あらすじ
天明の大飢饉に見舞われた奥州八戸藩での凄惨な人肉食を鉄砲隊足軽小十郎の日録を追いながら苛烈に描写。飢饉による死者たちの嘆き、生に執着する人々の業を直視し、人間存在の根本に迫る代表作「おろおろ草紙」。ほかに、「暁闇の海」「北の砦」「海村異聞」の歴史小説3篇を収録。著者の郷里に材を得、庶民の強靱な生きざまを鮮やかに描いた傑作小説集。
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Posted by ブクログ
この人しか書けない小説とは、なんとすばらしいのだろう。
北の地の厳しさが人を死なせていた。土地をこんなふうに書ききるすごさがまず、この小説にはある。
歴史小説はあまり読まないが、そんなこと関係なしに文章の凄まじさで読めてしまったなあ。
すこし前に読んだ剥製が男女が死ぬ話だとしたら、おろおろ草紙の四篇は土地の厳しさで人が死ぬ話である。より三浦哲郎の奥をみたのは今回のおろおろ草紙だった。形式としては物語なのだけど、その中で三浦しか知らない東北の感覚が書かれていたと思う。
ちょっと確認してみたら二篇目の「暁闇の海」は、けっこう歴史寄りの話だったみたい。でも四篇を総合して、北の厳しさを知らせてくれるようなそんな小説だとやっぱりおもう。