【感想・ネタバレ】トーマの心臓のレビュー

あらすじ

冬の終わりのその朝、1人の少年が死んだ。トーマ・ヴェルナー。そして、ユーリに残された1通の手紙。「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」。信仰の暗い淵でもがくユーリ、父とユーリへの想いを秘めるオスカー、トーマに生き写しの転入生エーリク……。透明な季節を過ごすギムナジウムの少年たちに投げかけられた愛と試練と恩籠。今もなお光彩を放ち続ける萩尾望都初期の大傑作。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

神様みたいな本だった。

なにかを愛することってどうしても自己愛の裏返しになってしまうけど、トーマの愛は違う。
冒頭の彼の遺書が、本編を読む前と後とでこんなにも意味合いが変わってくるとは思わなかった。
「彼はぼくを死んでも忘れない」ということ、「彼の目の上にぼくがずっと生きている」ということ、そのおかげでユーリはこれからどれだけ心安らかに生きていけるか、トーマは全部分かったうえで彼に翼を捧げたんだ。

代わりのいない人間なんていないってずっと思ってた。
確かに「物質」的にいえば人間の代わりなんていくらでもいるかもしれない。私と似た顔、似た声、きっといくらでもいる。
唯一代わりのきかないものは「思い」なんだ。
オスカーにしか、エーリクにしか、ユーリにしか、そしてトーマにしか抱けない思いの形があって、その思いが人に向うことで、その人でしか満たされない「思い」がまた生まれていく。そうやって人はゆっくりと自分が存在する意味をみつけていくんじゃないかと思う。

真実の愛なんて存在しないってここ最近ずっと思ってたけど、すくなくともここには、この本の中だけにはあった。
現実にもあってくれ〜

2
2023年12月09日

ネタバレ 購入済み

珠玉のような名作

「彼(トーマ)がぼくの罪を知っているか否かが問題なのではなく…
 ただいっさいを何があろうと許していたのだと」

終盤のこのユリスモールのトーマの愛を理解した瞬間の科白が全てだと思う。

とても美しい科白、シーン。
この瞬間に主要な登場人物が全て救われたと思っている。

秀逸。この一言に尽きる。
何度読んでも色褪せない珠玉のような名作。

2
2021年05月31日

ネタバレ 購入済み

人生のバイブル

天使の羽根を失ったとユリスモールに告白されたエーリクが「僕の羽根を片方あげる。両方でも良い、僕はいらないから」と答えた場面は今読んでも涙が流れる。あの頃私は何も知らないティーン・エイジャーだったのに。私の人生を語るときに欠かせない一冊。

#泣ける #感動する #深い

1
2021年09月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1974
何度も読んだはずだが今回ようやく気付いたのが、キリスト教でいうユダとイエスの関係が重ねられているのだということ。
今までは少年愛、ギムナジウム、という意匠に、あっけなく惑わされ、いわば気軽に耽溺していたのだ。
なぜトーマは死んだのか。
ユーリが暴力に屈して信仰を捨て(かけ)たからこそ。
八角形眼鏡のサイフリートは終盤突然差し挟まれた人物では決してなく、創世記でいう蛇的存在だった。
トーマはいわば身を徹してユーリを「正しい道」に引き戻したのだ。
いってみればユーリおまえ全員から愛されているんだぞ、と、作品の外から言ってやりたい。何度でも。
プレ作品である「11月のギムナジウム」と比べるとエーリクがコミカルな活躍をするのも、息抜きになって、よい。
が、個人的には少しスレた感じのオスカーが、ほんっとうによくてよくて。
思わず続けて「訪問者」を読んでしまった。

1
2021年09月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

13歳のトーマ・ヴェルナーが陸橋から転落死し、1学年上のユーリに対し遺書が送られていた「これがぼくの愛 これがぼくの心臓の音」。半年前、トーマは学校一の優等生のユーリに好意を寄せていたが全校生徒の前できっぱりと拒絶されていた。彼の死の真相に苦しむユーリと見守る友人のオスカー。そんな時トーマとそっくりなエーリクが転入してくる。

ドイツのギムナジウムを舞台に少年たちの愛と死、信仰と赦し、そして再生を描く。心に耐え難い傷を抱え完全に心を閉ざした少年、ただ見守り待っている少年、自己犠牲により愛を示す少年、事態を読み解く鍵となり核心に触れる少年、それぞれの無垢な純粋さが尊い。

「今 彼は死んでいるも同然だ。そして彼を生かすために、ぼくはぼくの体が打ちくずれるのなんか なんとも思わない 」
「どうして神様はそんなさびしいものに人間をおつくりになったの?ひとりではいきていけないように」
「彼がぼくの罪を知っていたかいなかが問題ではなく、ただいっさいをなにがあろうと赦していたのだと、それがわかった時ぼくはもう一度主のみまえで心から語りたいと思い。。。」

1
2021年07月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんなんだ
こんな少女漫画は読んだことがない

段々と引き込まれてページをめくる手が止まらなかった
異性愛をタブーとしない流れ、
ショックを受けた時の描き方が今と比べると態とらしく感じてしまいシュールな心地、
花や木々のロマンティックな描写、
共感せずにはいられない悲しみを背負った少年たち

1
2018年06月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主への信仰心をくじかれ悪い上級生に傾いてしまったユーリを許してくれるのは、神様じゃなくてオスカー、エーリク、トーマの愛なんだ…
本当に上品な漫画。再読しよう。。

0
2025年11月07日

Posted by ブクログ

ネタバレ

お名前は随所で見かけていたけれど読んだのは初めての萩尾望都作品。

ギムナジウム的な少年愛。
元々世代が違うけど、でも昨今の「BL」というジャンルの枠には収まらない、あまりに文学的な作品だった。

オスカーが格好良い。

1
2017年11月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なかなかむずかった。一番の失敗は、文庫本サイズのを購入してしまったこと。
文字が小さくて読みにくい~~
たぶん、この1回目を読んで、また少しして2回目読んで、またかなり時間たってから3回目読んで・・・ってしたらもっと深いところにまで気が付けて面白いんだろうなって思った。
昔読んだ竹宮恵子さんの「風と木の詩」も、何度か読んでいくとどんどん面白くなっていったんだよね。あれの感覚に似ている。

今の現代でいうところの、高等部の男子寮、なのかな?
みんなのアイドル的存在の一人、トーマが鉄橋から落ちて死んだ。
事後であるとされたが、一学年上で寮監のユーリに遺書的な手紙が届いた。
「ユリスモールへ 
さいごに
これがぼくの愛
これがぼくの
心臓の音
きみにはわかっているはず」
と書かれていた。トーマは自殺だった?

ユーリはずっとトーマにアプローチをされていた。
だが、もう一人のアイドル的存在アンテとどちらがユーリを堕とせるか賭けをしていたらしい。なおさらお堅いユーリはなびかなかった。
だが、自殺するほどとは・・?
あのトーマからに気持ちは本物だったのか?

トーマの葬儀も終わってしばらくして、トーマに瓜二つのエーリクが転入してきた。
みんながざわつく。
エーリクはひたすら「トーマ?」って聞かれることにうんざりしくる。
しかも彼はこんな寮にはいりたくはなかった。
ずっと母親のマリエを愛していた(超マザコン!)マリエは男をとっかえひっかえするが、別れたらエーリクのところにくるので、自分はマリエについていてあげなくては。とも思っていた。
今回はマリエがある男と結婚するので、エーリクを寮付きの学校に入れたのだが、
エーリク的にはあんな男とはすぐに分かれて「帰ってきて」と手紙が届くと思っていたのに全然届かない。まさか・・自分は・・・・?

ってな感じのめちゃくちゃ閉鎖的な世界で、ほぼ男子しか登場しない漫画ですww

ユーリの過去、
エーリクのゆがんだマザコン、
アンテの思惑、
オスカーのことも・・・

みんないろいろあってぐちゃっとしている

BLとはいえ、キスはするけど全然健全なお話だと思う。
昔はこんなもん?(でも風と木の詩はそんなことなかったよねぇ?)

0
2024年10月19日

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