【感想・ネタバレ】星やどりの声のレビュー

あらすじ

東京ではない海の見える町で、亡くなった父の遺した喫茶店を営むある一家に降りそそぐ奇蹟。若き直木賞受賞作家が、学生時代最後の夏に書き綴った、ある家族が「家族」を卒業する物語。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

エッセイから入ったけど…小説もいいじゃないかー!朝井リョウ!!好きな作家の一人になりました。
皆の得意なことが店を守るのに繋がったり、「星やどり」に込められたお父さんの想いに鳥肌!
最後の方、いっぱい泣きました。

<2020.4.16再読>
東京ではない海の見える町。三男三女母ひとりの早坂家は、純喫茶「星やどり」を営んでいた。家族それぞれが悩みや葛藤を抱えながらも、穏やかな毎日を過ごしていたが…。

朝井さんの人物描写はほんとすごい!
リアルなんだよな~。
星則→律子→琴美→光彦→小春→るり→凌馬→真歩→星則……
お父さんから名前がしりとりになって、またお父さんに戻って、家族が輪になる。
お父さんからお母さんもしりとりになってるのすごいよね。
自分が居なくなることを知って、店の名前を「星やどり」にして輪を繋げた。
最初に読んだ時の衝撃はすごかったけど、再読してもやっぱりすごい。

<2025.7.10再再読>
冒頭の一文からいいよね。
“まっしろな牛乳は糸を引くように体の中を巡る。寝返りをうつたびにばらばらになってしまった体内のパーツを正しい位置に戻しながら、指先にまで冷たい白は染みわたっていく。”

他にも好きな表現がたくさん。

“見えない冷たいてのひらが自分の体を撫でては離れ、撫でては離れていく。夏の電車の冷房は、長時間乗るには温度が低すぎる。”

“花びらで作った色水のようにゆらめく夏の夕空を見て、真歩は背筋をぴんと伸ばした。”

“海が、波を揺らしながら夕陽を溶かしていく。この町のオレンジが溶けきった海は、夜になるまでの短い時間を堂々とゆらめく。”

“からっぽのグラスは朝陽を吸いこんで、この世に悲しいことなど何もないというような顔をしている。”

“星型の天窓。切り取られた小さな空。小春は、本当はあそこに色を塗りたかった。夜の一番深いところを絞った濃紺に、光が生まれる根元のような輝く金色をまぶす。”


琴姉が夢で見たことが翌日現実になり、皆の困りごとに気づく。
妊娠している時に不思議なことが起こる人はけっこういるらしい。
“「子どもがいるってわかったとき、お腹の子があの夢を見せてくれてたんだろうなって思った。この子が、私たち家族がバランスを保てるように助けてくれていたんだなって」”

家族の名前がしりとりになってて、それが輪になっているって素敵。

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2025年07月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とっても良かった~~~これが朝井リョウ。これぞ朝井リョウ!
もう読み始めてすぐに、この丁寧で綺麗な状況描写、これこれこれーーー(T_T)となった。一つ前に読んでた小説が、こういう叙情的な表現が全然無いどころかむしろもうちょい状況を教えてくれみたいなんやったからもう余計に。連なる文字の表面の空気を吸い込むみたいな気持ちで味わい深く(?)読めた。いちいち味わい深い。良い。
そして、ミステリとまでは言わないまでも、隠されているものの存在が少しずつわかってきて、それが少しずつ明らかになっていく感じも、上手く徐々に物語に引き込んでくれる感じですごく心地よかった。

自分もだんだん良い歳になって「家族」というものについて考えることがあったり、自分のこれからの人生のためにそこをもっと掘り下げて深く考えておかないといけないなと思ったり、そのタイミングで読んでおいても良いかもということを読み始めるときに思ってた。自分と同じ長女の琴美パートが最後に来てるのも、自分にとってどう出るかなと思ってた。琴美は私なんかより遥かにきっちりしてしっかりした長女やったけど(そら下に5人もいたらそうなるよな)、それでもやっぱり当然共感するところもあったし、やっぱり一番感情移入したのは琴美やったかなと思う。ただ最後、「あなたはもう、早坂家の長女じゃなくていいのよ」という言葉はちょっと、何というか、個人的には早坂家の長女じゃなくなるわけじゃない(早坂家の長女じゃなくなってほしくない)とは思ってしまった。ただ、これは「早坂家の長女」というのがそれほどの重たい役割やったということなんよなとも思う。あと、別に子どもを持つことが「家族」の必須条件ではないよなというのも同時に思った。いやそういう話なのはわかってるのだけども。
子どもたち全員が、それぞれに違う想いで、違う表現で、お父さんのことが大好きだった。その6者6様の描かれ方がとても良かった。なぜか、るりパートでの、お父さんが2人を見分けられなくなった日から小春が変わった話、「小春はやさしいの。」らへんのところで一番泣いた。
あとやっぱり凄いなと思ったのは末っ子の真歩に関する描写。まず、朝井リョウが書く、小6のときに見えてた世界の解像度の高さみたいなものに驚く。思い出させられたというか。あ、確かに小学生のころの世界の見え方ってこのぐらいやったかもって読み進めるにつれて。そんなん忘れてるよな普通。そして、こんな、文章だけで綴られてるのにこんなにも真歩がかわいいことがすごい。全体にちりばめられている要素がすべて合わさってかわいい。すごい。

★で始まるパートに関しては、何かあるんやろうけど何やろな~と思いながら読んでて、凌馬のところで明らかに第三者視点に切り替わってるなって気づいて、お父さんが見てるってことなんかなって考えてた。そうではなかったけど、まあ中らずと雖も遠からず?それと名前のしりとりは、きょうだい6人の分はどこかの段階で気づいてたけど、両親も含めてというのは気づいてなかった。なるほどでした。

Wiki情報によると、これは朝井リョウ氏の卒論らしい。実質的には発表されている中での氏の一番古い長編小説になるのか…?すごいな。色んな意味で。

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2025年09月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

喫茶店「星やどり」を営む早坂家の物語。
三男三女の姉弟。
父を亡くし、母と子たちで協力して暮らしています。
そんな姉弟たちそれぞれの目線で進む、連作短編です。

久しぶりに朝井リョウを読みたくて、
さらに癒されるような本が読みたくて手に取りました。

読み進めるなかで…なんか、読みにくい?
私のコンディションが悪い?と思っていましたが、
平成26年刊行…著者が若い時の一冊と知り、
ちょっと納得しました.苦笑
ちょこちょこ表現というか言葉遣いのようなものが気になるのは、そういうことか!と。
(読む前に気づくべきですよね苦笑)

それでも、家族が家族を想う気持ちや、
亡くなったお父さんに対する気持ちは、
読んでいてうるっときます。

あったかい気持ちになれた一冊です。

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2025年04月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いい話で、面白かった。
朝井さんの書く高校生や大学生の内情はほんとうにリアリティがあって感動する。小春が祐介と付き合った理由がとても胸に刺さる(彼氏の夢=アタシの夢、とつい依存してしまいそうだけど、真逆から始まって最後には自分を見つける小春は強い)。
ただ、朝井さんが極めてお若い頃の作品だけあって、「親」の描写には違和感が…
フィクションだからもちろんリアリティがなくてもいいんだけど、子ども達のリアリティが色濃過ぎて、そちらと比べるとどうしても。
最後の琴美の物語がほぼ「親」のストーリーになるので、ラストは涙ぐんだけど、読後感はあまり良くなかった。

いくら実家の家族が大事でも、妊娠初期にフルタイム(多分)の立ち仕事しながら実家の兄弟の世話できるかな。つわりが軽かったとしても、1分でも長く寝たいし、あと初めての妊娠ならお腹の赤ちゃんが心配で休まなきゃって思うのが一般的。兄弟が幼児なら這っててでも行くしかないけど、一番年下の弟で6年生。自分たちで何とかできる。
働き者だけど口数少なすぎるお母さん。倒れてしまった時はやむを得ないけど、結婚して家を出ている長女に任せすぎでは。琴美が好きでやっている事だとしても、むしろ止めるべきでは?
琴美の記憶のお父さん。「娘が眠っていると思ってかけた言葉」だとしても、全部長女に頼むなんてあり得ない。「みんなでお母さんを助けてやってくれないか」なら理解できるけど、「光彦にアドバイスしてくれ」って姉の仕事じゃない。
あと、生まれてくる我が子を嫁の実家の絆の一部にしてしまおうとする孝史さん。3人で新しい家庭を築くのではないの?孝史が不幸な生い立ち(両親早逝や毒親)で家族への憧れが強いのらな分からないでもないけど、そんな描写なかったし。

星やどりのお店を想像するととっても素敵です。

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2024年11月17日

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