あらすじ
〔ローカス賞受賞〕フレッチャー一家は、ストゥベンという町に引っ越した。だが、七歳の長男は沈みがちになり、弟や妹の相手もせず空想の友だちとばかり遊ぶようになった。しかも、フレッチャー家では奇怪な出来事が次々に起こりはじめる……アメリカ南東部の小さな町を舞台に、家族の愛と親子の絆を描く感動作
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Posted by ブクログ
タイトルと表紙から鑑みるに、複数の少年が消えてしまう話と思われる。
序章替わりの「ぼうず」という章で、なんとなく誰かが少年たちをさらう話だということがわかる。
しかし、本編ではまだ、誰も姿を消してはいない…と思う。
怪しいのは、主人公一家の長男であるスティーヴィ。
ベストセラーのパソコンゲームをデザインしたことのある父が、今や日々の生活にも事欠くほど収入が減ってしまったため、アメリカ南部の片田舎の学校に転校することになった。
元々繊細で大人しいスティーヴィは、南部なまりを聞き取ることができなかったためにクラスメイトと担任の先生にいじめられ、学校に行きたくないと思っている。
東部育ちで標準語を話すスティーヴィに対して、南部なまりのコンプレックスから子どもたちにいじめを奨励する、そして自らも徹底的にスティーヴィを無視したり貶めたりする担任の先生の仕打ちが本当にひどくて、読むのが辛くてしょうがなかった。
父親も、パソコンのことなどほとんど知らない上司に権利と時間を搾取され、家族との団欒など考えられないような生活を送らされる。
会社の誰をも全く信用できない中で、孤立無援の日々を送っている。
さて、日本ではあまりなじみがないが、スティーヴィの両親は敬虔なモルモン教徒である。
私も詳しくはよくわからないけれど、禁酒禁煙のストイックな生活を送る彼らは、独自の教会活動があり、スティーヴィの両親は熱心に教会活動に参加し、そのうえ善きモルモン教徒であろうと努力をする。
家庭を守り、他者に悪意を持たず、神の御心を疑うことなく過ごそうと努力するも、スティーヴィだけではなく、父(ステップ)の会社の人や、教会関係者たちの悪意に蝕まれていく彼ら家族の話は、細かな部分もしっかり描写されることによって、次のページが気になってしまうこと間違いない。
というか、消えた少年たちの話であると思うのだけど、ほぼほぼステップの会社の人たちの悪意ある嫌がらせに目が行ってしまって、最後の方になるまでスティーヴィを気にかけながらも、そこまで辛い目に合っていたとは想像していなかった。
善意の塊のような一家に一体何が起きるのか。
上巻だけでは全然わからない。
上巻が1冊にまとまった単行本で読めばよかったと後悔することしきり。
一体どういう結末が待ち受けているのか。
どうか哀しい話じゃありませんように。
スティーヴィの弟・4歳のロビーがまたいい子なのだ。
兄のことが大好きで、そのことをいつも大っぴらに表明し、まだ手のかかる妹(2歳のベッツィ)の面倒をよく見る、明るくて優しいいたずらっ子。
ロビーの存在が、この不穏な作品の中の希望の灯りなのだ。(私にとって)
どうか最後まで、ロビーの笑顔が失われませんように。