よって、★は4つ(他の連城三紀彦の本との兼ね合いがなかったら、もしかしたら3つにしたかもw)

後半辺りからイマイチになってしまうのには、その辺りから話のスケールがなぜか小さくなってしまうように感じるところにもあると思う。
導入部のリオデジャネイロから、ニューヨーク、東京、東西のベルリン、パリ、そして、また東西のベルリンと舞台は広がっていくのだが、青木が東西のベルリンに行ったの辺りから、なぜかその空気感が青木とエルザが最初に逢った東京に戻ってしまうのだ。
ま、話の主題は、あくまで青木とエルザの悲恋で。青木のルーツを巡る国際的な謀略ではないんだと言ってしまうならそれまでなんだろうけど。
変な話、最初のベルリンとパリ、リヨンは確かにその場所の空気感を感じるのに。最後のベルリンだけ、それが妙に希薄なんだよなぁー。

希薄といえば、マルタ・リビーの存在も、妙に希薄な感じ。悪役キャラとして、もっとストーリーに食い込んできてもいいのになーという感じがする。
せっかく、青木がパリに来た時に刑事が絡んでくるのだから。彼辺りを使って、(ここは読者サービスでw)華々しく最後を遂げさせてもよかったのでは?(爆)
…と思うのだが、それは著者の作風ではないのだろう。
作風といえば、これは「わずか一しずくの血」の感想でも書いたのだが。これは特に、今風にパート分けして書き分けて最後にガッチャンコしたら、すごく“映える”話になったんじゃないかなーと思う。
ていうか、実は著者、これはそれっぽく書いているのだ。
ただ、その場面転換が同じ行の中で“――”が入るだけで行われるから、とにかく読みにくいのなんの!
パートが変わる“――”をうっかり読み飛ばして、いつの間にか話が全然わからなくなっているということが何度あったことかw

著者の作風ではないといえば、著者がこの手の国際謀略小説を書くというのは面白いし。
また、よくここまで書いたなーとも思うのだが、いかんせん、やっぱり著者の本籍地ではないんだろうなぁーという気はする。
というのも、敵側(敵側というのも変だけどw)にあまり冷徹さを感じないのと、あと妙に陳腐(中二病っぽい?w)なんだよね。
ぶっちゃけネタバレしちゃえば、要は第三帝国の復活のために、ヒトラーの息子をその旗印にしようと画策する連中なわけだ。
なら、とっととかっさらって。薬でも拷問でもやって、廃人同様にしちゃってでも、とにかく彼が生きていて、人前に姿を見せられればいいわけだ。
なのに、若い女性を使って(ま、それにはもう一つ理由があったわけだけど)、彼を誑し込んで、ヨーロッパに連れてきて。自分がヒトラーの息子だと納得させた上でその役割を強いるなんてまどろっこしいこと、かの総統ならやらないだろー!って話だ。
ま、ただ、それはヒトラーは、あの混乱した時代においても選挙で政権を握ったというのに。
冷戦時代とはいえ、一応は平和が保たれていたあの時代に、ヒトラーの息子を旗印にすれば第三帝国が復活できるなんて甘っちょろいことを考えているその組織自体が中二病の集まりなので、しょうがないといえばしょうがないんだろうけどさw
ていうか、ヒトラーという人は、東洋人の女性には魅力も何も感じないどころか、エッチするなんてことは(ヒトラーからすると不潔で)耐えられない、そういう人だったんじゃない?
ヒトラーというのは、彼独特の美意識の外にあるものは絶対認めない。そういう人だと思うのだ。
だからこそ、その美の実現のために突っ走っちゃった挙句、ああいうところにまでいっちゃったわけだ。
この本は1988年の刊行となっているが、そういう意味では、ドイツ人と日本人は世界相手に一緒に戦った仲であり、戦後に日本人がドイツ人が会うと「今度はイタリア抜きでやろうな」と握手を求めてくる、あの話が生きていた頃だからこそ生まれた設定なのかなーと思った(今になってみると、だがw)。

と、★4つのわりに批判的なことばかり書いたが、ストーリー自体は悪くない。
“――”でつなぐ、あのやたら読みにくい場面転換も、最後の最後、青木とエルザが逢うシーンでは効果的に使われている。
国際的な謀略が絡む話とはいえ、そこにはいかにも今風なアクションやミステリーはない。あるのは、著者特有のじとっと暗い男女の愛の話だけ。
そう思って読んでしまえば、充分面白い小説だと思う。
春江一也の「プラハの春」や、佐々木譲の「ワシントン封印工作」。あとは池上司の「真珠湾・十二月八日の終戦」辺りが好きな人なら、たぶん面白く読めるんじゃないだろうか。

しかし、連城三紀彦というのは、不思議な小説を書く人だ。
読んだ後、しみじみと感慨を抱いてしまう「戻り側心中」よりも、こういう、どこかイマイチな小説の方が惹きつけられるのだからw
「わずかひとしずくの血」の感想でも書いたけど、連城三紀彦という人は、「読者が期待している展開の話なんか、死んでも書くか!」をポリシーに小説を書いていたような気がしてしょうがない。
それは、定番な展開を求める読者を秘かに馬鹿にしていたということでもある反面、プロの作家たるもの、常に読者の期待の上を書かなきゃ駄目だみたいな、捻じくれ曲がった意地だったんじゃないだろうか。
この「黄昏のベルリン」や、前に読んだ「わずかひとしずくの血」を読む限り、その捻じくれ曲がった意地は必ずしも成功しているとは言えないような気がするのだが。
でも、その心意気は買う!w

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2020年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

冒険小説、国際謀略小説の名作との誉が高いがいかがだろうか。

流石に30年以上前の作品なので、ベルリンの壁も健在で古さは拭えないが、昨今の世界的な右傾化を見ていると全くリアリティがないわけではない。

ロシアのウクライナ侵攻でも、ロシアがウクライナをネオナチ呼ばわりしている事(とんでもない錯誤と言うか言いがかりだと思うが)をとっても、ヨーロッパの人々にとっては今もリアリティがあるのだろう。

典型的な巻き込まれ方のストーリーで話は進むが、お話そのものは派手なアクションがあるわけでもなく淡々と進んでいく。大風呂敷を広げた割にはエンディングは尻すぼみの感がある。

大風呂敷を広げたついでに行くとこまで行った方が面白い物語になったかもしれない。

やはりこの手のお話は外国の作家さんの方が一日の長がある気がする。

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2022年03月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1988年の作品、「このミス」第一回3位です。

この作家さんは最近『戻り川心中』という短編集を読み、その完成度の高さに感服しました。さらに前に直木賞受賞の『恋文』(どちらかというと恋愛モノ)を読んでます。

今作は現代(20年以上前ですが)の東京~パリ~ベルリンと舞台を移し物語が進みます。旧ナチ残党が絡む国際謀略サスペンスと一言で言えないこともないでしょう。

主人公は出生の謎を持っていて、自分の母親を探す旅がついには出生の謎に辿りつく…というのが大筋です、しかしストーリー自体は荒唐無稽というか、「なんじゃそりゃ?」と、突っ込みたくなる出来栄えでした、個人的にですけど…

それでもそれなりに楽しめたのは、男女の感情の機微についての描写、背景、町並み、部屋の中等々、色彩を読者に感じさせる描写、この二つが非常に優れていて読者を魅了するのだと思われます。(解説に書いてある通りに納得です)

既読のモノもそうですが、世界は男と女でできている!的な恋愛感情の交錯がストーリーに絡んできます、エロい描写はないのですが行間にそれを感じさせる書き方が個人的に好むところですし、その風景に色彩が鮮やかに入り込んできます。小説は言うまでもなく文字を読んで、読者が脳内でその世界を構築していくわけですが、その世界に色をつけていく作業がこうもたやすく可能せしむる、のはやはり作家の力量なのでしょう。

旧ナチ残党絡みの小説といえばフレデリック・フォーサイスの『オデッサ・ファイル』が世界的に有名でかなり昔に読みました。主人公が真相に近づくプロセスのドキドキ感、結末の反転と読みごたえ充分でした。

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2012年06月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「―」だけで万華鏡のように場面が切り替わり幻惑させられる。
東ドイツ、西ドイツ、日本、パリ、現在、過去。
ついうっかりするとめまいがしそうになる。
その裏に潜む国際的な謀略。さて、青木は無事に真実までたどり着けるのか。
エルザと桂子に二分される世界のどちらに所属するべきか、
2人の女性と国とを分かつベルリンの壁の国境線で青木は惑う。

ハードなサスペンス?小説。

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2011年03月19日

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