【感想・ネタバレ】アイの物語のレビュー

あらすじ

数百年後の未来、機械に支配された地上で出会ったひとりの青年と美しきアンドロイド。機械を憎む青年に、アンドロイドは、かつてヒトが書いた物語を読んで聞かせるのだった――機械とヒトの千夜一夜物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

【人間はみんな痴呆症だ】

原文ママではないが、まあ上記の一文を目にした瞬間に星5評価が確定

久々に痛烈なキラーワードに出会えた
「この一言のために作品全体を執筆したのでは?」

そう思いたくなるほど個人的には目の覚めた痛烈な一文

映画も漫画も人間関係も職場での出来事も何でもかんでも、何もかも寸分たがわず覚えている人なんていない
無意識か自意識か、何か引っかかった断片的なワンシーンだけが後から頭の中のスクリーンに投射される

だから、個人的に突き刺さるワンワードを持つ作品は、それだけで自分の中で高い価値があるはずだ

AIという人ならざる存在から通した人の不完全さ、人の見たいように見てしまう生まれながらの自己防衛本能

これらを巧みに、7つの物語を通して説いてきたわけだが、

【人間はみんな痴呆症だ】

スカッとする善き一文
多分これは、生涯忘れないキラーワード

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2023年12月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 いやー,久しぶりに続きを読みたくなる小説を読んだ。作者の山本弘氏があのトンデモ学会の初代会長だとは知らなかった。あのトンデモ系統の本なら,ずいぶん読んだけど…。
 本書は,近未来,AIが人間にとって変わっている地球の社会を描いたものなのだが,それに至るまでの話(それは,小説内小説となっているのだ)が面白かった。〈以前人間が書いたという設定の6つの話〉と〈主人公のAIアイビスの生い立ちの話〉の計7話でできている。
 現実なのか小説なのか,フィクションなのかノンフィクションなのかが,そんなに大切なのか…という呼びかけが随所にあって,それがまた説得力を持って迫ってくる。

「分かってる。ヒトは『真実の物語』というやつに感動するものだから」アイビスは僕の考えを引き取った。「それが真実じゃないと知ると,感動が色褪せるように感じる。でも,それはフィクションという物の価値を否定することにならない? 現実にあったかどうかを,物語の評価判断にするのはおかしいわ。現実の物語には,三流のフィクションより出来の悪いものは山ほどある。それらは現実だというだけの理由で,フィクションよりも優れているの?」(p.73)

 だいたい,人間が支配していた世界より,AIが支配している今の世界の方が,「ヒトの夢を叶えている」という点では,完全に上をいっているのだから。
 アイビスはいう…。

 私たちにとって,差異は差異でしかなく,それ以上のものではない。…中略…一部のヒトは,AIにはヒトの感情が理解できないと批判する。それは事実である。たとえば私たちには「蔑む」という感情は理解できない。スペックやボディ・カラーや出身地の違いがなぜ憎悪や嫌悪を生むのか,論理的にも感覚的にも納得できない。ヒトが犬やネコや熱帯魚に愛情を注ぐ姿を目にしているのだからなおさらだ。ヒトよりも知能が低く,言葉を喋らず,ヒトとまったく異なる姿をした生き物を愛せるのに,なぜヒト同士で愛し合えないのか? (p.499)

 わたしは「まったくそのとおりでございます」としか応えられない。アイビスというAIの言葉は,ヒトの持つ矛盾を容赦なくついてくる。そして,ヒト同士が争わない世界は,AIが支配してくれる世界なのではないかと思えてくる。ヒトは,自分たちだけではみんな仲良く生きていけないように「感情」を持っているのだろうか。
 一部のヒトが,AIを壊そう,滅ぼそうとしていること(バチャクル,反TAIテロ)に対して,アイビス曰く。

「私たちはバチャクルや反TAIテロを容認しているわけではありません。そうした悪しき問題の根絶を強く望みます。しかし,それは暴力や恐怖によって成し遂げられてはなりません。暴力に暴力で,恐怖に恐怖で対抗するのは,決して正しいことではありません。」(p.534)

 そんなことAIに言われるまでもなく分かっているよ。分かっているのに,このヒトが支配している地球からはなくならない。そう,ヒトはアイビスほどにはわかっていなんだよね。
 本書の最後の次の一言が,秀逸です。

わたしたちはヒトを真に理解できない。ヒトも私たちを理解できない。それがそんなに大きな問題だろうか?理解できないものは避けるのではなく,ただ許容すればいいだけのこと。それだけで世界から争いは消える。/それがiだ。(p.544)

 アイの物語のアイとは「アイビス」であり「i(複素数,虚数)」であり,「愛」なのだろう。ホント,壮大な物語だ。

 スマホやパソコンでのゲームなど全くやったことのないわたしでさえ面白く読めたのだから,バーチャルな世界に興味がある人は,もっともっとのめり込んで楽しめると思う。
 ほんと,オススメの本。
 バーチャルな世界のほうがまともかも知れない…と思ってしまう。
 「死んでもなんども生き返る世界」を体験しているから命を粗末にするようになるなんてウソだ。ヒトは,バーチャルな世界がないときから,一つしかない命を粗末にしてきたのだから。
 今こそ,バーチャルな世界からの警告をしっかり受けとめよう。

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2020年05月05日

Posted by ブクログ

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人工知能による調和のとれた『ハーモニー』(著.伊藤計劃)と世界規模の少子化におけるシンギュラリティ。
人工知能は憎しみも愛も無いから調和された世界を作り出す。
これはユートピアなのか、人類のポストアポカリプスか。

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2019年12月11日

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この本のここがお気に入り

「僕は彼らにこっそりと新しい物語を伝える。ヒトを不幸にするだけの自虐的な歴史ではない、ヒトが誇りを持てる物語を。たとえマシンには勝てなくても、ヒトには誇るべき点があるということを。それは夢見ること。理想を追うこと。物語ること。」

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2024年06月08日

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 人類が衰退し、マシンが闊歩する時代。食料を盗み、捕らえられた僕はアイビスと名乗るアンドロイドによって人工知能やロボットを題材としたいくつかの物語を聞かされます。なぜマシンが地球を支配するようになったのか?
 私たちの暮らすこの社会でも、AIの普及や、ロボットの活躍を目にする機会が増えています。便利になること私たちの生活を豊かにするかもしれません。ですがその分人間が本来持つ能力を衰退させてしまうことにも繋がるのではないでしょうか。

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2024年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

人間とAI(ロボット)の物語。これからの未来の世界で本当に起こるのではないか思える内容もあり、面白かった。改めて感じたが、人間は脆い。体力も知性もAIに勝てないかもしれないが、人間には想像し、物語り、夢を持つことが出来る。自分にも出来ることがあるのだと希望が持てた。特に詩音の話が印象に残っている。自分だけで生きるのではなく、共存して生きていければと思った。また、自分の価値観にハマることの怖さを改めて感じた。専門用語に対して、自分の理解が追いつかず、読むのに時間がかかったが、内容は素晴らしかった。

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2025年09月05日

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特に「詩音が来た日」が印象に残っています。

アイビスのようなAIを夢見て、夢見た物語が現実になる日が来るのでしょうか。

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2022年06月02日

Posted by ブクログ

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SFは苦手意識があったけど、この本のお話はどれも読みやすいし、いい感じでまとまってた。
仮想現実の世界の話や宇宙の果ての話など、いろんな世界観の話があって飽きずに読める。
「詩音が来た日」は長いけど、最後は感動できた。こんな世の中になったらいいなって思える。

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2021年06月23日

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