あらすじ
西暦220年、後漢王朝の崩壊後、群雄割拠の時代の中から魏、蜀、呉の三つ巴の戦いへと発展した。その約1000年後。複数の「三国志」の物語や資料を整理・編纂し、フィクショナルな物語世界を構築してたのが、本書『三国志演義』です。中国文学に精通した訳者が、血沸き肉躍る、波乱万丈の物語を、背景となっている時代や思想にも目配りしたうえで、生き生きとした文体で翻訳した決定版です。(講談社学術文庫)
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Posted by ブクログ
黄巾の乱から始まる群雄割拠の時代。洛陽を恐怖のどん底に陥れた董卓を討つべく決起する連合軍。董卓を裏切った呂布も、最後には曹操らに討ち取られる。許都に献帝を移しその後ろ盾となった曹操が権力を握ると、官渡にて袁紹と決着をつけることに。
旗揚げ時から夏侯惇、夏侯淵、曹一族が配下にいる曹操はやはり強い。さらに典韋や許褚、徐晃なども加わるのだから、曹操の人を見る目は確かで、カリスマ性があるのだろう。改めて読むと典韋の死が思いのほか早いことに驚く。猛将との出会いの中でも特に、呂布配下の張遼と相見えるところがワクワクする。
一方の劉備は、お人好しすぎて関羽、張飛がヤキモキするのが面白い。だがその慎重さは乱世を生き抜く強かさでもある。二人の義兄とは違い直情的な張飛の欠点が、後に災いとなるだけに何とも居た堪れない。忠義を尽くして曹操のもとを去る関羽のシーンは、三国志のハイライトの一つ。
呉については、改めて孫堅の退場があまりにも早いことを実感する。孫策が盛り立て、父親の時代から付き従う者に加え、周泰や太史慈が配下になる展開が熱い。だが晩年の孫策は、あまりに粗暴で意固地過ぎる。古くからの優秀な人材に支えられ、新たに魯粛も陣営に加わり若き主君孫権が立ち上がる。
時折原文が挟まれることで臨場感や情緒が味わえたり、当時の人々の心情に思いを馳せることができる。訳が流麗で非常に読みやすい。