【感想・ネタバレ】2円で刑務所、5億で執行猶予のレビュー

あらすじ

「問題は少年非行ではなく高齢者犯罪」「死刑に犯罪抑止効果はなく、かえって暴力を促進する」など、さまざまな“犯罪神話”を解体し、科学的な犯罪対策・刑事政策を提案する。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

本書の指摘で興味深く思ったのは、厳罰主義の加速をはじめとする「ポピュリズム刑事政策」の浸透と二大政党制が密接に関わっている、ということ。
英米系の対立型民主主義では野党がマスメディアと共謀して体感治安の悪化を煽り、厳罰主義を掲げて政権復帰を狙う、という構図が成立しやすいという論旨に説得力を感じる。
またそれらの国々が90年代以降新自由主義的政策を採用したことで、圧倒的な格差に晒された人々が、「犯罪者」を社会の底辺に位置づける対象として「発見」した、という指摘も、何か自分たちとは異なる生物であるかのように報じる昨今の犯罪報道を見るにつけ、深く頷かされる。
本文中、著者が太字で強調しているのは、タイトルのように5億で執行猶予の判決に必ずしも批判的ではない、ということ。
編集者がつけた「売らんかな」のタイトルなのかもしれないが、その甲斐あって大いに売れることを祈ります。

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2014年01月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

犯罪についての情報というのは、ほとんどの人は「ニュース」に頼っているのが現状。しかし、ニュースでは、一つの事件は伝えるが、定量的なデータを定期的に伝えることは少ない。少年事件が報じられれば、犯罪の低年齢化を心配し、虐待が報じられれば幼児虐待の増加を懸念します。
 が、果たして、実際に日本全体としては、どうなのか?
それに回答してくれるのがこの本です。
 犯罪者の性別、年齢、犯罪者と被害者の関係、それらの統計を解説しています。
 
 加えて、全ての犯罪が裁判になるわけではなく、それどころか、かなりの割合の犯罪は、和解や示談、身元引受人などの条件で裁判には持ち込まれません。持ち込まれたとしても、執行猶予になるものも多く、この結果実際に刑務所に入所する人は、「お金」と「人脈」がない人となります。
 このように、凶悪重大犯罪者が多いイメージのある刑務所が、実は知的障害や日本語が話せない外国人、身寄りの無い高齢者などの社会的弱者の最終的な受け皿になっていることなど、この本を読むまではわかりませんでした。
 すごーーく面白い!という本ではありませんが、報道だけではわからない日本での犯罪の傾向を知るには非常に良い本です。願わくば、報道も時には、この本のような「俯瞰的」「定量的」な視点で行って欲しいと感じます。

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2016年02月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

まず驚いたのは、死刑の是認は国民感情に委ねられている部分があるということだ。死刑は、憲法第36条「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」にある残虐な刑罰には当たらず、憲法には反しないと示されている。しかし、ある刑罰が残虐であるかどうかの判断は国民感情によって定まるとのことだ。人の命を奪うことが残虐でないとは思えないが、犯した罪に比してどうか、という視点で見ると残虐ではないと解されるのかもしれない。
この本を通じて、死刑に関してのみならず、刑罰の重さにはけっこうな揺らぎがあるのではないかと感じた。

最近のメディアの劇場的な報道はくだらない(そもそも見ないが)と思っていたので、そのような印象操作が犯罪の実態と感覚の乖離につながっているという本書の内容に納得した。物事の伝え方としてストーリーテーリングが重要とはいうが、客観性や真実性を損なう恐れがある。

一方、本書では体感治安と犯罪数の推移を比較し、体感治安と犯罪数には乖離がある(体感に反し治安は悪化していない)としていたが、体感治安は犯罪数のみに依存せず、痴漢や騒音、小競り合いなどの暗数も関わってくるのではないかと思った。

次に驚いた点は、刑事司法手続きは98%の人が不起訴や罰金刑で勝ち抜けるゲームである、ということだ。検挙された200万人のうち、受刑者となるのは3万人ということだ。勝ち組になる条件は、初犯であれば、端的にいって財力(被害者弁償等)、人脈(身元引き受け人等)、知的能力(内省力・表現力)である。一般的に家族や仕事があり、社会規模がしっかりしているものや、経済的に豊かな犯罪者は、弁護士の支援を受けやすく、被害者弁償を行うことで示談を得やすいと言う。よく刑事ドラマなどで、罪を犯したボンボンが親のコネで無罪になると言うような話があるが、まさにこのことではないかと思った。一見理不尽なことのように思われたが、刑務所がセーフティーネットであると言う本書の記載を読むと納得できた。なぜならば、財力や人脈がない犯罪者は、更生のための足がかりがなく、刑務所と言う公共施設をもってしか更生可能性がない。一方で、財力や人脈を有する犯罪者は、己が有するそれらによって更生できる可能性があるという話だからだ(ドラマではまず更生しないのだが笑)。

次に印象に残った点は、法律家にとっての科学だ。「訴訟状の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的な証明ではなく」という最高裁判所の文章があったが、本書でも触れられている通り、一点の疑義も許されない自然科学的な証明と言うものは存在しない。自然科学に携わっている身として、誠意ある科学者ならば、「統計的に有意な差がある」といった表現しかしない。科学的ではない奴ほど、科学的なとかいう言葉を使うので注意したい。

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2026年02月23日

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