あらすじ
戦前・戦後、新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛して「ムッシュ・クラタ」と呼ばれた男。日本人の常識から逸脱した行動をとり、鼻持ちならないキザな奴と見られていた彼が、記者として赴いたフィリピンの戦場でしめしたダンディな強靱さを鮮やかに描いた表題作。ほかに夫婦の絆の裏表を鋭い人間観察で切り取った「晴着」「へんねし」「醜男」をおさめる中・短編集。
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Posted by ブクログ
恥ずかしながら、山崎豊子を読むのは初めて。
表題作「ムッシュ・クラタ」をはじめとする、中短編集。
主人公たちは、ダンディな美男子だったり醜男だったり烈女だったりするが、いずれも強烈で印象的な生き様を見せている。
他の作品もぜひ読んでみたい。
Posted by ブクログ
収録作品
*ムッシュ・クラタ/晴れ着/へんねし/醜男
表題作『ムッシュ・クラタ』は著者の実際の出来事を元に紡がれたお話かな?という印象を受ける。
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“私”は以前職場で要職についていた倉田玲氏の訃報を新聞の紙面にて知る。
フランス料理店でフランスの詩について、歴史、文化、雑学-日本人である彼がたっぷり語ったこと、ダーク・スーツに帽子と手袋を装着して出勤し、仕事中はパイプをいつもくゆらせていたこと…そんな彼の姿が頭にあったが、通夜で訪れた彼の住まいはいつもの彼のイメージとは程遠い、こじんまりとした慎ましい家屋であった。
この差異から倉田氏という人物そのものにひかれる“私”。
10年経った後にふとしたきっかけからその想いを再燃させ、取材へ乗り出すのであったが…。
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“私”や職場でのみ倉田氏と付き合っていたような人間が抱く、派手好きだとかキザだとかカッコつけだとか、そういう印象がぐるりと角度を変えてゆく様が非常に面白かった。
取材対象者が入れ替わってゆく度に倉田氏の“私”が知らなかった生き様が見えてき、氏がいつも大切にしていた揺るぎのない信念が見えてくる。
そこから見えてくるのは着飾ることが好きなただのフランスかぶれの男性ではない。
読み始めと読み終わり、“ムッシュ・クラタ”が浮き彫りになっていく過程が良い。
『晴れ着』、『へんねし』、『醜男』は少し雰囲気が違う作品。
現代物ではないけれど、読み始めると一気読み。『晴れ着』は切ないし、『へんねし』はちょっと怖い。
『醜男』は哀しい。
ラストは「宏め!」となってしまった。
ドロドロし過ぎないけれど、さらさらでもない、3作品。
『白い巨塔』などのメジャー作品はまだ読んだことがないので、そろそろ読んでみようかしら。