【感想・ネタバレ】後宮小説のレビュー

あらすじ

時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに……。さて、銀河の運命やいかに。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作。

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Posted by ブクログ

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好奇心が服を着て歩いているような素直な平民少女の銀河が後宮へ召し上げられ、前代未聞の活躍を遂げる話。

銀河がいかに真っ直ぐで破天荒な人間であるか、彼女が成した偉業がどのようなものであったか、ということが歴史小説風に記されている。
サッパリした性格の銀河が、彼女の周りのくせのあるルームメイトや女大学の師範といった魅力的な人物との丁々発止なやり取りや不思議な魅力のある双槐樹との関わりで少しずつ変わっていくところがじわじわ面白かった。銀河の偉業を語る上で欠かせない男、ここぞというときに命を張る博奕に勝ち続ける渾沌に関しても少なからぬ分量が割かれているが、一貫して気分屋であるという彼の在り方もなかなか面白かった。

これ、たぶん今似たようなものが世に出るとしたら、主人公の銀河と渾沌は絶対に転生者とか異世界人とかそういう設定が生えてるんだと思う。本作はそんなことはなくて、純然としたファンタジー(作者はあとがきで否定しているが)だと思った。歴史家という少しばかりメタっぽい視点こそあるけれど、「自分の時代の自分の国で自分の物語を生き抜いた、ちょっと変わった人たちの話」という点ではかなり筋が通っているなぁと感動してしまった。

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2022年12月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

さすがファンタジーノベル大賞
ずっとど真面目にシモの話してるから人に勧められるかって言われたら違うけど個人的にはめちゃくちゃ好き
何よりそれぞれのキャラクターが良くて一切モヤモヤしなかったスッキリ読めて気持ちよかった
これは物語の為に書かれた物語

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2022年07月24日

Posted by ブクログ

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平成元年に刊行された本で、著者逝去により本作の存在を知る。後宮ファンタジーの祖と云われる本作は田舎の少女銀河が後宮でのしあがり、破天荒な性格そのままに自由に生きていく物語。皆さんのレビューでは「面白い」というものが多かったから期待値は爆上がり笑。実際には良い意味でドタバタ劇が繰り広げられ、なかなか面白かった!作者が読者に直接語りかけてくる事もしばしばあり、終始物語を俯瞰して読む事ができた。それにしても本当にフィクションか?と思わせる内容でおもわず「素乾通監」って調べちゃった笑。素晴らしい物語に感謝。合掌

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2024年09月18日

Posted by ブクログ

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アニメの方を見てから読んだが、あまりに内容が振り切れているのでびっくり。よくこれを大賞に据えてアニメにしたな、と思う。玉遥樹の最後や「道女」になるシーン、馬小屋の二人は子供に分からないように映像を作っているのがなんとなく分かったが、相当苦心されたろうな、というのが伝わってくる。
歴史資料をもとに作者が想像交じりで小説風に語るという形式を取っており、普通の小説で見せ場になるような部分はあえて簡素にして切っている。もっと会話を聞きたくなるような魅力的な人物ばかりなのに、世界観にどっぷり浸るということはさせてくれない。その分読んでいる方はああでもない、こうでもない、と想像が膨らんで、そこに作者の飄々とした語りがだんだんはまってくる。不思議な感じ。

角先生の哲学、アニメでは「女とは子宮があること。子をはぐくむこと」というだけで終わっていたが、小説を読み進めていくと、先生の言う真理とは森羅万象(おそらくいのち)、という部分があり、国の真理とはすなわち皇帝、後宮とは子宮である、女の腹はすべての真理を生む、とつながっていき、ようやく全貌がわかるようになっている。
哲学の大先生がなぜ壮大な後宮の教育に生涯をかけたか、後宮とは何なのか、そこまで来てはっきり分かる仕組み。面白い。それなのに、終盤に渾沌がこの作品の屋台骨のような後宮哲学をくだらない(美しいけど)と一言で切ってしまうのがまた一層面白い。

渾沌の頭がいいのにその場の気分と思い付きでしか行動しない感じ、私の昔の親友に非常に似ており、なんだか懐かしくなってしまった。いつも信じられないほど突拍子もないことばかりしていて、10年近く親友だったのにどうでもいいことで喧嘩別れしてそれっきり、それも渾沌風に言えば縁というところか。他人と思えなくて、妙に彼の言うこともしみじみと心にしみた。

「人の心は太古は生命力の渾沌とした沼であった。生の欲求が時々ぼこっと浮かんできて泡になる。その泡が弾けて、泡の中に詰まっていた気を吸うことによって人は生命の欲求を知るのである。」
ここの部分がかなり好きだ。沼の上に建てられた人々の社会、その揺らぎ。そして建物を持たない危険人物が、渾沌であったということ。

江葉がクールで聡明でとてもかわいいので、後宮生活と戦いを経て銀河と親友になったらしいのは嬉しかった。故郷に連れ帰るほどだったとは!もっと二人の話を読みたかったな。この説は信用しないが、なんて言いながら最後に二人が欧州に渡った説をちらりと書くあたり、本当に分かってやってるんだなあ、と思いつつ作者の手のひらで踊り狂ってしまいそうだった。

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2020年07月28日

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雲のように風のように

中学生の頃にアニメで見てからずっと忘れられなくて、原作が後宮小説と知り購入。
原作はアニメには無い大人な表現と、軽快なストーリー展開が良い。アニメはどちらかと言えばお子様向けな、本当に夢見がちな物語だけど、小説はまさに歴史小説。
比べてみると面白いです。

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2017年09月10日

Posted by ブクログ

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BSでアニメが放送されていたので懐かしくなり数十年ぶりに再読。こんなに読みづらかったかな。
後世の人間が歴史資料を読み解きながら書くという体裁なのだが、書き手の存在が頻繁に入り込むので物語に集中できない。
前半は後宮での房中術の勉強が続くのでちょっと飽きてくる。
けれど後半、銀河が正妃になったあたりから物語が一気に動き出すので面白い。
あの混乱期だからこそ銀河のキャラクターが生きてくる。

貴族の出であるセシャーミンは何故後宮を出た後に妓楼のおかみになったのだろう。
実家が没落していたのか、自分の力を発揮できる場所だと思ったのか。
銀河に初潮が訪れたのを本人が言うまでコリューンは知らなかったが、そういうのは周りの者が皇帝に伝えるのではないだろうか。

いろいろとひっかかるところはあるものの、勢いで読み切ることができた。
もっと銀河や他のキャラクターの活躍が見たかった。
あとアニメ版もやはり良い。

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2020年11月07日

Posted by ブクログ

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井上ひさしが「シンデレラと三国志と金瓶梅とラストエンペラー」と賞したチャイニーズ・ファンタジー。個人的には、一部の煽情的な記述が著者の妄想のあらわれとしか思えず、『家畜人ヤプー』を想起した。

この手のファンタジー作品は、作者がどれだけ異世界に没頭しているか、また、いかにして読者をその作者と同じ境地に引き擦り込むかが魅力だ。本当に優れたファンタジーは(例えばトールキンのように)情景の描写だけで、世界を形作る。突然、異世界に放り込まれた主人公の一人称で物語ることで、主人公の経験を通して世界を構築していく手法もある(『十二国記』とか)。本書は、(架空の)史書からの起こし書きという設定であるため、この「世界の構築」に苦労しており、ところどころ説明口調で世界観の記述が入るのはやむを得ない。というか、やっぱり家畜人ヤプーだ……。

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2021年06月26日

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