【感想・ネタバレ】腐葉土(木部美智子シリーズ)のレビュー

あらすじ

笹本弥生という資産家の老女が、高級老人ホームで殺害されているのが見つかった。いつもお金をせびっている孫の犯行なのか? そこに生き別れたもう一人の孫という男が名乗りでる。詐欺事件や弁護士の謎の事故死が、複雑に絡まりはじめ――。関東大震災、東京大空襲を生き延び、焦土の中、女ひとりでヤミ市でのし上がり、冷徹な金貸しとなった弥生の人生の結末とは。骨太ミステリーの傑作長編。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった!!!!

人の因果とそれに追随して起こる感情の多面性、人間の過去、
そして演技性人格障害の得体の知れなさを描くのがとても上手い。
これだけ人間の心情描写に長けている人はいないと思う。ミステリという点から見ても、そういった部分での違和感を作るのが上手い。

説明の為の描写が繰り返される点も見られたが、自分には丁度良かった。

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2020年12月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

関東大震災と東京大空襲を生き延び、戦後の闇市から身を立てた高利貸しの老婆が殺害された。疑いは彼女と揉めていた孫に向くが……というお話。

本筋のミステリは非常に入り組んだ話で読み応えがあったが、肝になるある仕掛けや事件の真相は予想通りだった。
熱量は高いが作者の筆が走りすぎているように感じる部分もあり、話が分かりにくかったり、かと思えば同じことを数ページ以内に繰り返したりしている部分があったりとややムラがある。
勢いに乗ってガーッと書くタイプの人なのかな……?
(なお登場人物名に誤字があり、「実は別人の話してるっていう叙述トリック……?」と無駄に気が散ってしまったが別にそんなことはなかった。)

ただ、その熱量ある筆致によって描写された関東大震災や東京大空襲の回想シーンは凄まじく、読んで良かったと思えた。各登場人物の心理描写も立体的でよかった。特に悪事を働いたり残酷な仕打ちをしたりする人物の心理は、共感はできないが腑に落ちるところがある。
このことに関して、作者は主人公の木部美智子を通してこのように書いている。

「背景を調査し分析することと、理解し共感することは違う。(中略)子供を虐待する親の背景を分析してもいいが、共感し理解できるように文脈を巧みにし、誰にでも起こり得ると結論することは、自堕落なのだ。」

このような気概を持つ望月諒子は、信頼できる作家だと思う。
木部美智子シリーズは『蟻の棲み家』につづいて2冊目。このシリーズは骨太でけっこう好きな気がするので、ちょこちょこ読んでいきたい。

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2024年08月13日

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ネタバレ

高級老人ホーム資産家殺害事件を追う話。
フリーライター木部シリーズ2作目。
資産家高齢女性弥生さんが殺され、ヘルパーに遺産相続すると遺書があり、そのヘルパーの過去は、とどんどん深みにハマっていき真相が気になる。資産家の女性の関東大震災、東京空襲の描写が凄くて悲惨さに息を飲む。その状況下で私ならやっていけたとは思えやん、弥生さんの強さに惹かれると共に何故この人が殺されたのかと理不尽さを呪う。そして読み進めるにつれ深沢弁護士がどんどん好きになるのに訪れる心を乱されるラスト。もうええやん、何で、という思いがエピローグで綻ぶ。最初っから伏線が張られててそこが繋がるのかと舌を巻く。このシリーズ重いけどハマる。

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2024年03月10日

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ネタバレ

フリーライター木部美智子シリーズ第4弾。

高級老人ホームで殺害された資産家老女・笹本弥生。弥生殺害事件を調査するフリーライター・木部美智子の目線で語られる弥生を巡る人間達。孫、ホームでの弥生の担当者、顧問弁護士、新聞社デスク・・・。そこに、大学を巡る詐欺事件、弁護士の謎の事故死などが複雑に絡まり合い、事件の行き着く先は予想もつかない。
現在の時間軸の間に挟み込まれる、弥生の過酷なまでの人生。関東大震災、東京大空襲を生き延びた壮絶な過去の記憶。焦土の中、ただ「生きる」ことだけを正義として冷徹にのし上がってきた弥生の生きざまには激しく心を揺さぶられる。
夫にも娘にも、孫にさえも愛されず、最後まで孤独にあった弥生の人生の結末のつけ方に胸が締め付けられる。

主人公木部美智子の淡々と、しかし一本筋の通ったライターとしての在り方は清々しさを覚えるし、彼女と協力して調査を進める記者・亜川もまた魅力的。

遠田潤子作品ほど湿度のあるドロドロ感はないものの同様の熱量をもち、太田愛作品ほどのエンタメ要素はないが同様の骨太さをもったミステリは、圧倒的な密度ゆえに、最後は考えることさえできないほど頭が疲労して、読み終わってひたすら放心。
全てを読み終わってみると、「腐葉土」というタイトルの深さが実感される。いや~凄い作品でした。

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2019年03月11日

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ネタバレ

面白かった!!!
笹本弥生という老人が過ごして来た人生が壮絶で
生きるためにのし上がるたくましさ。
今と昔と交互に読み進めて行くけど弥生の人生に引き込まれた。
最終章は意外な結末に先が気になって、読むのが止まらなかったよ
あっちもこっちもそうだったのねって感じ。
久し振りにがっつりミステリー読んだって感じでした。

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2016年11月15日

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ネタバレ

ミステリーとしては、途中、寄り道部分が長いので、
ちょっと物足りない気がしましたが、
一方で途中の寄り道部分がとても読ませる内容で、
トータルとしては「面白かった」です。

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2014年05月18日

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ネタバレ

主題としたいところは共感できるし問題意識を持てるけど、読んでるとすごい疲れるし目が滑ってしまう……
動機とトリックは面白かった

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2024年09月10日

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ネタバレ

2023/08/21予約 
木部美智子シリーズ。関東大震災を生きた笹本弥生。
戦後一人残され、仕事先の呉服屋の残したものを闇市で売りさばき、やれることは何でもやって、資産を作り老後を高級ホームで過ごしていたが殺される。
資産管理を任せていた弁護士の深沢。と、13年前、深沢のかわりに司法試験の論文テストを受けてくれた宮田の関係。
熱心かつ良心的な弁護士の宮田は、何度も保証書を出し、裏切られ2億5000万にも達していた。
深沢が笹本弥生の預り金から融通して宮田に渡した直後、宮田は大金ごと事故、死亡する。
その宮田は、かつて弥生が働いていた呉服屋のご主人の孫だった。呉服屋から受けた恩義を忘れず、今世話になっている深沢の為に財産を譲ることは呉服屋の孫を間接的に助けることになる…
本の8割過ぎるまで、話があちこちに広がるため集中できず時間がかかった。その後はスムーズ。
弥生の戦後を生き抜く様が目に見えるようで、まさに地獄を見たら何でもできる、とつくづく感じた。

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2023年09月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

プロットや文体含め、全体的には読み易い部類に入る小説だとは思うのだが、特に序盤、内部世界を読者にスムーズに理解させるべき状況説明については、ちょっと文章力が拙いのでは、と感じた。
また、回想ブロックのハイライトであるはずの”弥生ののし上がり”に関しても、あまりにあっさりし過ぎというか、現実感が伴わない表層的な描写に留まっている印象で、戦後のどさくさに紛れ金貸しというグレーな生業を背景に強かな女が成り上がっていく過程で必ずあったであろう、いわば汚泥のような手触りと表現すべきか、そういったリアルな生き様が見えなかったのが残念。
中盤以降、雑誌と新聞とテレビという3つの媒体が共闘するくだり以降はテンポ良く、いよいよエンジンが掛かってきたか、といった趣きでぐいぐいと読み進めていくことができたが、終わってみるとやはり細部の詰めが甘いというか、ちょっと仕掛けを盛り込み過ぎて消化できないままにページが尽きた、という感じがある。
例えば、なぜ彼は最初に木の金庫を1人で開けた際に呉服屋の値札を捨てなかったのか? とか。

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2021年03月28日

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