あらすじ
死を覚悟した男たちが命を懸けて守り抜いた矜恃! 無二の友・吉村貫一郎を恫喝し、問答無用に切腹を命じた大野次郎右衞門。その内に秘めた真実の思いは「忠義」を全うした中間・佐助だけが知っていた――。孤高の作家ながやす巧が、浅田文学の最高峰に挑む珠玉作!
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切ない
追い詰められた吉村貫一郎が南部藩邸に駆け込んでそこで切腹をかつての親友の大野次郎右衛門から申しつけられるところからスタートした話だが、いろんな証言者の回想シーンで過去を振り返っていたことからなかなか切腹には至らなかった。が、とうとうこの巻で切腹の晩の様子が判明する。切腹までの過程での吉村の思いだけでなく、その後の大野の思い、吉村の息子の思い、その他の人々の思いが当時の価値観や美意識といろいろな葛藤がうまく描かれている。痩せ我慢の美学で実利的ではないのかもしれないが、登場人物の言動や葛藤に正しさや美しさを感じた。