あらすじ
自由民権運動を巡る明治政府と自由党壮士らの暗闘に巻き込まれてきた干潟干兵衛と孫娘の雛。2人の運命やいかに!? 史実とフィクションを巧みに織り上げ、激動する時代の波に翻弄される人々を描く明治小説の白眉。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
上下巻を一気読み。
吉川英治の『鳴門秘帖』に劣らぬ痛快伝奇ファンタジー。
下巻ではお雛の母親や宿敵の正体も明らかになる。
新世代の体制批判の若者たちに巻き込まれていく、老馭者干兵衛。大団円では終わらず、最後が印象的。
エンターテインメントというより歴史を題材にした政治小説とも言える。イスラムだのカルト宗教のシンパと、赤軍派や全共闘世代、自由民権の壮士、そして幕末の志士。どれも本性は同じ。
Posted by ブクログ
山風の明治モノ、大好き。もっと読みたいと思っていたので、前評判の高いこれらを読むことにした。
上巻…どうにも話が細切れで読みづらいときもあるが、幻想的な物語の枠に惹かれて読み続ける。
舞台は明治15年。
会津の武士であり、同心も経験したことのある、中年の馬車引き、干潟。
孫娘のお雛をのせてメイジ・トウキョウを今日も行く。
お雛には2人の幽霊がついており?、それはお雛の父親であり干潟の息子である蔵太郎と、その母であり干潟の妻でもあるお宵の2人。
彼らはお雛が呼べばそれなりにこの世にくるが、不死の身である以外は特殊なことはできず、全知全能でもない(笑)。
このあたりのやりとり、かなりシュールで笑えました。
さらに蔵太郎はお雛を産んだ行きずりの女・お鳥を探しており、お宵は自分を凌辱した敵の男を探している、という奥行き。
そこから干潟が自由民権運動の闘士たちのトラブルに巻き込まれたり、旧主家たる会津の山川家との付き合い、噺家や廓の人間関係、大山巌と山川捨松のいきさつ、ボディーガードの若き嘉納治五郎と姿三四郎のモデルとなった少年、坪内逍遥に、川上音二郎とサーカスの世界、爆弾魔となった民権運動家、足尾銅山鉱毒事件の加害サイドにいた志賀直哉の祖父、土佐の人斬りを捕らえた天才剣士の老人のいま、ストーリーの中心・会津藩、そして福島藩の現県令の三島との確執など…。
明治オールスターの盛り盛りで、豪華で賑やかなサービスにあふれている。
真景累ヶ淵からはじまる本書、そう円朝の幽霊話がこの先を暗示している。
下巻からは急速に話がまとまりだし、自由民権運動で上巻では好意的に描かれ、故郷の越後へ戻った赤井とその縁者たちと、幽霊たちの探しびと、宿命のつながりを明かしていく。
え、と驚く正体明かしが2回もあり、読者にも最後までどうなるかわからない展開がとても楽しい。
干潟さんの牢破りのあとの行動には意表をつかれた。
赤井のその後…なんともまあ、、。
なかなかの強キャラ、幇間のひとが面白かった。
ラスト、干潟もまた死ぬかもしれないと匂わされている。
この終わり方もめちゃめちゃかっこいいなあ。
それにしてもさんざん、会津の苦しみを描いておき、お鳥の正体のところで、その会津が越後でどれだけひどいことをしてきたか、を描くのがすごい。
これが戦争の一側面である、と。
本当にそうだ。
山風と、例えば対照的なところでは、藤沢周平も私はよく読むが、こういうところの山風はリアルな苦しみがきっちり再現されてきている。藤沢作品のほうがよほどファンタジーな気さえする。一見反対なのが興味深い。
ところで読後、本書関係者をggったところ、福島県令であり、本書の悪代官役の三島通庸って、三島弥彦のお父さんだったのか…!いだてんの。ストックホルムオリンピックに出てた人でしょーーーまじか、そしてこの三島通庸の玄孫の1人が麻生太郎なんだそうです。うーわ。
Posted by ブクログ
幼子に呼ばれたときのみ出てくる幽霊。血を流しながら軍服姿の父、自決により喉から血を流しながら出てくる祖母。一つの定型的なキャラクターとして良くできている。明治維新後の事件・人物を絡ませて描く伝奇小説。戦中派の意地も反映させるところはクスリとさせる。
Posted by ブクログ
山田風太郎はやっぱりすごいなあ。死ぬまでに山風作品を知れて本当によかった。
妻を亡くした辻馬車屋の干兵衛と、父を亡くし母に捨てられた孫娘のお雛。死んだ妻と息子は、お雛が呼んだときだけ幽霊として現れる。しかし徐々に別れの時も近づいてきて…
2人は親子馬車として様々な客を乗せ、思いもよらぬ事件に巻き込まれていく。
どの話も良かったが、やはり最後、別人のようになって現れた赤井の姿は衝撃的だったし哀しいなあ。
明治ものの傑作名作と謳われているだけあって、とてもおもしろかったし、明治という時代に翻弄される人々のドラマがあった。
山風作品のラストは、いつも切ない。しかし、悲しい切なさではなく、どこか清々しい切なさだ。たとえハッピーエンドでなくても、最後、主人公たちの望みを作者が叶えてくれるからだろうか。