あらすじ
記憶や人格などの情報をコンピュータに“ダウンロード”することが可能となった21世紀なかば、ソフトウェア化された意識、“コピー”になった富豪たちは、コンピュータが止まらないかぎり死なない存在として、世界を支配していた。その“コピー”たちに、たとえ宇宙が終わろうと永遠に存在しつづけられる方法があると提案する男が現われた……。
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Posted by ブクログ
どうやって人間をサイバー空間に送り込むか? という問題については、つまりこの順列都市の「スキャン」って方法で解決できちゃうのかも。身体構造をまるごと写しとって、仮想世界に用意した真っ白いインテリアの部屋にぶちこめばいい。魂というものがない限り、人間はそれで問題なく動くかも。
この小説で面白いのは、その「スキャン」の発想と、ダラムの展開する「塵理論」。なんだけど、その解釈が難しいのでこれが塵理論かな? と思うのを二つ書いておく。
塵理論その①
主人公の一人であるダラムは妻によって一度仮想世界を体験し、自身をコピーと思い込んだ。その結果、「ベッドで眠る自分」と「コピーとしての自分」という二つの自分を経験した。それはどちらも実在するダラムだった。ということは、ダラムにとって世界は二つあったことになる。ダラムは自分がパラレルワールドを体現したことを悟る。人間の意識を起点として世界が存在するのなら、時間は必ずしも連続していなくていいし、不連続な空間は人間の認識によって溶接出来る。つまり、塵理論は「永遠は無限に散らばった極小の空間の接続で実現できる」ということ。
塵理論その②
もうひとつは、塵理論は「プログラムのなかのプログラム」そのものという話。現実世界におけるサーバーのパワー不足が問題なら、仮想空間のサーバーを使えばいいじゃない。情報という実態のない「塵」から無限の空間が生まれる。だから塵理論。鈴木光司の「リング」三部作でも同じような話があった。
個人的にはその①かなあと思ってるけど、よくわかっていない。塵の存在であるプログラムの中のプログラム(TVC宇宙)に永遠の時間が分割されて存在し人間の意識によって溶接される、それ全体を指してというのが今の認識に一番近いかも。
また、コンピューター上で世界で起こりうるすべてのパラレルを無限に計算し、それを観測者の認識によってこよりのようにより合わせ永遠に実在化し続けるのが塵理論という考え方もあるけど、個人的にはしっくりこない。
下巻に入り、シャワー室でダラムが自殺してから、とたんにパワーダウンを感じる。TVC宇宙の人間のファッションとかどうでもいいし。ラストのオートヴァース世界がTVC宇宙に影響するというのは面白いなあと思ったけど、それってアリか? オートヴァースとTVC宇宙の基盤になるプログラムは違うんじゃないの? とも思う。
Posted by ブクログ
タイトルからは全く内容を想像することが出来ないSF。上下巻に分かれており、上巻だけでは全く話をつかむことが出来ないし、どこに着地するのかを想像することもできない・・・・。
あらすじはこんな感じ。
近未来、人類は神経系を全てスキャンすることで、肉体がなくなった後もコンピューター上に「データ」として生き続けることが出来るようになった。コンピューター上の人格は現実とコミュニケーションをとることもできるし、企業に干渉することもできる。ただし、コンピューターを動かし続けるには資産が必要であり、それを手もっていないものはゆっくりとしか時間を過ごすことが出来ずにいた。
主人公の女性プログラマーはそのような巨大リソースの中で趣味のオートマトン遊びを繰り返している時に信じられないような発見をし、そしてそれをきっかけに「順列都市」の計画に巻き込まれていくのだった・・・。
こうかくと一本道のような話に聞こえるが、実際には複数の主人公の話が複雑に絡んでいる群像劇で、上巻は人間関係を把握するだけで終わってしまうようなところがある。上巻でも後半に入ると少しずつ話が動き出しておもしろくなるが、その前に力尽きると全く何の話かわからないまま。★4つは上下巻あわせての評価。