【感想・ネタバレ】盆まねきのレビュー

あらすじ

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毎年夏になると、なっちゃん家族はおじいちゃんおばあちゃんの住んでいる笛吹山にいきます。親族でお盆を迎えるためです。おじいちゃんの家でなっちゃんが聞いたふしぎなお話三つとなっちゃんが盆踊りの夜に体験したふしぎな出会いの物語・・・第二次世界大戦末期、特攻機に乗って亡くなった、作者のおじさんへのレクイエム。戦後半世紀以上経って戦後世代が静かに語る肉親への鎮魂歌。

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Posted by ブクログ

 ただ今、富安陽子さんの作品を読み続けて、不思議な物語の魅力を知りたい期間中です。


 「盆まねき」とは、『八月のお盆の三日間にみんなでご先祖さまの供養をする行事』のことで、既にご存知の方にとっては、あまり得るものは無いと思われるかもしれないが、本書に関しては富安さん自身の実話が重なることによって、改めてお盆について考えてみようという気持ちにさせてくれるのではないかと思った、本書は『野間児童文芸賞』受賞作品である(2011年)。

 毎年、主人公「なっちゃん」(小三)の家族は、母の父にあたる「ヒデじいちゃん」の家で盆まねきをするのが通例となっており、これまでは帰省ならではのイベントや遊びを楽しみとしていたなっちゃんであったが、この年ばかりは三日間を通して特別な体験をすることとなり、そこには物語の持つ力が連鎖することによって起きた奇跡とも思えるような出来事があったことに、私は大きな感動を覚え、それは素朴でほのぼのとした中に滲みを帯びた美しさもある、高橋和枝さんの絵の存在がまた大きいのだと思う。

 盆まねきの進行と共に、不思議で面白い話をなっちゃんに話すのが祖父母や曾祖父母世代の方々であることには、その話の場面だけ文字のフォントが変わることや、語り口が当時の年代の口調になることで、より臨場感が増したこともあり、物語が語り継がれていく素晴らしさを実感したのだが、なっちゃんにとっては「ほんとのわけないよ。うそっこのお話だよね?」という心境を抱いていて、それは本書で「ナメクジナメタロウ」の話をしたヒデじいちゃんが、『ホラふき山のおじいちゃん』と呼ばれていることからも明らかなように思われた。

 しかし、そこには不思議な物語で読み手を楽しませたいという、富安さん自身の思いの丈が潜まれているようにも感じられたのだ。

『うそと、ホラは、すこうしちがう。
人をだますのが、うそ。
人をたのしますのが、ホラ。
ほんとでもいい。ほんとじゃなくてもいい。たのしかったら大成功。
それがホラなんだよ。』


 そして、そんな不思議な話の魅力と共に本書で教えてくれたのが、盆まねきを通して強く実感した『人の存在とは?』なのだと思い、それは見える見えないといったものを超越した神秘的なものであることが、富安さんの物語に近づいた印象も抱かせるのだが、本書の場合、世界中で起こっている決して消えることの無い思いが投影されているだけに、シリアスな読後感となり、それは富安さん自身の家族の物語であるからと共に、世界中で同じような思いを抱えた家族の物語でもあるからだと感じたことによって、盆まねきという行事にのせていたのが、人が人を忘れない思いだったことを実感したからである。

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2025年10月10日

Posted by ブクログ

すごく好きな話だった。
登場人物も大きな家も景色もはっきり想像しながら読むことができた。
最後は少し泣けてしまった。
お盆という行事の意味をもう一度深く考えさせられ今年はそういう気持ちで過ごしてみようと思った。
教科書に掲載されていたというのも納得の作品。
子供だけじゃなく大人もぜひたくさんの人に読んでもらいたい作品。
都市伝説のような言い伝えのような不思議な部分もあるのでハラハラ感もありますよ。

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2024年06月08日

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小学3~4年生向け。

3章くらいから、「死んだ人を思い出すのって、ドーナツの穴みたいだな」と思いながら読んでいた。
穴だけでは存在できないけど、周りでいろいろ記憶してくれていることで存在する。
ドーナツ部分が出っ張ったりへこんだりする形をそのまま受けて、穴の形も決まる。

自分はどんな「穴」になりたいか。
奥さんや子供が覚えてくれていたら、それで十分だな。
「いいドーナツの穴だったねぇ」と思い出してもらいながら、「それはドーナツ自体がいいものだからだよ」とうっすら気づいてもらえたらいいな、と思う。
死んでからは穴づくりできないから、今から作っておかないと。

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2021年01月13日

購入済み

盆まねき

初めて購入した電子書籍。とても良かったです。感動しました。最後のところは涙が出ました。家族を思い、子孫を思い、国を思って、特攻を成功させたしゅんすけおじさん、そんな思いで亡くなられた方がたくさんおられたと思います。一度死んでも、人の記憶から失われて二度目の死が訪れないように、言い伝え、偲びつづけることが必要だと思います。

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2020年08月08日

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なっちゃんが八月のお盆をおばあちゃんの家で親戚の人たちとともにご先祖さまの供養をする3日間の出来事が描かれている。
1章おじいちゃんの話、2章フミおばちゃんの話、3章大ばあちゃんの話をなっちゃんが聞くのだか、どの話も不思議でちょっとこわくて、美しく、心に残る。
4章でなっちゃん自身が体験する不思議な世界。そして最後に書かれたもうひとつの物語。

子どもの頃のお盆の行事の楽しさや不思議さ、ちょっと怖い気持ちまでもが甦り懐かしくなった。
大人から昔の話を聞くのは楽しかった。写真でしか知らない昔の人の話を聞いては、みんな繋がっている不思議を感じていた。

「人間は二回死ぬ。一回目は心臓が止まったとき。二回目はみんなに忘れられたとき・・・」印象的な言葉。
お盆の行事を通して子どもは生と死、命の繋がりを感じてゆくのでしょう。もうそんな習慣も楽しさも知らない子どもが増えたのでしょうね。

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2020年06月07日

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ネタバレ

富安陽子の本の中で1,2を争うくらい好きな本です。
いつもはただ不思議な終わるのですが、作者の戦争で亡くなった特攻隊の伯父様のことがベースにあると知って、最後の章は涙が止まりませんでした。
私も伯父が戦地で亡くなったいます。
今のうちに母にきちっと聞いておかないと、伯父の生きていたことを知っている人がいなくなってしまいますね。
急がなければ。

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2020年02月11日

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ネタバレ

8月のお盆の三日間に、ごちそうを用意して、親戚の人たちを招いて、ご先祖様の供養をする行事が、「盆まねき」というそうだ。
普段とはちがう楽しくにぎやかな三日間。そして、おじいちゃんやおばさん、大ばあちゃんから語られるホラ話のようなふしぎな話。
子どもの頃の親戚の集まりを懐かしく思い出し、また最後の大ばあちゃんの話からの墓地への流れはとても幻想的で、ちょっと怖いはずなのに、ちゃんと供養されて、死後安らかに成仏してるんだなとホッとさせる、素晴らしい流れだった。

最後の本当のおはなしも、子どもたちに伝わるといいなあ。

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2020年02月09日

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雑誌「MOE」で紹介されているのを見て手にとりました。

児童文学ですし、内容としてはファンタジーに分類されるのでしょうが
何箇所かで思わず落涙。戦争で喪ったということではなくとも、大切な誰かを亡くした人なら一層心に染み入る物語だと思います。

田舎の描写がいいですね。そこで繰り広げられる親戚縁者の人間関係も。私には田舎はありませんが世代でしょうか、とても懐かしく感じました。
今の子供たちはこのような人間関係をどのように読むのでしょう。

最後にこの物語の元となったあるノンフィクションが著者によって語られます。衝撃の事実です。
「人間は二度死ぬ」私はそのことを忘れたくないと思います。

今法律が変わりつつあり、世の中にまた戦争の気配が漂い始めています。子供たちにはもちろん読んでもらいたいですが、これは大人も今読むべき文学作品です。

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2013年12月17日

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とても可愛い絵に惹かれ、手に取りました。
開いたときの鉛筆で描かれた絵がものすごく好みです。
不思議なほらと、好人物達がなかなか味があって良いと思っていたら実話だったんですね。すごく好きな話です。

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2013年03月16日

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大好きな富安さんの作品。

「サマーウォーズ」のような田舎の大家族の雰囲気が私は好きです。

そして、大切なことを感じます。
“人は2回死ぬ”というのが、印象的でした。

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2012年12月19日

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たくさんの子どもたちに読んでもらいたい。
大きなホラ話から始まる、4日間の田舎の盆まねきのお話。
ほのぼのと始まるけれど、途中ゾクッとし、最後は涙ボロボロ流し、読み終えました。

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2012年08月14日

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ネタバレ

子どもたちが田舎の親戚のおじさんたちから不思議なお話を聞き、最後にはそれを体験する物語。
はじめの意思疎通ができるナメクジの話がおもしろい。

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2012年02月27日

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おじいちゃん・おばあちゃんとのつながりっていいなぁ、なんて思いながら読んでいたら…なんてステキな話なんでしょう。
それだけでなく、あとがきならぬ「もうひとつの物語」。私は祖父を思いだして、泣きました。
毎年お迎えするお盆、亡くした人を思いたいです。

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2011年11月30日

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「ほらは楽しませるもの。嘘は騙すこと。」良いこと言うね~。田舎のお盆での小学生の話だが、作者の記憶による物語だ。素敵な「ほら」が沢山語られている。そして戦争で亡くなったおじさんの話も・・・。

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2011年09月25日

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6年教科書掲載本

ふりがなもついているし、文字も多くないので、本編は3年生ぐらいから読めると思う。

お盆に先祖を迎えるという風習、今も行っているところは減っていると思うので、お話を楽しみながらそれを知るいい機会になる。

最後の富安陽子さんの実話を読んで、戦争を知らない世代も戦争のことを考えてほしい。

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2021年01月01日

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なっちゃんがお盆の間におじいちゃんたちから聞いたふしぎなお話。そのあとなっちゃん自身がした本当にふしぎな体験。作者の親族への鎮魂歌

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2013年10月24日

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うそと、ホラは、すこしちがう。
人をだますのが、うそ。
人をたのしますのが、ホラ。
ほんとでもいい。ほんとじゃなくてもいい。楽しかったら大成功。それがホラなんだよ。

お盆に祖父母の家に遊びに行った主人公のなっちゃんが、おじいちゃんや親戚の人から愉快なホラ話を聞いて、それでおしまいかと思いきや、最後に切なくなる展開が。

とてもよかったです。

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2013年07月28日

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【収録作品】1章 おじいちゃんの話-八月十二日-ナメクジナメタロウ/2章 フミおばちゃんの話-八月十三日-月の田んぼ/3章 大ばあちゃんの話-八月十四日-かっぱのふしぎな玉/4章 -八月十五日- 盆踊りの夜/もうひとつの物語-さいごにほんとうのお話をひとつ-

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2011年08月26日

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ネタバレ

7月の半ばを過ぎると、なっちゃんの家にママの田舎(本家)から盆まねきの手紙が届きます。8月のお盆の3日間、ごちそうを招いて親戚が集まってご先祖様を供養する行事です。
パパとママは笛吹山(ふえふきやま)のママのおじいちゃんのことを「ホラふき山のおじいちゃん」なんて言ってます。そして、そのヒデじいちゃんだけでなく、ママの親戚はみんなちょっと変わっていて、たのしい話をなっちゃんやいとこのトッチンに話してくれるのです。
おじいちゃんやおばちゃん、大ばあちゃんたちの不思議なはなし。ホントなの?ホントではありませんが、ウソでもありません。ホラ話しです。人を楽しませる、ホントでもいいホントでなくてもいい話。
ご先祖さまと戦争のこと、命のつながりも感じられて、ちょっぴりしんみりもなれる本。中学年〜

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2011年08月16日

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小中~:富安陽子さんの本は、ふしぎな世界へいつも招かれる。とても温かみがあって、時にはぞくりとしながらちゃんと安心できる場所に着地させてくれる。「お盆」という年に一度のご先祖さまとの交信をかみしめたい。

この本は、「野間児童文芸賞」を受賞した作品です。
富安さんの講話で、この作品の中の一つ「ナメタロウ」の話を朗読してもらいました。とても気持ちがほっくり温まり、語ってもらう楽しさを知りました。
すぐに4年生の朝読おはなしタイムで子ども達に伝えました。
富安さんの「身近なふしぎをいっぱい伝えたい」というメッセージがつまった本です。サイン本が私のパワーブックになりました。

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2012年02月05日

Posted by ブクログ

大好きな富安陽子さん
久しぶりに読んだ

〈 なっちゃんがお盆の間におじいちゃんたちから聞いたふしぎなお話と、そのあとなっちゃん自身がした本当にふしぎな体験〉

こんなお盆の過ごし方をされてきたんだなあ
富安陽子さん
そこで『物語の種』が蒔かれたんだなあ
しみじみと思った

ファンタジーが魅力ですが
このお話しには「事実」と作者の「願い」がしっかりと
描かれています

「うそ」と「ほら」は違うのです
亡くなった人を想う
これが「お盆」ですね

≪ またおいで 盆まねきの おたよりが ≫

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2024年07月03日

Posted by ブクログ

感想
日本の夏は暑い。太陽はギラギラ輝き楽しみも多い。しかし過去の影はいつまでも落ちている。そのすべてを背負い次の世代に継いでいく。

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2023年08月06日

Posted by ブクログ

おじいちゃんの家に集まって
親戚いろんな人たちと過ごす
自分と年齢の近い子もいて
それは、楽しいんだろうな

自分には、そんな子ども体験はないけど
わくわく感が伝わってきます

この本は、大人向きの本でもあるかもしれない
年齢を重ねて見送った人も増えてきたし
最終章のこともあるしね

みんなに忘れられたときにもう一度死ぬって
「バガージマヌパナス」にもあったよね

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2014年08月28日

Posted by ブクログ

著者の講演会で、この本のいくつかのエピソードは実体験だと聞いた。本当にこういう家族であったらしい、富安家は。なんでもものになるのに三代かかるというが、ほら吹き三代目で作家が生まれたのだな、と感慨深い。
富安陽子にしては珍しく戦争についても触れられているが、基本明るく楽しく面白い人なのであんまり暗くはならない。
しかし、こういう親戚に囲まれて育つとは、なんと幸せな子ども時代であったことか。羨ましい。

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2014年02月01日

Posted by ブクログ

お盆に親戚が集まり、迎え日から1日づつ過ごし、送り日まで、お婆ちゃんなどに不思議な話を聞く。子どもらしい姿勢でお盆やご先祖を感じつつ、著者の親戚で戦争で亡くなった方への思いを綴るあとがきへと連れていってくれる。夏休みに読んでおきたい。中学年くらいから。

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2012年08月06日

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