あらすじ
かつて一刀流道場四天王の一人と謳われた瓜生新兵衛が帰郷。おりしも扇野藩では藩主代替りを巡り側用人と家老の対立が先鋭化。新兵衛の帰郷は藩内の秘密を白日のもとに晒そうとしていた――傑作長編時代小説!
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Posted by ブクログ
いやもう、好きですこの世界観、温度感。
最初の数行で感じる人と人とのいたわりの心。
残していく人、残される人、それをみている周囲の人々。藩や家のしがらみの中でのそれぞれの生き方が沁みる。
ラストシーンがまたいい、そこで立ち止まらない潔さが。葉室麟さんの作品の好きなところは読後感のよさ。
Posted by ブクログ
推理サスペンスのようでとても読みやすく、政治、恋愛、友情、義理人情と色んな要素が詰め込まれていました。読み進めるにつれて過去と現在が繋がりました。
Posted by ブクログ
葉室麟、本当に惜しい作家を亡くしました。
「蜩ノ記」「川あかり」「山月庵茶日記」「草雲雀」などの傑作や「潮騒はるか」「鬼神の如く」「銀漢の賦」「橘花抄」「冬姫」などの秀作に連なり、私の傑作葉室コレクションがまたひとつ増えました。
この小説を読み進めながら、作者がどうやって登場人物たちのもつれた糸をほぐし、破綻なく物語に収束をつけるのか、試しに想像してみるも私の頭では不可能でした。
それを難なくやってしまう筆者の構想力と文章力に脱帽です。見方を変えれば、本書は上質謎解きミステリーとしても十分楽しめます。
これから読む人のために、謎解きの鍵となるヒントを。
“くもり日の影としなれる我なれば
目にこそ見えぬ身をばはなれず”
という残された和歌の解釈がポイントです。
では、葉室ワールドをじっくりご堪能ください。
Posted by ブクログ
中江有里解説 散り椿の意味するもの
目には見えない、手の届かない世界は確かにあるのだと思うだけで、生きる力が湧いてくる。散り椿はそんな小説だ
本書の登場人物は、誠実であろうとするゆえに生きづらさを抱え込む人が多い。誠実でありたい、と思っても世の中を渡るには、その誠実さが邪魔になることもある
Posted by ブクログ
(わしは新兵衛のこと羨んでいるのでだろうか)
きっとそうなんだろう。戻ってきた新兵衛には、貧しい生活を送ろうとも心のうちに豊かさを抱き続けた者の確かさが感じられる。
それに比べて自分はどういきてきたか。
切れ者と人に畏れられるようになりはしたが、親しく言葉をかけてくれる者はいない。ただ遠くから畏敬の視線を送ってくるだけだ。
皆それぞれに生きてきた澱を身にまとい、複雑なものを抱えた中年の男になってしまった。もはやむかしのように素直に心中を明かすことなどできないはしないだろう。
篠とはついに再び会うことができなかった。新兵衛とともにどのような思いで生きてきたのか篠から直に聞きたかった。
それももう叶わない。自分に残されているのは、藩内での政争に勝ち抜くことだけだ。
物思いにふける采女の表情は、しだいに権力を争う重役の顔になっていた。