【感想・ネタバレ】教育の力のレビュー

あらすじ

「ゆとり」か「詰め込み」かなど、教育を巡る議論には様々な対立と齟齬が渦巻いています。こうした混乱を越え、どうすれば<よい>教育を作ることができるのか。<よい>教育のためにはどのような学校がいいのか? そのための教師の資質とは? 本書は、義務教育を中心に、どのような教育が本当に<よい>と言えるのか、それはどのようにすれば実現できるのかを原理的に解明し、その上で、その実現への筋道を具体的に示してゆきます。(講談社現代新書)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

◯序章
>教育の目的とは
★教育とは、すべての人々が自由に生きられるための教養=力能を育むもの。
(但し、自由とは互いのわがままを押し通すものでなく、自分が自由であるために、他者の自由も承認する「自由の相互承認」の上に成立する)
・教養=力能とはすなわち、学力と、自由承認の感度のことである。

>教育の正当性とは
・どのような教育政策がよいと言えるか?
…一部の層だけでなく、すべての人の自由を促進するときにのみ正当である。
・結果の平等のみを重視する絶対平等もまた誤り。
・平等か、競争・多様化か、は相反しない。多様性に対応できる平等、を提供するために教育は多様であるべき。

◯第1章 学力とは何か
・学力が、知識量、問題解決、学習意欲など、定義がバラバラ。
★現代における学力とは「学ぶ力」である。
・学ぶ力、は従来と違い測定しづらい→格差拡大に繋がるのでは(従来型学力は、評価指標等が示しやすい=一定以上の学力を確実に保障できる)

◯第2章 学びの個別化
・人間の知能は、言語的知能、論理・数学的知能、空間的知能、身体運動的知能、音楽的知能、対人的知能、内省的知能、博物的知能の8つに分けられる(ガードナー2002)
・人間は異なるのに、いつなにをどう学ぶかが固定化されているのは極めて非効率的→学びの個別化へ
…オンライン学習(カーンアカデミー等)
・個別化は長く検討されている(パーカースト1974のドルトンプラン、ウォッシュバーンのウィネトカプラン、木下竹次、サドベリーバレースクール)、愛知県東浦町の個別化・個性化教育
・しかし、個別化とともに協働化も重要→「反転授業」
★提言:個別化の基本
1)こどもが教師のサポートを得て、自ら学習計画を立案し実行すること
2)個別的なまなびに協同的なまなびを融合させること
3)教師はこどもの個別・協同のまなびを支援し導く役割を担うこと

◯第3章 まなびの協同化
・まなびあいによる学力保障の可能性
佐藤学「学びの共同体」
ポイント
1)グループの組織:男女混合の4人
2)グループ導入時期:ひとつは「個別学習の協同化」。もうひとつは「背伸びとジャンプのための協同化」。…個別学習の行き詰まりのときに。
3)いつ終えるか:学びが成立する限り進め、成立しなくなる直前で終える
4)教師の役割:参加できない生徒のケア、学び合いが起こりにくいグループのケア

西川純の「学び合い」:全員が課題を達成することを必達
3つの考え方(こどもと共有する)
1)学校は、多様な人と折り合いをつけて自己課題を達成し、有効性を実感し、多くの人が同僚だと学ぶことが場だ、という学校観
2)こどもたちは有能だ、というこども観
3)教師の役割は目標設定、評価、環境整備で、教授=学習はこどもに任せるべきだという教師観
プラス:本当の理解が重要(わかったふりはしない)

・個別化と協同化を融合させることが重要

◯第4章まなびのプロジェクト化(PBL)
・個別/協同と区別するなら「何を学ぶか」が決められていないもの。
・デューイ・スクール
・キルパトリック「プロジェクトメソッド」
・きのくに子どもの村学園
・新教育は教育の放棄を意味しない。まなびを保障するためにこそ新教育はある。

・よいまなびを考えるとき、それ以外を否定するのは無意味。目的・状況相関的方法選択の前提に基づき選択すべきわ

・オランダのイエナプラン教育(ペーター・ペーターセン) →PISAの順位は日本と同程度。それ以上に、格差が非常に小さい。

・活用力をはかるpisaと旧来型知識をはかるTIMSS(数学理科教育調査)の結果は全く異なる。


◯第5章 評価と受験
・評価は選抜と改善のためにある、
・改善にいかす視点なら学ぶ力評価は可能。→パフォーマンス評価
・伴い、受験も変わっていく
・大学は、質低下+世界標準+ジェネリックスキルを求められる。
・大学は、多様化=序列化ではなく、序列化の伴わない多様化へ変質すべき。


◯第2部
◯第6章:学校空間の再構築
・相互承認の感度、の内実は1)自分を承認できること、2)他者を承認できること、3)他者から承認を得ること。
・学級は過度な同質性要請にさらされている(群生秩序の問題)…階級社会からの解放=自由の獲得(価値観の多様化)=確固たる指標を失い、集団への過重な同質性要請へ。
・学級は、人間関係の流動性による再設計が重要
…とはいえ、低年齢では護られた同質性が必要。成長に伴い流動性を高める設計が必要。
・具体的な設計としては、異年齢学級、コミュニティスクール、学び合いなど。
・グループ学習は、流動的に・頻繁に行うことで、抵抗感をなくせるのでは。

◯第7章 教師
・プロフェッショナル=省察的実践ができること(ショーン)→学び続ける教師が求められている。
・相互承認のためには、子どもへの教師からの信頼と承認こそが何より重要。…家庭からも信頼されない子もいる。最後の砦であるべき! ノディングス「ケア」
・シュタイナー…寄り添うだけでなく、権威的=尊敬できる教師の存在が必要
・教師へも信頼、支援が必要

◯第3部 よい社会を作る
◯第8章
・相互承認の感度を育むため、異なる人の間で共通了解を見出す経験を積む必要がある。教育は共通了解を得るための考え方、議論の仕方を学ぶ機会を設ける必要があるのではないか。
→超ディベートあるいは共通了解志向型ディベートの提案(苫野2013)…あちらかこちらか、ではなく、双方が納得できる第3の解を目指す。
・超ディベートの手順
1)対立する意見の底にあるそれぞれの欲望・関心を自覚的に遡り明らかにする
2)互いに納得できる共通関心を見出す
3)共通関心を見たしうる第3のアイデアを考え合う

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2018年02月04日

ネタバレ 購入済み

これからの教育

自由の相互承認へ向けて、超ディベートを取り入れた授業

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2021年03月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

学びや教育のあり方について、譲れない最上位の目的から実現に向けたところまで具体的に書かれている。ここにあげたことをそれぞれの地域の現状をもとに対話的に実現していくことが必要

一般福祉の原理に沿って自由の相互承認の感度を高めること。そのために、学びの個別化協同化プロジェクト化の推進、教師の実践と成長を支えるための教育行政による支援の充実、自己組織化する学びのネットワークの、一般福祉促進のための再ネットワーク化

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2021年01月25日

Posted by ブクログ

ネタバレ

詳しくないが、外から見てずっと学校教育これでいいのかな?と思っていた。
この本を読んで、これからの学校教育が変わっていくのではないかと期待できた。

また、自分がそこに関われるという幸運もおまけでついてきた、人生が変わった1冊。

この本も、何度も読み返す本になりそう。

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2017年11月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

苫野先生のVoicyを聴いて、興味が湧き読破。
この本を買ったのは、何年か前。
その時は、パラパラと中身を見て「なんか小難しそうだな…」と思い、読んでいなかった。

読んでみると思ったよりも読みやすく、最後まで興味を持って読むことができた。
哲学的な難しい話も少し出てくるので、その部分は軽く読み流すところもあった。

子どもに学び続ける力(学力)をつけるという点は大賛成で、私が目指している教育の姿でもある。
絶えず自己更新をしていく必要があるのは、子どもだけでなく教師も同じであり、省察的実践家として在るべきというのも納得。

自由になるために学び、教育の土台には「自由の相互承認」があるという点も確かにそうだと思う。知り合いの先生は、学級開きをする際に「自由」と「勝手」の違いについて話をするとお聞きしたことがある。これにも通ずる気がする。

問い方のマジック、絶対的に正しいものはないという話題も出てきており、絶対解はないからその場に応じた適切解を創り出す、見出す力が教師には不可欠だと感じた。
10年前の本ではあるが、教育の不易の部分について論じられており、多くの学びがあった。

どう在るかというマインドの部分を、今後も大切にしていきたい。

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2024年03月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

■ひとことで言うと?
 自由に生きられる力=「学ぶ力」を養う学校教育を

■キーポイント
 ・教育の目的
  →1.自由に生きるための力を育む
  →2.自由の相互承認の土台をつくる
 ・これからの時代の「よい」教育
  →学力=「学ぶ力」を育む教育
   →自分に必要な知識・情報を自ら学ぶ能力
  →「よい」教育は時代によって変わる
 ・「よい」教育の実践
  →1.学びの個別化:各人の興味に沿った内容・スケジュールで学ぶ
  →2.学びの協同化:生徒どうしが互いに教え合う
  →3.学びのプロジェクト化:プロジェクト遂行の過程で学び方を学ぶ
   →3つの学びを融合させ、生徒の「学ぶ力」を伸ばす
 ・「よい」学校
  →「よい」教育を実践するための場
   →開かれた学級:異学年・保護者・地域住民と交流できる学級
    →相互承認の感度を醸成する
   →オープンスクール:さまざまな使い方ができるスペースのある学校
    →学習内容に合った学びの場を提供する
   →省察的実践家としての教師:自ら学び成長できる教師
    →子どもたちを継続的にサポートしガイドする

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2021年06月16日

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