あらすじ
ベルリンの壁の崩壊後、双子の一人が何十年ぶりかに、子どもの頃の思い出の小さな町に戻ってきた。彼は少年時代を思い返しながら、町をさまよい、ずっと以前に別れたままの兄弟をさがし求める。双子の兄弟がついに再会を果たしたとき、明かされる真実と嘘とは? 『悪童日記』にはじまる奇跡の三部作の完結篇。
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Posted by ブクログ
正直さとは、いざという時に嘘が通るための下準備だ。
『悪童日記』では、双子の作文が日記として描かれている。
「作文の内容は真実でなければならない、というルールだ。ぼくらが記述するのは、あるがままの事物、ぼくらが見たこと、ぼくらが聞いたこと、ぼくらが実行したことでなければならない。」
子どもの限られた語彙のなかで、極限までシンプルに表現された人の残酷さを垣間見ることができる。
ただ、これは壮大なフリなのだ。
この作品を読み進めていくと、前二部作が全て嘘だったことがわかる。
人は、真実を守るために嘘をまといながら生きている。そして、その嘘には真実が含まれる。その境目は、本人でさえわからない。
双子がどんなに虚構を重ねても、本質的に追い求めていた「失われた家族」「故郷」「愛」といった喪失感や孤独、それに対する切実な願いが痛烈に描かれていた。
亡命というのは、命を亡くすと書くように、自分にあったはずの何かを故郷に置き忘れることなんだろう。この双子のように、半身を引き離されたような、それでいてその場所に戻っても、そこにあったはずの何かは戻ってこないような、行き場のない痛みなんだろう。
あるはずのない何かを求めて、届かなくて、そういった痛みを抱えながら生き続けることもできなくて。
そんな時に人は、きっと嘘を本当と信じるんだろうと思った。
Posted by ブクログ
・感想
悪童日記シリーズの3作目
2作目でも驚いたけど今作の展開にも驚愕。
結局彼らはどれなんだろう?全部嘘で作り物なのかな。
個人的には悪童日記のあの不気味さと閉塞感が好きだったから悪童日記のみで終わらせてもよかったかも。
Posted by ブクログ
(※ネタバレ)
⚫︎受け取ったメッセージ
実際には離れ離れだった双子。
二人が一緒にいられた「悪童日記」は、
二人が一緒にいられない現実から逃避する手段であった
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
ベルリンの壁の崩壊後、初めて二人は再会した…。絶賛をあびた前二作の感動さめやらぬなか、時は流れ、三たび爆弾が仕掛けられた。日本翻訳大賞新人賞に輝く『悪童日記』三部作、ついに完結。
(あらすじネタバレ)
クラウスとリュカには悲しい事実(と思われる)があった。2人が4歳の時、父は浮気相手と一緒になりたいと話し、2人の母は父を撃った。その流れ弾がリュカの脊髄を損傷し、離れ離れに暮らすこととなった。2人の母は精神の病にかかり、またリュカはリハビリが必要となり、一家はバラバラになる。クラウスは4歳から愛人に育てられることとなる。腹違いの妹とともに。クラウスは本当の家族は母とリュカだけと思い続ける。8歳のとき、自分は愛人に育てられていたのだと知り、愛人を責める。腹違いの妹と近親愛に陥る前に愛人の元を去り、精神の病を患ったままの母と暮らし始める。ことあるごとに「リュカなら…」と妄想のリュカを褒め続け、クラウスには愛情を一切示さない母に、クラウスは何も言えない。そのまま55歳になっている。そこへ、リュカが現れるが、人違いだと告げるクラウス。2日後リュカは電車に飛び込み自殺。クラウスは父の墓の横にリュカを埋葬することに決める。この先母が他界したら、生きている意味もなく、4人一緒になれる日も近い、将来電車に自分も飛び込むかもしれないという余韻をのこして、完。
⚫︎感想
「第三の嘘」によって、二人が会えるチャンスがあったのにタイミングが悪く、悲しい。ついに会えても、双子の気持ちは引き裂かれたまま。クラウスは55歳になってからでなく、もっともっと早くリュカに会いたかった。なぜ今になってしまったんだと思う気持ちで、リュカを追い返してしまう。しかし互いを求め、思う気持ちは「悪童日記」で描かれる二人で一人のまま。双子を引き裂く悲劇的な出来事に加えて戦争が落とす混乱。
いつの時代も、大人が引き起こしたことに巻き込まれ、犠牲になるのは子どもをはじめとした弱者である。
Posted by ブクログ
最後の一行が…悲しい
タイトルに第三の嘘とあるように、この話も「嘘」なのかもしれない。そう考えるとよくわからなくなってくる。けどそこが面白いと思う。
この小説の内容は作者の戦争孤児の実体験を元に書かれたものだそうだ。その内容を知れるだけでも貴重なものだと思う。
Posted by ブクログ
第二作の「?」がつながったような、つながっていないような。流し読みだから、もう一度じっくり読んでみようと思う。つながったらすごく面白いんだろうな。クラウス(K)がよくわからない。どうなっている??「彼」もリュカなのか、クラウスなのか。小説の再読は基本しない派だけどもう一度読もうと思える作品でした。
Posted by ブクログ
悪童シリーズ三部作、ラストのお話。今作は一人称。おそらくクラリス目線……なのかな。
冒頭で「私は自分の身の上話を書こうとするが、それは私自身を深く傷つける。だから私はすべてを美化し、こうあってほしかったという思いに従って描く」(p14)とあるので、どこまでが事実でどこまでが嘘なのかもうわからない。
これを事実だと仮定すると、シリーズすべてが崩れてしまうし、美化して書いたとすると、美化されたのはおそらく「悪童日記」の方だろうし、ということはここで描かれていることはリアルなのか?
もう、どういう気持ちで読めばいいのかわからなくて、ラストまで読めばわかるのかと思ってたんだけど、結局最後まで読んでもわからなかった……。
「ふたりの証拠」は結局本当にあったこと?マティアスは実在したの? リュカは?
また時間をおいて読み直したい。
Posted by ブクログ
今までの話は全部嘘で双子の創作だったとは・・・三部作だけど、それぞれの世界が繋がっていないうえに、登場人物が同じ名前で別人として登場するので、最初はなかなか頭の整理が追いつかなかった。
「第3の嘘」というのは、クラウス?がリュカ?に他人だと告げたことなのか?
「悪童日記」と「ふたりの証拠」どちらを読んでも双子の片割れを大事に思っていることが伝わる。離れていてもお互い大事に思いあっていたのは確かに感じる。
そのうえで、あのラストは絶望というしか他にない。「電車か。いい考えだな」という最後の一文があまりにも救いがなさすぎて辛い。
Posted by ブクログ
三部作完結篇。
何と言うことだ。様相がまたもや変わった。
この三部作は、合間を開けずに一気に読むことをお勧めする。最終巻を読んでいる時に多忙で途切れ途切れに読んでしまい、内容がきちんと把握できなかった。予想を裏切る展開に頭が混乱して理解できない。
戦争の中、子供達が生き残るためにいかに過酷であったか。引き裂かれた愛を取り戻すことがいかに難しいか。クリストフは、双子という形で自己の分裂を表現したのか。
Posted by ブクログ
三部作の最後ということだけれども、先の二作と比べたとき、双子の関係性が一番不幸で、悲しくなった。
一、二作目の『悪童日記』と『二人の証拠』では、リュカとクラウスという双子の兄弟を巡って、全く違った物語が語られつつも、二人の関係は、一心同体のものとして描かれていた。『悪童日記』の二人は、理不尽な生活の中にあって、協力し合いながら、強かに生きていたからこそ、最後、国境を隔てて別れるシーンに感動があった。『二人の証拠』では、双子の二人が、実は同一人物であることが仄めかされて、クラウス=リュカにとって、双子の兄弟の物語は、妄想であるからこそ、理想的な兄弟だった。
だからこそ、二人の関係が、修復しがたい溝として描かれる『第三の嘘』は、とても悲しい。
兄弟のリュカは、戦時中、母親が起こした銃乱射事件によって重症を負い、離れ離れで暮らすことになる。一方、双子の片割れであるクラウスは、その後も母親と共に暮らしながらも、当の母親は、兄弟のリュカを愛しており、クラウスに対して辛くあたる。数十年の時を経て、リュカは、家に帰ってくるが、クラウスは、彼が母親と会うことを拒み、追い返してしまう。
作中クラウスは、自分が書く物語について、「私はすべてを美化し、物事を実際にあったとおりにではなく、こうあってほしかったという自分の思いにしたがって描くのだ」と語っている。『悪童日記』と『二人の証拠』に描かれた双子は、まさしくその通りに理想的なものとして描かれる。しかし、『第三の嘘』は、そうなっていない。もしこれも「こうあってほしかったという自分の思いにしたがって」書かれたのであれば、悲しいように思う。