あらすじ
埠頭で荷揚げ中に落下事故が起こり、珍しい形状の異様に重い樽が破損した。樽はパリ発ロンドン行き、中身は「彫像」とある。こぼれたおが屑に交じって金貨が数枚見つかったので割れ目を広げたところ、とんでもないものが入っていた。荷の受取人と海運会社間の駆け引きを経て樽はスコットランドヤードの手に渡り、中から若い女性の絞殺死体が……。次々に判明する事実は謎に満ち、事件はめまぐるしい展開を見せつつ混迷の度を増していく。真相究明の担い手もまた英仏警察官から弁護士、私立探偵に移り緊迫の終局へ向かう。クロフツ渾身の処女作にして探偵小説史にその名を刻んだ大傑作。
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Posted by ブクログ
題は樽。
その名の通り、ずっと樽を巡って話が展開。
ワイン樽に混ざってやたら重い樽がある。
重すぎて荷運びのバランスが崩れ、樽の一部が破損し、中に入っていたであろうおが屑と共に数枚の金貨が見つかる。
中身は一体何なのか?
好奇心で破損部を開いてみると女の手が見えた。
事件性があるとして驚いていると、その樽の受取人を名乗る人物がやってくる。
樽が到着していることを荷降ろし時にでも目にしているかもしれないから届いてないとは言えないし、受け取るには手続きが必要だから〜として足止めしつつ、会社にも相談した上で警察に通報。
が、戻ってみればその樽は消えている。
その後も、樽が見つかるがまた消える。
行く先々で色んな事情が話されるのが面白い。
終盤、犯人の自白で聡明かつ歪んだ性格なのは面白いが、今ではアニメでも見られるような王道を進み、ラストは呆気なかった。
Posted by ブクログ
4.5くらい。面白かったけれど、少しだれたところもあったので。
でも夢中になったところもあった。アガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』と同年に発表されたというのが驚き。
江戸川乱歩や米澤穂信が挙げていたので読んだ。
また、横溝正史の『蝶々殺人事件』について、この『樽』と類似性として時々挙げられていたのも見かけて気になっていた。
タイトル通り、樽の話。
三部に分かれていて、最初は樽の発見とその行方。
次に被害者の身元と容疑者の割り出し及びアリバイ確認。
最後は、被疑者のアリバイ崩しと真犯人探し。という三段構え。
最初は情景描写に少し滅入ったけれど、樽の行方がわからなくなって、それを追いかける行程が面白かった。
アリバイ確認のところはあちこち言って話を聞いてで少し飽きちゃった。大事なんだけど、ここら辺はもう少し面白くなるような展開があると良かったかなあと思う。
最後の探偵パートでアリバイ崩しが本格的になったところから楽しめた。前提が覆っていき、いろいろなことがわかっていく。
細かい突っ込みどころがあれど、真犯人が言う通り、そうやったのなら可能だなと思える話で面白かった。
解説のところで樽の傷について突っ込まれていたけれど。同一かどうかどうやって判断したのか、どのタイミングで傷をつけたのか。まあ、人の証言でしかないので、うやむやになるのは仕方ない。でも作者ならちゃんとそこは考えておいて欲しかった部分でもある。
気になったのはくじの話があまりにも出来過ぎている。たまたま聞いていたってなんだよ。これでだいぶ容疑者が絞れる情報なのに。ボワラックがそこにいた可能性を匂わせる描写が欲しかった。
あとボワラックがイギリスでの動きについて特に怪しまれずに行動できたところも突っ込みたい。フェリクスに扮していたそうだけど、それでも家に侵入して工作してるんだから、その可能性の描写も欲しかった。
フェリクスが無罪なら誰かがやった!だから誰かが侵入した!で通すのか、そうかぁ~の気持ち。
あと警察よりも探偵のほうが派手にお金を渡して情報を聞き出していたのが面白かった。これはわざとなのか、時代柄そういうものだったのか。
イギリスとフランスの刑事が仲良かったのも良かった。組織としてみんな聞き分けが良くて、優秀。喧嘩しない。
そうじゃないと話が進まないからだけど、人間関係が良好過ぎて面白い。
情報を集めるために広告を打ちまくるのも面白かった。その精査は大変そうだったけど、予算とか気にしないでバンバン出してる。
探偵側が出していた経費は依頼人が負担する!ってなってたけど、すごいな。警察のほうもすごい。警察が広告を打つ場合は捜査に協力せよ、見返りに情報を渡す、みたいな取り決めがあったのかな。
最後のボワラックの行動も好き。潔いのか慢心していたのか。
そして最後はフェリクスのハッピーエンドで終わってた。
駆け足なハッピーエンド。横溝正史の本陣殺人事件の最後みたいだった。
当時はよくある終わり方だったのだろうか?クリスティじゃなかったと思うけど。クリスティは安易にハッピーエンドで終わらせず一つの事件が終わって、これからも人生は続く、みたいな余韻だった気がする。
Posted by ブクログ
最初は樽の行方を追っかけていたのだが、中身が判明した後は、その謎を追いかけることに。アリバイを追跡していく作業は、やや単調だし、樽の動きが複雑でわからなくなってしまう。
しかし、ラストで分かりやすく、謎は判明する。ミステリの名作。これが100年も前の作品だとは。
Posted by ブクログ
アリバイトリックよりもホワイダニットに面白さがある話だけれど、納得はできなかった。犯人が用意した偽のストーリーに肝心の樽が噛み合っていないからだ。
Posted by ブクログ
船便で港に届いた樽。
荷降ろしの途中に隙間から金貨がこぼれおちてきた。
不審に思い少し中を探ってみるとなんと女性の腕が。
警察に届け出ている間に樽は行方をくらましてしまう。
樽を奪った男は中身について知っているのか、樽を探し事件を解決せよ。
「樽」って聞くと和風ですが、原題は「The Cask」。
なんだかかっこいい!
さて内容。
まずは樽をじっくり検分するまでに時間がかかる!
しばらく行方不明になるんですから。
見つけてからやっと捜索。
まずは警察の手に委ねられます。
ロンドンのバーンリーとパリのルファルジュは仲良しデカ。
捜査の合間に飯を食い、クラブに行き、エンジョイしまくり。
警察は懸賞広告出しまくり~!
なんだかのどかだな!
基本的に出てくる人が皆上品でよい人です。その点ではイライラしなくて済んでよいです。
江戸川乱歩が絶賛したことで日本では一躍古典名作に名を連ねたこの作品。
なんと、重大な欠陥があるとのこと。
それを見つけるのは読者です。
種明かしは解説の有栖川センセイなので、最後までとっていてくださいね!
ちなみにわたしは気づきませんでしたが、言われたら「でしょ?おかしいと思ったのよ」と思いました。