あらすじ
【第144回直木賞受賞作】御一新から10年。武士という身分を失い、根津遊郭の美仙楼で客引きとなった定九郎。自分の行く先が見えず、空虚な中、日々をやり過ごす。苦界に身をおきながら、凛とした佇まいを崩さない人気花魁、小野菊。美仙楼を命がけで守る切れ者の龍造。噺家の弟子という、神出鬼没の謎の男ポン太。変わりゆく時代に翻弄されながらそれぞれの「自由」を追い求める男と女の人間模様。
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Posted by ブクログ
「自由」なんて聞こえはいいが、これほど「不自由」なものはない。
御一新から10年の根津遊廓。
武士の身分を失い遊廓の客引きとなった定九郎は、ただただやるせない日々を送っていた。
新政府の造り出した「自由」という厄介な柵に縛られながら…。
時折挟まれる落語や都々逸が物語の儚さをどんどん煽っていく。
捨てたはずの過去の柵の中でもがき逃げてばかりの定九郎。
それに対比するかのような花魁・小野菊の凛とした佇まいと華やかな笑顔が素敵!
時代の波に翻弄されても自分を見失わずに生きていきたい!
「自由」とは楽なようで、実はほんと難しい。
Posted by ブクログ
主人公があまり無気力に描かれているが、実は忍びだったり仇持ちだったり…と裏の顔を期待したが、特にそんな秘密もなく、本当に主人公?と思うほどだった。廓という狭い世界でひたすら静かに物語が進み、主人公はいつまでも世捨て人のままだが、中盤以降から小さな事件が起きて、気づけば物語に引き込まれていた。
全体的に希望を持てない重い雰囲気なのは、江戸から明治という激動の時代に生きるのは、実際こんな感じだったのか…最後は明るい結末が見られて良い気分で読み終えられた。
Posted by ブクログ
今の今までずっとポン太や圓朝の噺を聴いていたかのような夢現な小説。
どんどん引き込まれてお話と現実の境目が曖昧になっていった。
小野菊さんのきっぷの良さ、大変素敵でした。
こんな人に出会えることはお話の中でも現実でも、中々ないような…
それに憧れはすれど、私にとっては定九郎さんの気持ちが大変わかるお話でした。
1万円選書の一つ。
Posted by ブクログ
読み終わって、ストーリーを思い出し追ってみても
起承転結、驚きの展開、心踊る出来事などはなく
淡々と進んでいったような気がする
それでも、この小説の世界に静かにずぶずぶと浸り
なんとも言えない世界観に酔って読み終わる
浮かれたところも、落ち込み過ぎるところもなく
不思議な出来事も、すんなりと受け入れて
小説という架空の世界を経験する醍醐味にひたった時間