あらすじ
ミステリ作家の「私」が住む“もうひとつの京都”。その裏側に潜む秘密めいたものたち。古い病室の壁に、長びく雨の日に、送り火の夜に……魅惑的な数々の怪異が日常を侵蝕し、見慣れた風景を一変させる。
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Posted by ブクログ
日常の中に取り込まれている違和感。主人公以外の人にはそれが日常であり、主人公だけがそれを違和感と感じていること。現実味を帯びているがどこか非現実味を感じる不気味さ。
絢辻先生の唯一無二の世界観にどっぷりはまった作品です。
Posted by ブクログ
ミステリ的な要素も顔を出すが、ジャンルとしてはホラー。
よくわからないままのもの。正体や真実が明かされず、読者の想像に任せるもの(そしてこの部分を各々読者なりの怖い世界に浸れるポイントとしているのだろう)。
しばらく民俗学の本を読んでいたのもあるが、そのおかげでか、そういった点に特に気を惹かれたように思う。
表記しようのない聞いたこともない悪霊の名前、遺跡、呪い、雨が降り続いたときに生贄を思わせる住人の言動。→悪霊は渡来人?遺跡も関係がある?とか考えてしまった。
作中に「この世に不思議なものなどない」と京極夏彦の作を引用していたのも面白かった。
不思議なこと、理不尽なことにも必ず理由がある。でもそれがわからない、理由がないものが本当に怖い。
「開けるな」の「おかげでちゃんと閉めることができました。これでもう安心です」はとても印象に残っている。
京都が舞台なのだが、実際にあるものや町、行事がベースにあるらしいこともリアリティを感じていいなと思った。
そして、妻、深泥ケ丘病院の人々が、こわい。
Posted by ブクログ
これは深く考えないで読んでいいはなしなのかな…
ミステリっぽいのもあるけど、ふつうに不思議なはなしとして楽しんでいいものなんだろう。
「深泥丘魔術団」の最後がとても気になる。
Posted by ブクログ
学生時代、解説を書かれている森見登美彦氏同様、深夜の深泥池を冷やかし半分で訪れた経験を持つ身としては、実際の京都の街を捻じ曲げたと思われる架空の世界に登場する地名や位置関係の描写にいちいち反応してしまい、ある意味下駄を履いていると言うべきか。
そればかりか、京極夏彦氏は実名で出てくるし、法月綸太郎氏に至ってはパロディかつディスりの対象になっている?
作品はまるで深泥池の如く、どこまでいってもぬるぬると捉えどころのない沼のような世界が広がり、決してその滴を拭いきることはできず、いつまで経ってもぽたりぽたりと漏れ続けてすっきりせぬまま。
著者の作としては珍しく、このシリーズは論理的に説明がなされてカタルシスが得られるわけではないので、ちゃんと閉じる形の物語を求める向きには物足りるはずなく、いわば雰囲気ものとして味わうより他ないが、甚だ僭越な物言いながら、さすがにその類としては良く出来ていると感じる。
森見氏の解説がまた良かった。
「深泥丘世界では『元気があればいい』というものではないのだ。これこそ『一病息災』である。」
Posted by ブクログ
Anotherのような新鮮さは感じなかった。
面白いのだが、「続編を探すほどか?」という、いま一歩な感じがある。
裏表紙の「現実が崩れていくような・・」というような恐怖も感じず、その点はAnotherの上巻から下巻に入っていくあたりの違和感や気色悪さに遠く及ばない。
最も良い作品を最初に引いてしまったのだろうか。
Posted by ブクログ
不思議なことを受け入れながら人々が生きてきた深泥丘。この土地には曰くが沢山ありそうなのだが、いかんせん、主人公がどうも頼りないので読者にはほんの少ししか情報が入ってこない。常に思わせぶりで何も教えてくれなくて、非常にもどかしい!
これまで起こったことは主人公の妄想なのではないかとすら思えてくる。
『長びく雨』であんなシーンを見たのに翌日にはカラッと爽快な気分になっている主人公が一番怖い。
『開けるな』は奇妙な符合が不気味。夢の中で鍵を開けてしまうのが怖いなと、「開ける」ほうにばかり気を取られていたら、扉を閉めるのが意外だった。今まで開いていたんだというゾワっとした怖さがあった。
『悪霊憑き』だけ急にミステリで伏線をバリバリ回収していくと思ったら、競作ミステリの企画で書いたものだとか。他の作品は意図的に曖昧なままにしてあるのだなと納得。