あらすじ
ここが昔どんなんやったか、知りたいねん――。28歳の歌ちゃんは、勤めていた会社が倒産し、カフェでバイトをしている。初めて参加したのに最低最悪だった合コンの帰り道、年下の良太郎と出くわした。二人は時々会って、大阪の古い写真を一緒に見たりするようになり――。過ぎ去った時間やささやかな日常を包みこみ、姿を変えていく大阪の街。今を生きる若者の日々を描く、温かな物語。
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Posted by ブクログ
喫茶店でアルバイトをしている「私」の残暑の日常。と要約。
友達や客や知り合いや、情報やものが行き来するという点で、まずは喫茶店を舞台にしたことが巧みだ。
次に筋は二本。
1、男性関係。合コン。似た趣味を持つ良太郎。出張にかこつけて会いに来た既婚の男。の間をふらふら。
2、いまいるこの街の過去を想起させる、古写真、お客さんの話、古いフィルムやテレビの映像。
昔の映像が映っている、とメールで教えてもらい、離れた場所で見ながらメールで短くやりとりする場面があるが、
ここは時間も空間も離れているのにつながっているという、何でもないのに何だかすごい箇所。
突然「こういう映像を見てると、どこぞで同じ時間を父母が行きとるんや、とか思う。自分の死後を見ているかのような気分にもなる」という文面が来たりして。
客が見せてくれた社史からぽろっと落ちた白黒写真の薔薇が頭に残っていて、いま薔薇を目の前にして、同じ色だと感じる、
というラストシーンは、マジでキマってる。クールな幕引きだ。
「この街の昔は」を変換して「その街の今は」と、ふわっとした印象にするのは、柴崎友香のやはり巧みさ。