あらすじ
「問題は少年非行ではなく高齢者犯罪」「死刑に犯罪抑止効果はなく、かえって暴力を促進する」など、さまざまな“犯罪神話”を解体し、科学的な犯罪対策・刑事政策を提案する。
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Posted by ブクログ
本書の指摘で興味深く思ったのは、厳罰主義の加速をはじめとする「ポピュリズム刑事政策」の浸透と二大政党制が密接に関わっている、ということ。
英米系の対立型民主主義では野党がマスメディアと共謀して体感治安の悪化を煽り、厳罰主義を掲げて政権復帰を狙う、という構図が成立しやすいという論旨に説得力を感じる。
またそれらの国々が90年代以降新自由主義的政策を採用したことで、圧倒的な格差に晒された人々が、「犯罪者」を社会の底辺に位置づける対象として「発見」した、という指摘も、何か自分たちとは異なる生物であるかのように報じる昨今の犯罪報道を見るにつけ、深く頷かされる。
本文中、著者が太字で強調しているのは、タイトルのように5億で執行猶予の判決に必ずしも批判的ではない、ということ。
編集者がつけた「売らんかな」のタイトルなのかもしれないが、その甲斐あって大いに売れることを祈ります。
Posted by ブクログ
犯罪についての情報というのは、ほとんどの人は「ニュース」に頼っているのが現状。しかし、ニュースでは、一つの事件は伝えるが、定量的なデータを定期的に伝えることは少ない。少年事件が報じられれば、犯罪の低年齢化を心配し、虐待が報じられれば幼児虐待の増加を懸念します。
が、果たして、実際に日本全体としては、どうなのか?
それに回答してくれるのがこの本です。
犯罪者の性別、年齢、犯罪者と被害者の関係、それらの統計を解説しています。
加えて、全ての犯罪が裁判になるわけではなく、それどころか、かなりの割合の犯罪は、和解や示談、身元引受人などの条件で裁判には持ち込まれません。持ち込まれたとしても、執行猶予になるものも多く、この結果実際に刑務所に入所する人は、「お金」と「人脈」がない人となります。
このように、凶悪重大犯罪者が多いイメージのある刑務所が、実は知的障害や日本語が話せない外国人、身寄りの無い高齢者などの社会的弱者の最終的な受け皿になっていることなど、この本を読むまではわかりませんでした。
すごーーく面白い!という本ではありませんが、報道だけではわからない日本での犯罪の傾向を知るには非常に良い本です。願わくば、報道も時には、この本のような「俯瞰的」「定量的」な視点で行って欲しいと感じます。