【感想・ネタバレ】盤上の夜のレビュー

あらすじ

「相田と由宇は、出会わないほうがいい二人だったのではないか」――由宇は四肢を失い、囲碁盤を感覚器とするようになった。若き天才女流棋士の栄光をつづり、第1回創元SF短編賞で山田正紀賞を贈られた表題作をはじめ、同じジャーナリストを語り手に紡がれる、盤上遊戯、卓上遊戯をめぐる6つの奇蹟。囲碁、チェッカー、麻雀、古代チェス、将棋……対局の果てに人知を超えたものが現出する。デビュー作品集ながら第147回直木賞候補となり、第33回日本SF大賞を受賞した、2010年代を牽引する新しい波。解説=冲方丁

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Posted by ブクログ

ネタバレ

碁、将棋、麻雀、チェス、ボードゲームを題材にした短編集。ゲームを巡る人間の執念や狂気がおもしろい。


■盤上の夜
囲碁の話。四肢を失った女流棋士が研ぎ澄まされた感覚と純粋な勝負心から連勝を重ねるが、より感覚を研ぎ澄ますために取り組んだのが外国語という点が面白い。一つの事象や感情も言語によって表現の仕方は多様で、宇宙にも例えられる囲碁の魅力とのつながりがオカルトちっくでありSFっぽくもある。

■人間の王
チェッカーの話。半世紀負け知らずの人間と機械の闘い、そして数学による完全解が証明されてしまったゲームにおいて、人間の王者は何を見たのか。
計算上は完全解明されたゲームであっても、人間がプレイするときには考える楽しさや負けたくないという思いは変わらないのだな。

■清められた卓
麻雀の話。麻雀は運の要素が非常に強く、プロであっても交通事故のような負けに遭ってしまう。何かを賭ければ必然と狂気じみたものになる。
オカルトと数理と度胸がぶつかり合う勝負が面白い。

■象を飛ばした王子
チェスや将棋のルーツとも言われる古代インドのチャトランガの話。教えは易しく、時とともに変遷し、底知れなさがあることで伝承されるという一説に納得。

■千年の虚空
将棋の話。実務派の兄のAIと天才派の弟の頭脳の対決、その間にいるのは魔性の女。データ処理で歴史を正しい一本の道にする量子歴史学というエセ学問に魅力を感じた。

■原爆の局
囲碁の話。他の話のスピンオフのようにもなっている。
碁とは何か、五割の抽象と五割の具体か、九割の意志と一割の天命か。

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2023年09月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

なんだこれはいきなり都市伝説が出てきたぞそんな話か…? と悪い意味で意表を突かれた書き出しだったが、物語が進み始めるとその第一印象もどこかに飛んでしまうほどで、やっぱり上手かった。
「それでも、二人の棋士は、氷壁で出会うんだよ」という由宇の言葉に、読み手は相田とともに涙する。
他の収録作も、それぞれ盤上遊戯において異能を持つ者たちの尋常でない世界を巧みに彫り上げていると感じた。
が、表題作のエピローグ的な一面も持つ、最後に収められた書き下ろしの「原爆の局」については、あるいは若干の蛇足だったかも…「盤上の夜」のラストが美しかっただけに。

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2020年09月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ボードゲームを題材とした話の構成に、おっ!と思わされました。個々のエピソードそれぞれについては、ちょっとトンデモ?な感じも含めて、しっかり読ませてくれてよかったのだけれど、最後のエピソードが若干蛇足 or 物足りない感じ。ここが、これまでのエピソードを集大成して、振り切った最高潮の盛り上がりを見せてくれたなら、忘れられない本になったのかもしれないのだけれど…。

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2024年02月12日

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