あらすじ
探偵を休業し、ミステリ専門店でバイト中の葉村晶は、古本引き取りの際に白骨死体を発見して負傷。入院した病院で同室の元女優の芦原吹雪から、二十年前に家出した娘の安否についての調査を依頼される。かつて娘の行方を捜した探偵は失踪していた――。有能だが不運な女探偵・葉村晶が文庫書き下ろしで帰ってきた!
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Posted by ブクログ
「人探しを頼まれる」という探偵ものミステリにありがちな導入からは、予想だにしない結末が待っていた!
今作だけで、葉村晶は何度も病院に入院したり、大怪我したり。40でこれはつらい。しかも、何度も頭打ってるし。
ここまでくると、葉村晶が今後穏やかに過ごせることを願うばかりです。読者としては葉村晶シリーズに続いてもらいたいものの、かわいそうすぎて。
でも、一番かわいそうだったのは、怪我した時よりも、気が合うと思っていた舞美と、晶が病室で言い争いをしたとき。
いつも心の中で毒づいたりツッコミ入れたりしてる晶が、舞美に感情的になって言い返して、そのあと泣いた時。不死身の葉村晶の哀しみを感じた。
事件は、二重、三重に仕掛けられていて。
母親が娘を殺したつもりになっていて、でも実は娘は死んでおらず、母のマネージャーが娘を逃して匿っていた…というところは、白雪姫を思い出させた。
マネージャーの妹が殺された事件についても、結局はっきりと解決しないまま…。もしかしたら、マネージャーが実の妹を?という疑問も生まれた。
最後の岩郷のおばあさんの涙には、もらい泣きしてしまった。
ノンストップで葉村晶と共に事件を追ってきた(つもりになってる)私にとって、岩郷のおばあさんの涙は、ふっと力と圧が抜ける瞬間だった。
タイトル「さよならの手口」は、警察官に別れを告げる方法はない、という、本の一節からきているようだ。
何か後ろ暗いことがある限り、警察官とは別れられない、ということだろう。
晶は舞美に対して、警察官と別れることはできないぞ!と忠告したあと、警察を使って脅かしてしまったことを後悔する。
晶は良い人だと思った。
舞美がどう受け取るかということも気がかりだったのかもしれないが、晶の中には彼女なりの筋があって、自らそれに反してしまうことを後悔したのではないかな、と私は思った。
Posted by ブクログ
読み出したら止まらなくて、一気に読み切ってしまいましたよ。
前作からそんなに時間が経っていたとは…内側も外側も。
相変わらず葉村さんは痛そうなことになってるし、周囲の人々も移り変わっていたりして…。
続編、出るといいなぁ!
Posted by ブクログ
葉村晶シリーズが好きで順番通りじゃないけど3冊目。
面白くて一気に読んじゃうんだけど、やっぱり後味が悪いというか悲しいというか…でも今回はもやもやする感じはあんまりなかった気がする。
今回は一段と不運に見舞われてた気がする。落ち着く暇がなくて、ずっとハラハラしながら気づいたら読み終わってた。次も早く読みたいな〜
他のミステリー作品も出てきたので、紹介されてた本もいつか読んでみたいと思った。
【追記】前作で長谷川探偵調査所に何があったのか気になってあとから前作を読んだけど、特に何もなくて、本当に前作を読んでなくても問題なかった。
Posted by ブクログ
読んだことあったのかなぁと思いながらいたけど、なかったやつ。登場人物が多く、混乱しそうと思いつつ、でも意外とそうでもなく。登場キャラがたってるからだろうかね。
さよならの手口というタイトルの回収は十分ではない気もするけど、ミステリーらしく人のつながりが重要で、どこかで誰かが裏切るのでは?と思いながら、実際裏切りがいくつか出てきて、あぁなるほどなーと思いつつ、それ以上にこの人がそっち側に心変わりかよ!みたいなことの方が、小さいながらもインパクトがある。
ボリュームの割に展開が早いのでどんどん読み進めてしまう。秋の夜長にちょうどいい。
Posted by ブクログ
刊行当時13年ぶりの葉村晶(その間短編は2本ほど発表されているらしいが)。
なんと四十歳の坂を越え、職業も長谷川探偵社が廃業したことにより、ミステリ専門古書店"MURDER BEAR BOOKSHOP"でアルバイトをしていた。
なんか探偵じゃない葉村を見るのって『プレゼント』の頃を思い出す。
13年ぶりかぁ。
リアルタイムで待っていたら待ちくたびれる、というか完全にそれまでの過程を忘れてしまうだろうから、ある程度出そろったところから月日を物ともせず、ずんずんと読んでいく今の読み方ができて幸運。
さて、今回は葉村が古書店で働いているということもあり、ほんのりビブリオ風味。
書店での倒述フェアではF・W・クロフツとか、骨フェアではレジナルド・ヒルとか語られるとそっちも気になってしまうのがミステリ好きの性。
事件の方は、とあるアパートの店子の遺品整理で大量の蔵書が見つかり、掘り出し物がないか探っていたところ、押し入れの床が抜け白骨死体の待つ床下へ頭から落下するという葉村の災難に始まる。
白骨死体の謎は元探偵葉村の推理が冴え渡り、事情聴取に来た刑事に口添えすることでスピード解決。
その能力を見初められ依頼されたのが、往年の大女優・芦原吹雪の失踪した娘の捜索。
それと並行して巻き込まれる"MURDER BEAR BOOKSHOP"の常連客・倉嶋舞美とのどたばた。
切れ味良い物言いや、物事の見極めの鋭さは健在であるが、前作までと比べてとにかく災難に見舞われるし、ところどころで冷静さを失い、感情を抑え切れない場面も。
今回特に印象的だったのは人と人が懇意になることの脆さ。
前々から滲んではいた葉村の優しさにつけ込んでかき回すサイコパスしかり、そのサイコパスにすっかり洗脳されてしまう”スタインベック荘”の大家しかり、ちょっとした手抜かりから微妙な関係となってしまった東都総合リサーチの桜井しかり。
それを終盤、「慢心」という言葉や「わたしは何を間違えたのだろう」と自省する葉村の心に共振し、とても胸が痛んだ。
それとは別に『依頼人は死んだ』で出てきた濃紺の悪魔や、前作ですったもんだあった相場みのりの行く末など、未来への振りかと感じていたところが全く回収されず、意外と放置系なのか!?(まぁ、別に支障ないけど)という点も多々。
全体的にイヤミス感溢れていたけれど、最後のオチだけはとっても爽やか。
次は『静かな炎天』。
また短編になるようだ。
Posted by ブクログ
葉村晶、13年ぶりの長編。 信じられない。ずっと読んでいる気持ちだったのに。短編とかだったのか… 杉田比呂美さんのイラストが大好きで、若竹作品が大好きで、葉村晶が大好きだけど、盛りだくさんすぎて、窒息しそうだった。 何回スマホが壊れて、何回死にかけるんだ。なのに生きてるし、自分から面倒に飛び込んでいく晶はタフ過ぎる。女優の娘を探すだけだったはずなのに。変な女にくっつかれたり、消えた探偵を気にかける羽目になったり、警察に目をつけられたり。絶対300万もらってても足りない。とにかく、ただただ面白い。
Posted by ブクログ
すごく面白かった。今までの葉村晶シリーズで1番の面白さ。
本のタイトルが、最終的に「あ、ここに掛かってるのね。そこをタイトルにしたのね」とクスッと笑えるのも良い。手口と書いてあるから、犯罪に関わることかと思いきや、そこかーい!って。笑
メインの話もすごく面白い。
Posted by ブクログ
葉村晶の乾いた言葉選びが本当に好き。
仕事柄ハードボイルドでも、日常で心地のよいものを好みで選んでいるところが、私にとって好感の持てるポイント。華美ではないがそういう穏やかな生活が、きちんと後ろに控えているところがいい。
でも今回初っ端から満身創痍で笑ってしまった。トラブルの方が葉村晶を離さないといった様子だ。
葉村晶の仕事ぶりを見て回るのは楽しい。最低でも、社交性があって身体が強くて口がうまくて勘が強くないと務まらない。
幾重にも折り重なった事件の苦い後味がこのシリーズらしいなと思う。
Posted by ブクログ
最初は軽いタッチというか独特な主人公だなと読み進めていたら、
途中からあれよあれよと話が大きくなっていきました。
前作を読んでいないのですが、
葉村探偵の思考や倉嶋舞美のうざさなど楽しく読めました。
Posted by ブクログ
本筋(ミステリー)以外の話で恐縮だが、主人公・葉村晶が非常に魅力的。
物語の始まりは廃屋でカビ臭い蔵書の取り出し、遺品整理。
晶が押入れの多量の蔵書を運び出そうとした瞬間、腐食した床を踏み抜き、下水まみれの床下に落下し、骸骨に頭をぷつけながら気絶し骨と肺をやられてしまう。
意識を取り戻すとそこは病院で、結局、同室の患者から調査依頼を受けるハメに。
満身創痍で始まり、周りの人や警察から雑多な扱いを受けたり疎んじられたりする。
踏んだり蹴ったり、そして厄介ごとが重なってくる毎日なのに、晶はめげない。
晶の魅力は、肉体、精神の強さというより、ひたすら愚直に、時々は間違いもしながら、前に進む力。それも孤独であるのに。
愚痴りながら、感情を時には爆発させながら、時にはギリギリで踏み止まりながら、というのも非常に共感を覚えて楽しい。
僕が、伏線や推理を理解、堪能するにはあと2回くらい読み返す必要があると感じる。
まーちゃんさんの本棚で「依頼人は死んだ」と本作を知り、今回は推理というか、晶の遭遇する事件や、心理を見ていくことで非常に堪能できました。
今後も本棚と感想、参考にさせていただきます。
ありがとうございました。
Posted by ブクログ
ミステリ専門店でバイト中の葉村晶。古本引取の際、白骨死体を発見し、負傷。入院した病院で同室の元女優・芦原吹雪から20年前に家出した娘の安否調査を依頼される。調査を開始するが、かつて娘の行方を探した探偵が失踪していた…。
『悪いうさぎ』から13年。葉村晶も40を超えて、長谷川探偵事務所も閉鎖、晶はシェアハウスに住んでいる。
だいぶ雰囲気が変わってるし『悪いうさぎ』のイメージが強すぎて、序盤はちょっと入り込めなかった。
徐々に黒い感じが出てきて楽しくなる。ただ色々メイン以外がまとめられた感じがした。