あらすじ
野生獣たちは、躰の中から蝕まれていた。見えなくなる目、口から毛穴から噴き出す血……。山に投棄された大量の廃棄物によって汚染された水、そこから生まれた新種の寄生虫が、彼らの体内を喰い荒らしていたのだ。山の怒りを体現した野獣が、悪鬼のように荒れ狂う――。彼らに死を突きつける資格が人間にあるのか? 人と自然の真の共生を問う著者渾身の傑作!
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Posted by ブクログ
スペンサーシリーズに同名の作品があるが、全く別物。
本作は八が岳や南アルプスの自然を舞台に、環境と獣害問題をテーマにした家族小説。
とにかく、やたらとテーマを盛り込んでくる。狩猟の問題、獣害からのモンスター、食物連鎖、地方行政の怠慢、環境汚染、いじめ、またぎの老齢化、気候変動…こんなに盛り込んでどう収拾するねんと読みながら危惧していたんだけど。
ネタバレしてもしょーもないので、多くは語らないが大丈夫。力とテクニックを上手くミックスさせた筆運びで見事収拾させてくれる。ある程度予想がつく、悪く言えばベタな展開にはなってるけど、安定度は抜群。むしろ巧みな捻りは無用だろうと思わせるぐらいのストレートな描写で、自然と向き合う人間の、動物の姿を読ませてくれる。
狩猟の趣味はないし、鉄砲みたいな危ない物を持つつもりは毛頭ないけど、山歩きを趣味にしている俺にとって、この本に書かれていることはとても関心があり勉強にもなった。自然や山に対しては、常に謙虚であろうと思った次第。
難しいことは考えなくても、小説として十分オモロい一級の出来。
八が岳行きたいぞ、黒戸尾根行きたいぞ。