あらすじ
市場でのポジショニングを重視する欧米型の戦略論は果たして日本企業にも有効なのか。外資系コンサルティング・ファームに勤める著者は、本業を重視する日本企業ならではの戦略があるはずだと説く。それは事業から学ぶ仕組みを作ること。トヨタ、ユニクロ、セブンイレブンなど豊富な事例と共に、学習型戦略論を提起する。
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Posted by ブクログ
しかし実際には、既存事業で成功しながら、自ら次々にイノベーションを仕掛けていく企業が少なからずいます。たとえば、任天堂、セブン-イレブン・ジャパン、ユニク口といった企業が代表例です。それぞれのケースの成功の本質はこの後すぐに検証しますが、これらの日本企業には重要な共通点があります。
それは、いずれの企業も、顧客が本質的に求めている価値を常に追い求め、コスト構造を徹底的に絞り込み続けるという点です。価値(スマート)軸とコスト(リーン)軸を同時に追求することから、「スマート・リーン」型と呼ぶべき事業モデルです(図2)。
このモデルは、価値とコストの積である価値双曲線を一挙に上方に押し上げる点において、いったんコストに基軸をおき、時間をかけて価値軸を上げていくクリステンセン・モデルよりも、はるかに破壊的な効果があるのです。
図の真ん中の「協創」は、自社の資産と他社の資産を組み合わせて新しい価値を生み出していく領域です。異質な知の新結合によって「スコープ(範囲)の経済」を追求することが、拡業型のイノベーションを起こすためのカギとなります。そのためには、異質なプレーヤーの多様な有形・無形資産が必要となるのです。
半導体産業では、自動車制御用のマイコンを開発するために、半導体メーカーが中心となって、自動車メーカーに加えて、家電メーカー、部品メーカー、組み込みソフト会社、半導体設備メーカーなど、多様なプレーヤーと協業を行っています。最近はクラウド・コンピューティングやスマート・グリッドなど、自動車周辺の情報のやりとりが必須となる中で、協業のパートナーも、通サービス事業者、ITサービス事業者、電気サービス事業者など、多様なインフラ事業者にまで協創の生態系は広がっています。
リクルートの場合、むしろ①の人材の獲得・育成や、②の権限・責任の与え方に、独特の工夫が凝らされています。
リクルートでは、このような強固なバック・ミドルの基盤の上に、フロント・ミドル
とコア・ミドルの仕組みが組み込まれているのです。
フロント・ミドルにおけるリクルートの最大の特徴は、このようにしてすり込まれた同社のDNAを色濃く持った社員が、顧客接点を持っている点です。「わからないことは客に聞く」がリクルートのマーケティング上のDNAです。特に未顧客・非顧客の不平・不満を深く理解し、これら将来の顧客に伝わりやすい媒体に落とし込んでいくセンスは卓越しています。
リクルートでは、バックやフロントがイノベーションの「現場」であるとすれば、コア・ミドルは常に黒子的な存在です。コアがつかさどっている機能は主に二つあります。
一つは、「ニューリング」と呼ばれるビジネスプランコンテストの事務局機能です。
ここでは、役員と新規事業開発室が中心となって、現場から上げられた事業プランと社内資産との整合性を検証します。そして、新規事業と既存事業の間での資産の「ねじれ」がある場合には、資産の流動化を働きかけます。
もう一つは、事業を実践する際の機能間の「つなぎ」を可視化し、メビウス運動がきちんと回っていることを定期的にチェックすること。「ナビゲーター」と呼ばれる支援機能です。フロントやバックが極めてパワーを持った組織であるだけに、コアは、このような調整・支援機能を果たすことで、全体のバランスを保つ働きに徹しているのです。
oー異質性の取り込み
リクルートのように、動的DNAが脈動しているような企業は残念ながら多くありません。一般の企業は、いったん学習したメビウス運動を何回も繰り返してしまいがちです。このような同質なサイクルから抜け出して、新たなメビウス運動を始動させるためには、社内外の異質なものをあえて取り込む仕掛けづくりが有効です。
リクルートはこれを人材レベルで行っているため、DNAそのものに異質な血が入り込んできます。しかし、一般の会社が少数の異質な人材を中途採用しても、DNAそのものが変質するほどのインパクトは期待できません。むしろ、事業を営む中で、異質な取り組みを仕掛けたほうが、効果的です。そのためには、大きく三つの手法が考えられます。
一つ目は、社内辺境型。社内に、これまでとはまったく異なったやり方を実験的に試みる組織を立ち上げます。自社に閉じたまま、突然変異を起こすことは極めて難しいものですが、できるだけ本体のDNAの影響を受けない「辺境」で、あえてこれまでの常識を打ち破る取り組みを仕掛けてみるのです。
三つ目は、第2章でもご紹介した「協創」です。社内辺境型もM&Aも、自社の中で学握するモデルであるのに対して、協創は他社と異質な知恵を出し合うことによって新しい価値を創造していくモデルです。そのためには双方に頼関係があり、お互いが持っている資産の補完性が高く、かつ、目指す方向を共有できることが大前提となります。そのうえで、パートナー間のウィン-ウィン関係を設計し、実現していくためには、極めて高度な関係構築能力が要求されます。
トヨタに代表されるように、日本企業は生態系の中で協創することを従来より得意としてきました。第2章でご紹介したユニクロと東レのバーチャルカンパニーは、最近の成功例です。同心円上の運動から大きく抜け出すためには、クラウドの「こちら側」の任天堂と「あちら側」の「はてな」が手を組んでいるように、より異質なプレーヤーとの協創を通じて、「脱学習」のサイクルを回すことが求められます。そのような脱学習をうまく仕掛けることができれば、ローリスクでハイリターンが期待できます。
Posted by ブクログ
改めて強い商品、競争力とは何かについて考えさせられる。2時間の移動の中で一気に読み上げることができた。自社にしかできない価値提案をし続けるために、そのような仕組みをまわすか(メビウスと表現)、を提言する。タイトルと内容のリンクは理解し切れていない。筆者の提唱するスパイラルアップの形ができていることを“学習”と表現しているのか?
Posted by ブクログ
フレームがちょっと複雑で(私にとっては)
フレームをきちんと理解するのには、最後まで読みきる必要がありました。
「脱学習」というコンセプトには、大きな気づきがあり、
今後の仕事に活かしたいと。。。
再読したい本です。
Posted by ブクログ
2024/08/17「学習優位の経営」名和高志◎2010年
マイケル・ポーターの競争戦略論を超えて、ダイナミックな経営戦略論を目指す問題意識は判るが、成功はしていない。経営トップの構想力と担う社員のトライ&エラーの学習プロセス。理念には判るが現実にどう進めていくか?
発刊後の15年を見ると、Digitalの活用が不可欠と思う。
1.日本企業の3弱点
①Marketing「新しい体験価値」を創造する
②事業モデル構築力 自前主義から脱皮
③経営レベルの決断力 トップ経営者の資質・訓練・選抜
2.Innovationのジレンマ
成功体験を持った強いDNA 免疫力高く、異質・変化を拒絶
Innovationを起こし続けられるかは「経営の問題」
3.トップだけが長期の事業ポートフォリォを変える
欧米のようにM&Aはメイン戦略にし難い
日本企業は「本業+隣接新規事業」により事業拡張?
⇒とりわけ「新規事業部門」が重要 エース人材・長期コミット
(任天堂山内溥社長)
「任天堂が一番強みを発揮できる部分に絞る」=上手に捨てていく
積極的に他社と提携 SONY Microsoftに対抗できる