【感想・ネタバレ】あとかたの街(2)のレビュー

あらすじ

偵察機を目撃したあいは、空腹も重なり、些細なことで班長や仲間を憎もうとしてしまった。戦争の足音が少女の純粋な心までも蝕もうとする中、昭和19年12月7日、名古屋を最初に襲ったのは敵国ではなく、大地震だった。さらに追い打ちを掛けるように、12月13日、三菱発動機に爆撃が。そこはあいの友達が働いているはずの場所。これが「名古屋大空襲」の始まりだった。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

昭和19年12月7日、戦時下の名古屋を襲ったのは昭和東南海地震。壊滅的被害を受けたことを日本軍は隠したつもりで、世界の地震計が感知していたのだから筒抜け、そして弱り目を狙って始まる名古屋大空襲。「地震の次は何をお見舞いしましょうか?」米軍のばらまいたビラの文言は、当時の市民を怯えさせるのに十分だったことだろう。一少女の感じた戦争、戦時下の生活。花形の軍需工場に動員され、たらふくご飯を食べて贅沢な暮らしをしていた裕福な友達が、爆撃で死ぬ。このあいだ、死にたくない替わってよ、と泣いて叫んだ友達が。静かに描かれる物語の中にかいま見えたのは、女子供の立場の弱さ、教育の大切さ。学徒動員された子供たちは勉強もさせてもらえず、新聞の漢字も全ては読めない。そんな細かい所まで、本当に緻密な取材で描かれている。

1
2020年03月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1巻を酷評した。
あとがき漫画で、家族の戦争体験をネタにした受賞を誇っているのが小者っぽい。絵がきたない。女子供ばかりが被害者という視点がうっとおしい。

2巻でその思いはみごとに覆された。
本格的に名古屋に空襲がはじまる。空襲からはじまったのではない。東海大地震という、関東大震災に匹敵するほどの規模だったのに、報道規制が敷かれた。しかも、その情報は米国に筒抜けで、地震があったからわざと急所をついてきた。ぞっとした。もし、自然災害が日本に起こって、原発が空爆されたら? 現代に置き換えても十分に成立しうる事態である。

わがままで幼く見えたヒロインも強くならざるをえない。情けないと思っていた父は、家族をかえりみず救助活動をしていた。疎開先の妹の安否を憶って、主人公一家の結束は固まる。母を非国民扱いしていたおばさんにまで、情をかけられるようになったヒロイン。

やがて、空襲はヒロインをけなした女学校の動員された兵器工場を襲う。この嫌味な友だちはおそらく犠牲になるのだと思わせる。しかし、その最期というか、それを知らされた少女たちの衝撃の描き方が凄まじい。露骨にグロテスクに描かなかった分だけ真実味がある。

のほほんとした四コマ絵だと思ってタカをくくっていたら、いやはや、とんでもない怪物だった。お見それしやした、という感じ。

戦争は人を醜くさせていく。
つねに空腹を抱えて苛立つ大人たち。その苛立ちの牙を向けられる子どもたち。戦争でなくとも、現在の貧困家庭と変わらない。

この2巻だけ再読した。

0
2015年07月30日

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