あらすじ
11年間を共に過ごしてきた愛犬マージの胸にしこりが見つかった。悪性組織球症。一部の大型犬に高発する癌だ。治療法はなく、余命は3ヶ月。マージにとって最後の夏を、馳星周は軽井沢で過ごすことに決めた。
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ノワール小説で知られる著者が、夫人と愛犬2匹との日々を、愛情豊かに描いています。
マージは、著者が飼っていた、バーニーズマウンテンドッグという犬種の大型犬。
原産国のスイスでは、大型犬について「3歳までは幼犬、6歳までは良犬、9歳までは老犬、10歳からは神様の贈り物」という言葉があるそう。マージは11歳で亡くなっています。
老化・病気により、食事・排せつなど、普段当たり前にしている行為ができなくなること。看取るまでの、マージと家族の苦しみを読むと胸が詰まります。
この本を読むことで、哀しみが癒されたり、いつか来る別れに向けて心構えができるかもしれません。
人が犬を想うこと、犬が人を想うこと、人が人を想うこと、愛情の素晴らしさを感じさせてくれる作品です。
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Posted by ブクログ
犬のエッセイです
自分が14年ともに暮らしたミックスの愛犬を虹の橋の向こうに見送ってから、しばらくこの手の本を読み漁っていました
うちの子は6キロ程度の子でしたが、それでもいなくなったあとのがらんとした感じはたまりませんでした
ましてやマージはバーニーズマウンテンドッグ
でかい
精神的に占める大きさはうちの子も変わらないとは言え、物理的なサイズ感は5倍?6倍?
喪失感も大きいことだっただろうと
病気がわかってからの著者夫妻のマージへの献身ぶりは、お金があるからできることだなと思いますが、それにしてもなかなか出来ることではなさそうです
幼少から一緒にいたマージが、日々弱っていく姿を見つめ、支えることは辛かったでしょう
でも犬に限りませんが、動物と暮らすということは命を見つめること
生命を見送ること
見送っても見送っても、また命を迎える
性懲りもなく
馳さんもそうてした
同じ子は二度とおらず、全然違う個性の新たな子に前の子の姿も重なる
見送った子たち誰も忘れることなく、また新たな子との暮らしをつくっていく
でも生命を見送ることの慟哭を忘れないようにしておこう
この子との毎日も一期一会なんだから
Posted by ブクログ
悪性組織球症で余命三ヶ月を告げられたバーニーズマウンテンドッグのマージとの三ヶ月を綴った、日記形式のドキュメンタリー。マージの大好きな軽井沢に二ヶ月別荘を借り、そこに連れて行ってもらった時のマージの喜びようと、腫瘍が小さくなって元気に走れるようになったマージの様子に、心から祝福したくなる。マージの看病と介護をしながら、元気の盛りの一歳のワルテルの散歩にもしょっちゅう行ってちゃんと世話してる馳さんすごい。犬のご飯を毎回違うメニューでいろいろ作っているのもすごすぎる。自力で排泄できなくなっていくマージの様子に、うちの犬の最後の方の姿が重なった。安楽死を覚悟したその日の、先生が来る直前に馳さんの腕の中でマージは息を引き取るけれど、犬ってそういうのちゃんと分かってるんだよなぁ。犬は今を生きているから、そのボスたる飼い主も今を生きねばならない。馳さんのボスぶりがすごい。
Posted by ブクログ
馳星周、という作家は、なんとも興味深い人だなあ、、、ということをシミジミと感じたエッセイでした。
馳さんの小説は「不夜城」「ダーク・ムーン」しか読んだことがないのですが、すっげえ人間の暗黒面を書いて書いて書き倒してる人、っていうイメージがあります。そこまで人間のダメさを書くのかね、みたいな。人間嫌いなの?みたいな。
ちなみに、馳さんが、遥か昔に「佐山アキラ」名義で書いた、ゲームのウィザードリィを舞台にした短編小説「酔いどれの墓標」は、ウルトラ好きなんですよ。アレ、馳星周だったんだ!と知った時の驚きは、凄かった嬉しかった。余談ですね。
で、その、馳星周。ここまで犬が好きなのか!?という、驚愕のエッセイでした。馳さん、このエッセイの中でハッキリと「俺は人間嫌い」って自分のことを語っていますが、犬のことは心の底から好きなのね、、、ということが、シミジミとシミジミと分かります。分かりまくります。
自分は、犬も飼わないし、猫も飼わないし、ペットとの生活は全く縁のない人間なのですが、ここまで愛情を注げるってマジですげえな、って、尊敬します。いやもう、、、凄いよなあ、、、町田康の「猫にかまけて」を読んだ時の感動に近い感じ。「あっこまで人間をケチョンケチョンに描く小説を書く人が、ここまで自分の飼っている動物に愛情を注ぐのか!?」という事を知った時の感動。アレですね。馳さんと町田さん、それぞれ犬派と猫派にキッチリ別れる感じですが、めっちゃこう、話、あうんじゃないかなあ~?とかね、思った次第ですね。
愛するペットが、今まさに寿命尽きんとするときの、あの、ご飯食べてくれた嬉しさ。ウンチやオシッコをしてくれた、というただそれだけが、途轍もなく嬉しい、という感覚。うーむ。感情って、なんだか、凄い。と謎な思いを抱いてしまいました。いやもう、実際、、、そういうもんなんだろうなあ、、、っていう。なんだか凄いです。感情って。
いつか自分も、ペットを飼うような人になったら、ここまでちゃんと、愛情を注ぐことのできる人になりたいな。そう思わせてくれた意味では、とても見事なエッセイでした。馳星周、という人物。いやはや、興味深い人です。うん。